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10話 魔石の鑑定をする事に




「それでアッシュさん達は、どうしてアリサ達と一緒にいるんですか?」


「なに、俺達は坊ちゃんの護衛で迷宮に潜っていたんだが、そこでこのお嬢ちゃん達に助けられたんだよ。しかしお前の弟子は凄い奴だな。あんなに凄腕なら養成所なんてすぐに卒業で良かったんじゃないか?」



 アッシュは簡単に出会った経緯を話した後、ルナの実力を見た事で養成所に通う必要があったのかと問いかけた。



「…確かにルナちゃんの魔法の腕は凄かったでしょうが、それ以外は素人ですので養成所に通った意味はありました。

 ………それとこれはお願いなのですが、ルナちゃんの実力は今は必要以上に話すのを控えてもらえると助かります」


「今は、と言うと?」


「はい、しっかりとした実績を踏み、魔法以外の実力と行動に責任を持てるようになるまでは、不要なトラブルの原因になる事は避けたいのです。………おそらく近い将来には、周りがほかって置いてはくれないでしょうが、少しでもその時を遅らせたいのです。お願いします」



 魔法を教えた先生としての立場からか、それとも元々面倒見が良いのかは分からないが、ルナの事を考えた上でアッシュ達に頭を下げて頼んでくれたのだ。



「……なるほど、確かにリーザの言う通りなのかもしれないな。分かった。俺達は命を救われたんだし、少しでも恩返しになるなら協力しよう」



 リーザの思いを理解したアッシュの言葉に、オレンも頷き同意してくれた。しかし………



「俺は1つ条件がある」



 異を唱えたのは、今まで一言も喋らず黙っていたカイだった。



「条件とは何ですか?」



 その言葉に反応したのはリーザだった。



「坊ちゃん!?ここでそんな事を言うのは、流石に常識を疑われるぞ」



 今回、全滅の危険に追い込んだ張本人が条件を出す。この行動に雇われているオレン達も呆れ気味になっている。



「うるさい!ルナ、俺と勝負しろ!」


「………は?坊ちゃん、いったい何を言っているんだ?」


「……俺は最強の冒険者になるんだ。その為には魔法使いだろうとなんだろうと、倒さないといけないんだ。だから!」


「何故そこまで最強にこだわるんですか?」



 ルナは鬼気迫るカイの態度から、目を背けずにしっかりと見つめて問いかけた。



「…それはお前には関係がない話だ。さあどうするんだ?俺に勝てば受付のねーちゃんの言うとおりにするぞ」


「分かりました。でもカイ君の体調は大丈夫なんですか?」


「俺の事はどうでもいい、お前が気にするな!…とにかく話は決まった。下の訓練所に行くぞ」



 体調の気をつかったルナは怒鳴られ、カイはさっさと階段を下りて行ってしまった。



「……すまないなお嬢ちゃん。坊ちゃんはこの町のお偉いさんの家の長男なんだが、次男が結構優秀なもので実績が欲しくて焦っているんだ」


「それであの子は最初は弱そうだったルナちゃんに、助けられたのを認めたくなかったのね」



 アッシュの話でリーザは事情を読みとっていた。



「私はどうすればいいのでしょう。勝てばカイ君の心に傷を残して、負ければ私が困ってしまいます…」


(どこかに所属している以上、今後もこのような事態に巻き込まれる可能性はあるけど………勝っても負けても優しいルナは傷付きそうだな)



 僕もこの状況に答えを出す事は出来なかった。



「ルナ、遠慮をする必要はないぞ。変に手加減をしたり、わざと負けたりして相手に実力を勘違いさせる事は、今後の迷宮探索で危険を招く可能性が出るからな」



 どうすればいいか困っていたルナに、アリサは1つの答えをルナに示した。



「そうだな。1人では自分の実力は分かり難い物なんだ。客観的にお嬢ちゃんの実力を見た坊ちゃんが勝ってしまうと、勘違いして強敵と戦って死んでしまうかもしれない。だから全力で相手をしてやってくれ」



