どっちが本当の先輩ですか?
誠凛高校1年生。
都内トップレベルの学力を持ち、近県からも優秀な生徒が集まる公立高校だ。
そんな学校に受験し、合格することができた
私──百瀬茉白は1人、廊下を歩いていた。
「だ……な…………ぃ…って!」
ふいに途切れた声が聞こえた。
この廊下を曲がって左、倉庫へと続く道からだ。
──あんなところに人が…?
あの倉庫はもう使われていない。
空き教室がある今、わざわざあそこにものを置く必要がないと判断したためだと先生は言っていた。
だからこそ気になった。
コツコツ……
ほんの少しの好奇心で左へと足を進めてしまった私
そんな私に今ならわかる。
余計なことをしたんだなって。
左の角を曲がった時、
低く、抑えた声が聞こえた。
「…だから言ったよね。余計なことすんなって。」
その声に思わず足が止まる。
──誰?
私が目で見たのはこの学校でほんわか王子様とウワサの
先輩だった。
私が知ってる先輩とはまるで別人みたいで。
「次はないから。ちゃんとして。」
静かで、冷たくて、感情の起伏がない。
──こんな話し方する人なわけ…
そう思った瞬間
通話が切れる音。
コツ、コツと足音が響く廊下。
「ねぇ、もしかして今の話聞いちゃった?」
その足音は先輩で、
表情はとても柔らかく、
微笑んでいるのに、
私は半ば無意識に1歩下がった。
さっき聞いた低い声と、目の前の優しい顔がどうしても結びつかない。
「……す、すみません」
そう言うと目の前の先輩は少し笑みが薄れた気がした。
「へぇ、」
「謝るってことは聞いちゃったんだ。」
静かに言いながらスマホをポケットにしまう先輩。
「困るなぁ…」
その一言が、
さっきの冷たい声と同じ温度で、
背筋を凍らせた。




