先輩、何が目的ですか?
──そんなこと言われたって私に秘密を守る義務
はないじゃんか
「私があなたの秘密を守ることに
メリットないですよ」
『えー』と言いながら面倒くさそうに
前髪をかきあげる先輩。
そして、
「君、さっきから僕に興味無さそうだよね。」
「もしかして、人と関わるの苦手?」
──人が気にしていることを
「それがこの件になんの関係が?」
先輩が『怒んないでよー』と言って一言。
「図星だからそんな言い方になるんじゃないの?」
「人と関わるのが苦手で、できるだけ面倒事を避けたい。」
「だから今も逃げようとしてる。」
──なんで、
「違います…」
反射的に否定したけど、自分でもわかる程、
私の声は弱かった、
「違わないよ」
「………」
黙っている私を横目に先輩は言う。
「別にそれが悪いことって言ってるんじゃないよ。」
「でもさ、それで楽?」
何も言えない私に先輩は少し、目を細めた。
「…折角なんだしさ、僕で練習してみない?」
──どういう、こと?
思わず顔を上げて、先輩を見る。
「僕が人との関わり方、教えてあげる」
その言葉はさっきまでの怖さと違い、優しく聞こえた。
ーでも、
「そのかわり──
さっきのこと、誰にも言わない。」
──なんで、離れようとしたのに、
逃げようとしたのに、
先輩は逃がしてくれないの。
「…それ、脅しですか?」
「んー、どうだろ」
少し考えるふりをしてから
「お願い、かな」
そう言って私の頭の横の手をどけ、笑う先輩は
やっぱり王子様で、
でも、
「断ったら?」
気づけばそんなことを聞いていた。
先輩は一瞬だけきょとんとして
すぐにクスッと笑った。
「断れるとでも思ってるの?」
その一言でわかってしまった。
──先輩は、はなからわたしに断らせる気なんて
なかったんだ。
「大丈夫だよ。」
「そんなに難しいことはさせないから。」
「ただ一緒にいればいいだけ。」
「……」
「それとも、」
少しだけ声が低くなる。
「ホントに全部、忘れられる自信あるの?」
──無理だ。
さっきの声も、表情も、
全部頭から離れない。
「分かりました。」
小さく言うと、
先輩は満足そうに頷いた。
「いい子。」
ぽんっ、と軽く頭に触れられる。
「じゃあこれからよろしくね。」
その一言で、私の"いつもどおりの生活"は、
簡単に壊れた。