 カイ側の人間であるアッシュの後押しもあり、ルナのする事は固まった。



「ありがとうございます、お姉ちゃん、アッシュさん。私、全力で相手をさせてもらいます」



 迷いが吹っ切れたルナは、意気揚々とカイの後を追って階段を下りて行った。







「カイ君、お待たせしました。それで勝負の方法はどうしますか?」



 訓練場の中心で立っていたカイに、向き合うような位置に立った。



「勝負は相手が負けを認めるか、動けなくなるまでだ。もちろん魔法を使っても構わない。審判は受付のねーちゃんだ」



 交代の時間には早かったが、セルジが来ていたのでリーザは訓練所の方に顔を出せたのだ。



「分かりました。それでは審判は私が務めます。ルナちゃんも構いませんね?」


「はい」



 そうしてルナは杖を持ち、カイは剣を構えた。もちろんカイの剣は訓練用の刃の無い物だ。



「相変わらずこんな時でもそれを離さないんだな」


「これが私のスタイルです」


「まあいい。…行くぞ!」



 それだけ言ってカイは走り出し、ルナに剣を振り下ろしてきた。しかし養成所にいる時に見ていた動きから成長が見られないので、ルナは難なく剣を避けて杖でカイの腹部を叩いてスタート地点に押し戻した。



「な!?」



 カイは鎧を着けていたので打撃によるダメージは少なかったようだが、魔法使いに力で押し戻された事に驚いていたのだ。



「……女のくせになかなかの馬鹿力を持っているんだな。だがそんな攻撃で俺を倒せると思うなよ!」


「そんな風に言わないでください!ハヤテさんに変に思われるじゃないですか!」



 体勢を整えたカイは再び襲ってきたが、杖で受けたり避けるなりしながら、ルナは馬鹿力と言われた事に抗議した。



(ハハハ、まあ今のルナの力を見ればそういう感想になるよな)


「!?。ハヤテさんに笑われてしまったじゃないですか!アクアブリット!」


(また心を読まれた!?)



 ルナは僕の思った事を感じ取り、杖をカイの胸に当てて怒ったように零距離で水弾を放ち、壁まで吹き飛ばした。直撃を受けたカイは既にフラフラになってしまう。



「まだだ、まだやれる!」



 掛け声と共にルナに向かって来たが、その足取りに勢いはなく誰が見ても勝負はついている。



「これで終わりです」



 ルナは向かって来たカイに杖を打ち込む。……しかし、



 バキッ!



「え?」



 カイに打ち込んだ杖が、乾いた音と共に砕け散ってしまったのだ。


 既に余裕のないカイは、その事で戸惑い固まっていたルナに気付かず、顔に向かって手加減なしで剣を振り下ろして来た。



(!?。無防備でこの攻撃は拙い!)



 いくらHPが上昇していても防具も着けていない無防備な顔に、刃がないとはいえ鉄の剣で殴られたら大怪我では済まない。そう思った僕はゴーストハンドを使った。



「きゃ!?」



 剣が打ち込まれたのを遅れて気が付いたルナは、既に避ける事が出来ないので目を閉じて悲鳴を上げる。しかし既にダメージの影響で全力とは程遠いカイの攻撃は、今はまだひ弱な僕の魔力の手でも受け止める事が出来たので、ダメージもなく吹き飛ばされる事もなかった。



「な、なに!?」



 リーザや他の観戦者には死角になっていたので、ルナがただ限界寸前のカイの攻撃に耐えたように見えただろうが、攻撃した本人はそうはいかず驚愕していた。カイの剣は目には見えない何かで受け止められてしまい、押す事も引く事も出来なくなっていたのだ。



「……あれ?」



 いつまで経っても攻撃が来ない事で、恐る恐る目を開けたルナは目の前で剣が止まっている事に気付いた。そしてその剣を動かそうと力を入れているカイを見て、何が起こっているかルナは理解した。



