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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
2章 --天翔艦クラールブルーメ--
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天からの攻撃 3

 

 案内された先に人が一人が歩ける程度の細さの通路が見えてきた。

 そこに道案内しているユウセイとは別のユウセイが二人立っている。


「自分がつい最近まで眠りについていたことは伝えていないはずですが」

「そのまじめさで隠そうとしていたのか? 一目でわかるさ。昔は皆があんたのように使命に真面目で、命令以外の知らないことは誰彼構わず聞いて回る存在だったが、今はそんな奴いないだろう。みなそれぞれの方法で人を隔離していてあんたたちみたいに自由に歩き回れる状態じゃない。むしろなんでジュンセイがここにいるのかが不思議だね」


「ユウセイ、もしかしたら自分のように眠っているアルケミストがいるかもしれないのですか?」

「まだいるんじゃないか? 調整中のアルケミストは何もあんた一人だったわけじゃないんだし、どこかの基地深くで眠っていてもおかしくはないね」


 目的地が見えてきた細い通路と知りジークルーンとジュンセイ、レイショウが身構えた。

 警戒する三人を見てユウセイは飽きれたように大きな溜息をつく。


「別に今はもう変なことしないよ、さすがの私もあんまりやり過ぎるのは良くないってわかってる。何事も引き際が大事さ」

「初めからやらないのがいいんですけどね」


「それはつまらないだろう? 楽しさ面白さをどこまでも追求するのが人というものだ」

「ユウセイ……」


 部屋からずっと案内をしてきたユウセイを先頭に細い通路を進み始める。

 通路は人が一人通るのがやっとで天井には一定の間隔で、置かれた蛍光灯が白く眩く光っていた。

 通路の細さは比較的小柄なジークルーンやジュンセイですら肩が壁に触れないギリギリ程度、レイショウは少し身を横に傾けないと肩が壁に引っかかってしまうような道。

 レイショウへの嫌がらせかなと思いながらジークルーンは通路に足を踏み込む。


「しばらく歩くよ。その前にちょっと待ってくれ」


 体に張り付くような服装から、普通の服装にナノマシンを変化かせて着替える。

 壁に横道を作ったと思われるユウセイ二人に服に不備がないかを確かめさせて、彼女らに見送られ通路を進むジークルーンがつぶやく。


「本当にユウセイしかいませんね」

「自分が多い方がやりたいことを多くできるからな、ナノマシンでの通信で意識の転写も容易だし」


「意識の転写?」

「他のアルケミストたちが行っている記憶を映す記憶転写装置と同じだよ。あれは人生分の記憶を抜き取り他の体に移すものだが、私のは必要な時に必要な分他の私に記憶を送り続ける。常人であれば他人の記憶が流れてきて混乱するが、すべて私の記憶だ私のしたい行動を他へと移し手の空いている別の私がその行動を行いその結果を転写で他の私と共有する。その瞬間は、忘れていた記憶を思い出すようなあるいは夢を見ていたような感覚に近いか。すべて私だからできることだ」


 後でレイショウと一緒に歩いていたハジメの足取りが重くなる。

 彼女は目をこすり大きな欠伸をする。

 あくびの声を聞いたレイショウが振り返った。


「ハジメ? 疲れたのか、そうだな今日は移動しっぱなしだったもんな。おんぶしてやる、ほら」

「まだ……だいじょぶ……」


 レイショウは足の止まったハジメを背負う。

 通路が狭くて狭く背負い方も不格好だったがそれでも何とかハジメを抱え、そして前を歩くジークルーンを飛び越え先頭にいるユウセイに話しかけた。


「なぁ、ここに来るとき、何人かのあんたが部屋ごと動かしていたが、今それはできないのか」

「ん~? ああ、できないこともないけどあれは私の生体電流だけじゃなくここの電力を消費するからね、なるべく今は使いたくないな。我慢してついてきな」


「ハジメが疲れて背負って歩くにも狭い。あと、あんたじゃないあんたに杖で殴られた足がまだ少し痛む」

「気のせいだろう、もうジークルーンのナノマシンの力で治癒しているはずだ。それとも難癖付けて私に謝ってほしいのか? 私も長い距離をとぼとぼと歩くのは非常に面倒くさいのだが、今ある電力のほとんどを地上に送っているから無理だな、そんなことができたのなら真っ先にやっている」


「電力?」

「ああ、ナノマシンを動かすのには電力がいる。アルケミスト一人が持つ人の体の生体電流では、増幅させてもせいぜい一度に動かせるナノマシンの総量は30キロ程度だろう。基地となる施設内を自由に動かしたり損傷した天翔艦の装甲を修復させるのには大きな電力設備がいる、配線をいじり我々の力に変えナノマシンを操る」


「どうして地上になんかに電力を」

「今空から落ちてきているものをもう忘れたのか、あれの迎撃だよ。全く間に合っていないが、気休め程度に軌道をずらして直撃を避けているんだよ」


「あれだけ大勢いるのに使えない奴だ」

「ああ、どれだけ数いてもアルケミストは単体だと無力なもんだよ。所詮は人の延長線上にいるだけに過ぎない。数をそろえたものには質で勝っていても負ける」


 しばらく歩いていくと狭い通路の先に、今度は終わりの見えない上へと向かう階段が見えてくる。

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