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宜しくお願いします。
ゲーセンを出ると、日は既に暮れて暗くなっていた。
透き通った店の明かりが、道を照らす。駅とは逆の歩道を無言で歩く。
米田は何も話してこなかった。ヒロキも話す気はない。気持ちを落ち着かせ、恐さと小さな期待が混じり、口の中が渇きまくっていた。
「連れてきたぞ」
米田の声高に反応した二人は、ヒロキを見るや目付きを鋭くしてきた。
坂口と若林はベンチに座っていた。このベンチは、ユイカと塾の帰りに座っているベンチだった。二人とも足を大きく開き、ジュースを片手に持っていた。
米田は坂口の隣に立ち止まり、座らなかった。二人がベンチを独占しているのもあるからかもしれない。
坂口がジュースをグッと飲んで、歯並びの悪い歯を見せた。
「お前、俺らに訊きたいことあるんだよな」
ベンチに座る二人を前に、ヒロキは立ったまま口を開いた。
「タカフミのこと。何か知ってるのかなって。クレーンゲームしてた時に、瀬名という名前を聞いたから気になって」
「お前地獄耳だな。あの煩いとこで、よく瀬名のことを話しているのが聞こえたな」
「ヒロキお坊ちゃんさあ、そうやって人の話を聞くのは良くないぞ」
若林が前のめりになり、ヒロキの足をポンと軽く叩いた。
「いや別に、たまたま、聞こえたから」
ヒロキは足を震わせ、若林に言った。
「まあいい。教えてやってもいい。瀬名のことは知ってるよ。詳しくは知らないが知っている」
「本当か」
首を突き出し、ヒロキは聞き返した。
坂口は首を縦に振り、顎に手を当てた。
「俺らも、お前に聞きたいことが、いや気が変わった。お願いがあるんだ」
ヒロキは心中でお願いと鸚鵡返しに呟いていると、若林と米田が声を出して笑いだした。
「不安がるなよ古村。お前には痛くも痒くもないことだから」笑いながら、若林がまたヒロキの足をポンポンと軽く叩いてきた。
「先ずは、俺らが教えてやるよ」
そう言うと坂口は、ジュースをまたグッと飲んでベンチのスペースに音を立てて置いた。
「米田」背もたれに肘をかけていた若林が、何か促すように顎でしゃくり指示した。
米田は面倒臭そうに腰を捻り、この場を離れていった。
この公園には、街灯が一つポツンとある。彼一人去ったことで、何故かヒロキに寂しさが募ってきた。
二つあった影が一つになったからだろうか。
先に教えるということは、ヒロキの方は、奴らが訊いてきたことを断れないということだ。もし無理なお願いならどうしたらいいんだ。大声でもだして、誰かが来るのを期待するか。
出入り口の方を振り向くと、米田が立ってこちらの方を見ていた。
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