「ハヤテさん、すみませんでした。アクアブリット!」



 僕に謝った後、少し卑怯と思ったが、動けなくなっているカイに水弾を放って吹き飛ばす。


 今まで粘っていたカイだったが、流石に限界が来たようで、壁から滑り落ちるように気を失っていた。



「勝負あり!勝者はルナちゃんです」



 カイの状態を確認したリーザは、手を上げて試合終了の合図をした。



「ルナ、大丈夫だったか?最後の攻撃は直撃を受けたように見えたが?」



 アリサはルナの顔を触って、怪我がないか確認していた。



「怪我はしませんでしたから安心してください」


「そうか?あいつはもう限界だったんだな。それにしても杖が砕けるなんて欠陥品でも渡されたのか?」



 ルナの足元に散らばっている杖の残骸を見て、アリサはそう思ったようだ。



「ちょっと、アリサ!ルナちゃんの杖はギルドが用意したちゃんとした物よ。だた初心者用の杖なのにデュアルマジックとか使ったものだから、内部から耐久値の限界が来ていたんだと思うわ。だから折れるんじゃなくて、砕け散ったのよ」



 ギルドの支給品が欠陥品扱いされた事を職員らしくすぐに否定して、原因を推測して教えてあげていた。



「そりゃ初心者用の杖で、お嬢ちゃんの魔力に耐えれる訳がないわな。…さて、坊ちゃんも眠っちまったし俺達は帰るとするわ。ありがとな、勝負を受けてくれて。これで少しは坊ちゃんも落ち着いてくれるだろうしな」



 寝ているカイを背負い、オレンはお礼を言い、アッシュは軽く頭を下げて帰って行った。



「さて、私達も帰るとするか。明日はルナの杖を買いに行かないといけないから、迷宮へ行くのは休みだな」


「それが良いわね。ルナちゃんは杖がなくても魔法は使えるけど、効率と威力が違うものね」



 魔法使いの使う杖は迷宮で取れる魔石を利用して作られており、魔法の補助機能が備わっているんだ。



「私は別に杖がなくても……」



 ルナが遠慮して杖はなくても構わないと言う。


 例えば初心者用の杖は5等級の魔石を少ししか使っていないので3000ゼニーぐらいで買えるのだが、1段性能が上がっただけで10000ゼニーを越え、4等級を使用した杖では50000ゼニーが最低ラインだ。

 値段が高騰する原因の1つは魔法使いの数が少なく、需要が少ないので値段が下がり難い事があるが、一番の理由は性能にムラがあり、魔石の数が多く必要になるところだ。



「駄目だぞルナ。今後も迷宮に潜る以上、装備に金を惜しんで死んだら意味がないからな」


(薬草もケチっていたアリサが、そんな事を言う時が来るとは……)


「そうよ。今後もチームを組んで迷宮に潜るなら、ルナちゃんの装備が強化されるだけで助かる命が出てきます。だから生活出来る範囲のお金を残して、残りは装備に使うのが冒険者なの」



 2人の先輩冒険者にここまで言われてしまし、理由も納得いくのでルナは素直に頷く事しか出来なかった。



「…分かりました。明日は武器屋に行って杖を探してみます」



 そうリーザに約束して僕達は帰って行った。







「ギルドではありがとうございました」



 家に帰り食事も終わらせたルナは、自室に戻るなり僕にお礼を言って来た。



「あれは反省する所だったね。それにカイの力がもう入っていなかったのも運が良かった。僕のゴーストハンドはまだひ弱だから、防げない可能性があったんだ」


「たとえ防げなかったとしても、ハヤテさんの気持ちだけでも嬉しかったですよ」



 ルナは僕に守ってもらえた事を嬉しそうにして、笑顔を見せていた。



「……ルナ、その前の茫然としていた所の反省も忘れないようにね」


「はい、反省しています。今後は武器破損の想定もしておきます」



 反省していると言ったルナだったが、終始ニコニコしていたので反省の色があまり見えなかった。



「そう言えばハヤテさんのゴーストハンドって、前より力強くなっていませんか?いくら限界近くとはいえ、戦士であるカイ君が剣を動かせなくなるとは思えないのです。それに出せる距離も伸びている気がしますよ」


