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Answer  作者: 釜鍋小加湯
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 宜しくお願いします。

 坂口の咳払いで、ヒロキは首を前に向けた。

「瀬名はな、この近くに住んでるよ。多分としか言えないけどな」

 ヒロキの顔を見上げ、坂口が言った。

 信じられない話だった。学校帰りや塾の後、そして休みの日にもヒロキはこの界隈へはよく出歩いていた。この近くに住んでいるのなら、一度くらい会っても可笑しくないのではと、内心疑っていた。

「そのつらだと、信用してないようだな。見つけたときには、俺らも驚いたよ。何故ここにいるってな」

「何処にいたんだ」

「興奮してきたねえ。古村君」若林が首を挟むと、坂口は手でそれを制した。

「あれは一学期の終わり頃だったか。日も暮れて、俺たちはいつものようにゲーセンに行ったんだ。そしたら、メダルゲームの両替するところで、いたんだよ」

「タカフミが?」

 坂口は頷いて、ベンチの背もたれに寄りかかり腕を後ろに下ろした。

 本当にタカフミだったのか。信じられない。自分だって、その頃にもゲームセンターにはよく行っていた。メダルゲームだってよくやっていた。今日あんな風に、小坂の前でメダルを沢山ゲット出来たのも、通い上げた積み重ねからというのもある。運や勘だけではない部分だってあるのだ。

 ヒロキは唾を飲み込み更に訊いていく。

「タカフミどんな感じだったんだ」

「痩せたな。な?」隣に座る若林に同意を求めると、二人して首を縦に振り、坂口は顔を戻した。

「坂口さん、言った方がいいんじゃないですか」

「そうだな」

 若林の言葉を聞いて、坂口は鼻を軽く摘まんで掻いた。そして大きく息を吐いて不適に笑った。

 何を言う気だ。今の話だとゲームセンターにいれば、タカフミに会える感じの内容だ。頻度はどれくらいなのだろう。そもそも、会ったのはその一度きりか。

 聞きたいけどおっかなくて聞けない。どうにかして聞かなければ。目薬をプレゼントしてくれた理由。会わないと聞けないだろうから。

「古村、お前渡辺ユイカとは、付き合ってるのか?」

「いや、そんな関係ではないよ。何で」

 突如出た名前に、ヒロキは狼狽した。

 坂口は一瞬だけ小さく笑うと、妙な落ち着きで語るように話し出した。

「その女が一緒だったんだよ。俺らは店内をぶらついていたんだ。何しようかあってね。女はうきうきした様子で、俺らの横を通り過ぎてったんだ。顔ははっきり見た。でも髪型が学校にいた時と違う。三人して、顔を見合わせたよ。こりゃかつらだなって、直ぐ分かったよ。瀬名は白いカップにメダルを入れてた。その女は駆け寄っていって、メダルゲームを二人でやってたって話だ」

「人違いじゃないのか」

「確かにあの二人だった。瀬名はその後も、何度か見掛けたよ。ゲーセンでな。でも声は掛けなかった」

「何故」

「仲も良くないし、俺らにとってはどうでもいい存在だからだ」

 タカフミ、本当にこの近くにいるのか。自分だって、遅い時間にゲームセンターに行ったりしてたのに。

 ユイカとタカフミが一緒って、どういうことだよそんな接点あったなんて、今の今まで知らなかった。

「頭大丈夫か?」坂口が軽く言うと、若林が「パニクってるんじゃねえの」とふざけたように言って坂口と顔を合わせた。二人は手を叩いてと笑いだした。

 少し冷えたそよ風が、ヒロキの腕を通り過ぎていった。寒気が出てきた。

 このことをユイカに聞いてみるか。ストレートに聞いたところで、素直に教えてくれる内容ではない。あの二人は、何処かで落ちあっている。ゲームセンターで一度だけ会った。そんな筈はない。気づいたのかもしれない。この三人がいたことを。きっと今みたいに、笑いあっていたと思うから。

「さあ、そろそろ俺らの願いも聞いてもらおうかな」

「身体震えてるよ、おしっこ出るのかな」

 頭を整理していたヒロキが我に返るのと同じくらいに、二人はスッとベンチを立ち上がった。手に持っていた空き缶を、坂口はを手から離し地面に落とした。靴でベコリと踏みにじった。

「お願いって何?」ヒロキは、おでこの汗を手の甲で拭った。

「なあに、簡単な願いだ。お前がよく一緒にいる渡辺ユイカを、貸して欲しいんだ」

 二人はニヤニヤしながら、ヒロキの顔を嘗めるように視線を上下させた。


 最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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