「……そう言えば」



 最近は手の上で小石を弾き飛ばす練習しかしてなくて、強度や距離は気にしていなかったのだ。それでルナに言われた事で、試しに小石を掴んで浮かせて見ると…



「あ!、50センチぐらいまで伸ばせるようになってる!それにしても練習の成果が違う形で出てるな……その内ルナのデュアルマジックみたいに、手を2つ以上出せるようになるかもしれないな」



 僕は練習の成果が出ている事で、浮かれ気味に魔力の手を振り回していた。



「ハヤテさんならすぐに出来るようになると思いますよ。だって魔力だけで物を掴める手を出せるのですから、それを2つにするだけです。簡単ですよ」


「そうかな……よいしょ!」



 ルナに簡単と言われたので、試しに左手を出して見るとちゃんと出た。なのでこの状態で右手を出そうと試してみると……普通に出せてしまう。



「あれ、簡単に出来た。ならば!」



 左右の手から伸びるように魔力の手が出せたので、さらにもう一本と挑戦したが、先に出していた手も含めて全部消えてしまった。



「どうでしたか?」



 僕が出す魔力の手は他人には見えないので、ルナは状況を聞いて来た。



「ああ、左右の手から一本づつ手を出す事は出来たんだけど、片手から二本出そうとすると失敗しちゃった。どうやら片手から魔力を別けて出すのは難しそうだ」


「それでも2本出せたのは凄い進歩ではありませんか!フフ、お揃いですね」



 僕がデュアルマジックみたいなものを使えたと知って、ルナは胸の前で両手を合わせて嬉しそうにしていた。



(これはデュアルマジックなのかな?……まあ、ルナが喜んでいるならいいか)



 1つの杖から2つの魔法を同時に出すのがデュアルマジックなら、片手では使えない僕のは違うかもしれないのだ。



「そういえばゴーストハンドって反動がないんだよ。カイの剣を止めた時、全然押される感覚がなかったし」



 本来物を受け止める時には、その勢いと同等の力で支えないといけないのだが、魔力の手と僕は繋がっていないみたいに、単独で存在している感じだった。



「そうですね。あの時は何が起こっていたか、私には全然分かりませんでしたから」


「でもこれなら僕も盾ぐらいの役割は出来そうだな。……でもあまり期待して油断しないようにね」


「はい、出来るだけハヤテさんに迷惑を掛けないようにしますね」



 迷惑とは思っていないのだが、ルナが油断しないのならそのままで良いと思い、これ以上何も言わない事にする。



「あと、今日の迷宮で思ったんだけど、アクアブリットに回転を加えれたら攻撃力が上がると思うんだ」


「回転、ですか?」



 ルナはいまいちピンとこなかったようで、床に2つの絵を描いて説明してあげた。生前の友達に分かりやすいイメージで説明するなら、ライフルの弾と7つの玉を集めると願いが叶うアニメの気〇斬なのだが、この世界でそのまま言っても通じる訳がない。


 僕の絵は下手だったが、とりあえず理解してくれたようなので、今後それを使えるようになるかはルナ次第だ。







「それでは新しい杖を買いに行ってきますね」



 翌朝、ルナは店に1番に入るような時間から出かけようとしていた。



「ちょっと待って!私も一緒に行くから。……ルナ1人だったら騙されて変な物を買わされるといけないからな」



 冒険者になりたてのルナにとって武器屋に行くのは初めての事もあり、アリサは心配でついて行くと言いだして準備をしにいった。



「……私ってそんなに騙されやすそうですか?」


「まあ見た目から考えると、子供がお使いをしているように見えるだろうね」


「……………」



 アリサはまだ準備が終わっていないようでこの場にはいないので、ルナの質問に答えてあげたが……少々落ち込むように黙ってしまった。



「待たせたな。……て、どうしたんだ?」



 俯いているルナを見たアリサは疑問に思い聞いて来た。



「何でもありません!それに子供でもありません!」


「え?ああ、そうだな」



 何やら怒っているようだったので適当に相槌を打って返事をしたが、アリサの頭には?が浮かんでいた。







 僕達が向かったのは、アリサの行きつけの武器屋にだった。



「あ、おっちゃん。武器を見せて欲しいんだけど」



 店に入ると他の客はまだいないようで、アリサが声を掛けるとすぐにこっちを振り向いてくれた。



「なんだアリサか。また値切って武器を買おうと思っているのか?」



 武器屋のおっちゃん。名前を<グラム>と言うらしいのだが、身長は190ぐらいはありムキムキの筋肉質で、棍棒でも持たせたらミノタウロスのような雰囲気を持った男だった。



「…そんな過去の話を持ってくるなよ……今日は妹の武器を探しに来たんだよ」



 第一印象が値切り女と言われたような感じがして、アリサは少し恥ずかしそうにしていた。



「妹?こんなにちっちゃいのにもう冒険者なのか?」


「………はじめまして、ルナです。これでも15歳になっていますので、もう立派な大人です」



 ちっちゃいと言われた事に少し思う所があったようで、自己紹介の中に年齢を入れて抗議していた。



(…この笑顔は怒っている時の顔だ)



 見た目は満面の笑顔なのだが、知っている人は知っている。ルナの怒った笑顔がそこにあった。



「そ、そうか。悪かったな、ちっちゃいなんて言って」



 グラムもその得体のしれない雰囲気を感じてすぐに謝って来た。



「分かってくれれば良いのです。それで杖を見せて欲しいのですが」


「杖?なんだ、アリサの妹は魔法使いなのか!」


「ああ、そうだよ」



 やはり魔法使いの人数は少ないようで、この店に来た魔法使いは数年ぶりだと言う話なのだ。



「最近の魔法使いの客は皆、専門店に行くんだ……そこの方が品数が多いしからな」


「おっちゃんは杖を作るのは苦手だったのか…」



 客が別の店に行くという事は、杖を作る腕が悪いと判断したアリサはその後グラムに怒鳴られた。



「馬鹿を言うな!俺は魔石の加工だって一流の腕を持っていると自負している」


「ならなんで客が来ないんだよ……」



 突然耳元で怒鳴られたので、耳を押さえながらアリサは聞いた。



「………同じように作っているはずなんだが、なぜか威力が安定しないんだ」


「やっぱり腕悪いんじゃ……」


「いや、これは専門店でも起こる事なんだが、あそこは魔石の数を増やしてカバーしているらしいんだ。もちろん値段も高くなるが、安定を求める客はそっちに行くんだよ。だが俺はそんな風に値段を上げたくはないからな」



 少しでも安く武器を提供しようと考えているグラムは、値段を上げて数で誤魔化すやり方を認めていないようだ。



「ま、とりあえずおっちゃんの作った杖を見せてくれよ。私は出来ればおっちゃんの店で武器は買いたいと考えているからな」


「嬉しい事を言ってくれるな。まあ、数は少ないが見て行ってくれよ」



 どうやら世話になった店には懇意に付き合うのがアリサのようだ。その事を聞いたグラムも嬉しそうな顔をして杖を持って来てくれた。



「さっきも言ったが、最近は魔法使いの客が来ないからこれしかない」


「この中で中層クラスの魔法使いが使うような杖はどれだ?」


「中層?まあ、高い買い物だから良いのを買っておこうって事か。残念だがここにあるのは、全部初心者用から1つ2つ上の性能しかないな」


「そうか…」



 アリサが少し残念そうな顔をしていたので、グラムが疑問に思い質問していた。


 その話の中で僕とルナは出された杖を見ていた。



「こうやって並べられると、何が良い物か分かりませんね」



 ルナは杖を手に持って見るが、実際に使わないと分からないようだった。なので僕は並べられた杖を鑑定してみた。




多属性の木杖 ・・・ ランク3 『多属性の魔石を使って出来た木杖。どの属性の魔法使いにも合うが、飛び抜けた性能はない。やや水属性の性能が良い。使用魔石は5等級の火1、水2、土1、風1』




「なるほど……ここにある杖は全部出来が悪いね。…と、言うより材料の選定が悪いんだ…」



 僕はルナにしか聞こえないように話した。



「材料の選定ですか?」


「ああ、魔石には等級以外にも属性があるんだ。その属性をバラバラに使っているから、威力に安定感が出ない。ルナは水の魔法使いだから、水の魔石で作られた杖じゃないと性能を100%発揮出来ないからね」


「そうなんですか…私、魔石に属性があるなんて初めて知りましたよ」



 感心するように驚いていたルナを見て、逆に僕が驚いた。



「え!?だってリーザ達が魔石を鑑定しているじゃないか」



 そう、ギルドで換金する時はリーザ達が、しっかり鑑定しているのを見ていたのだ。



「あれは等級を確認する為のものですよ。そんな細密な鑑定は出来ないと思いますけど……」


「それで属性による値段の差がなかったのか。納得」



 そう話しているとアリサとグラムの会話も終わったようで、こっちに歩いてきた。



「ルナ、残念だけど専門店に行こうか」



 一番残念に思っているのはアリサのようで、表情が暗いので明らかに落ち込んでいるのが分かる。



「悪いな。話に聞いた限り、ルナの実力に耐えれる杖はないんだ」



 どうやらアリサからルナの実力を聞いたようで、グラムは客に見合った武器を用意出来なかった事を申し訳なさそうにしていた。



「……あの…もし今から杖を作るとしたら、時間はどれぐらい掛かりますか?」


「え?まあ、杖の命は先端の魔石だから、今ある杖に気に行ったのがあれば魔石をとり変えて終わりだ。だから半日もあれば出来るが……俺は満足いく物が出来る気がしないからな…」



 ルナが何故そんな事を聞いて来たのか分からず、不思議そうな顔をしていた。もちろん僕も何が言いたいのか分からなかった。



「……私、グラムさんの杖が安定した性能を出せない理由が分かったんです…」


(ちょっとルナ!世間で広まっていない事を言ったら、変に目立っちゃうよ!」



 僕は慌ててルナを止めたかったが、目の前にグラムとアリサがいる以上、動く事が出来ずにいた。



「!?。ちょっと待ってくれ!ルナには原因が分かるって事なのか?この短時間で?」



 僕の予想通りグラムは目を見開いて驚いていた。



「はい、原因は材料に使っている魔石です。属性がバラバラの魔石を使用しているから安定しないんです。もちろん使用者の使う魔法属性に合わせてあげる必要もありますが…」


「は!?魔石に属性?そんな話、聞いた事がないぞ」


「そうでしょうけど、……事実です」



 そう答えた後、グラムは何かを考え込むように黙ってしまった。



「おいルナ。お前、魔石の鑑定も出来るのか?」


「それは………一応…」



 実際に鑑定しているのは僕だから、ルナはハッキリと出来ると答える事は出来なかった。でもここで出来ないと答える訳にはいかないので、これが妥協した精一杯の答えだった。



「へー、リーザも鑑定してるし、魔法使いは魔石の鑑定も出来るんだな」



 鑑定をしていたのが魔法使いのリーザだったので、アリサは魔法使いは全員鑑定が出来ると思ったようだ。



「ルナ!客にこんな事を頼むのは変な話だが、属性が存在してそれが分かるなら、魔石を仕分けをしてくれないか?もしやってくれるなら、お前に合った杖を格安で作る事を約束しよう」


「分かりました。でも、鑑定する所を見られるのは恥ずかしいので、その様子は見ないでほしいのですが……」


「ああ、それぐらいは構わない。待っていてくれ!今すぐ持って来る」



 そう言ってグラムは店の奥の方に走って行った。



(…なるほどね。アリサの様子から、どうにかしてこの店で杖を作ってもらおうと考えたのか)





「待たせたな。さあ、これがこの店にある魔石の全てだ。鑑定を頼む」



 グラムが奥から持ってきたのは、箱に入った50個ほどの魔石だった。



「では少し後ろを向いていてください。……お姉ちゃんもです」


「え?私もか?」


「お姉ちゃんもです」



 ハッキリと言われた事でアリサは何も言えず、素直にグラムと一緒の方向を向いた。



「さて、始めましょうか」



 そう言いながら箱の魔石を机に出した後、僕も机に置き、申し訳なさそうな顔をして謝るように頭を下げる。


 声は出していないが、ルナは「すみません、勝手な事をして」と、言いたかった事は表情から分かったので、僕はすぐに仕分けを始めた。





 仕分けはすぐに終わったが、種類をどうやってルナに伝えるかと悩んでいると、その事を即座に察知して僕を抱き上げて自分の耳元に近づける。



「流石ルナ。よく分かってくれるね」



 僕はそう小さな声で言った後、魔石の並び順を教えてあげた。



「はい、終了しました。こっちを向いても良いですよ」


「もう終わったのか?そんなにあったのにずいぶん早いな」



 アリサ達が後ろを向いていた時間はおよそ3分ほどだった。これはリーザの半分以下の時間だったので、アリサは驚いていたのだ。



「それでどうなんだ。仕分けは出来たのか?」



 鑑定に掛かる時間を気にしないグラムは仕分けの方が気になるようで、並べられている魔石の方を見つめていた。



「は、はい。左から5等級の火、水、土、風と並べています。あと4等級の水の魔石が1つ混ざっていましたので別けて置きました」


「マジかよ………」



 その仕分けを見たグラムは、信じられないと驚いている。



「…すまん。その4等級の魔石は俺がわざと混ぜて置いたんだ。本当に鑑定が出来るか試したつもりだったんだが……これは疑いようがないな」


「おいおい。おっちゃん、ルナの事を疑っていたのかよ」



 試すような事をしたグラムに、少しムッとした態度でアリサは文句を言った。



「だからすまないって謝ったんだ。だいたいお前も属性があるなんて聞いた事がないだろ?そんな事を言われて、普通はすぐには信じられないぞ」



 グラムは試した事を謝ってきたが、そう疑う気持ちも分かるので、僕もルナもとくに気にしてはいなかった。



「それより、ついでに4等級の魔石も仕分けしてくれ。それと元になる杖も選んどいてくれよ。仕分けが終わったらすぐに作業に入るからな!」


「杖は決めています。これが一番可愛いと思いました」



 そう言って一本の杖を手にとって見せた。先端の魔石の両脇に翼が生えたような飾りがついていて、ルナは一目で気に入っていた物だった。


「そうか、なら少し待っていてくれ。魔石を持ってくる」



 店の奥から持ってきた追加の魔石は30個ほどだったので、すぐに作業を終わらせた。どうやらこの店には4等級の魔石までしか置いていないようだ。



「ならルナに合わせて水の魔石で杖を作ってくる。…あーアリサ、お前は店番を頼むぞ。どうせ暇だろ?」



 何の悪気もなくグラムはそう言うと、魔石と杖を持って奥に向かって行った。



「ちょ!?なんで私がそんな事を!おっちゃん、おっちゃん~~!」



 アリサの声はむなしく流されてしまい、グラムの後を追って店の奥に向かって行った。



「ハヤテさん、鑑定の件は本当にすみませんでした」



 ルナは誰もいなくなった店内で、もう一度僕に謝ってきた。



「別にいいよ。あれをしないと良い杖は手に入り難いだろうからね。ま、ルナの杖がしっかりした物になれば問題はないよ」


「それは大丈夫でしょう。あの人は冒険者の事を考えてくれていましたし、杖は持ちやすかったので腕は確かだと思いますよ」







「くそー、私達は客なのに店番なんてさせやがって!」



 しばらくすると愚痴をこぼしながらアリサが戻ってきた。



「すまないルナ。杖が出来るまで店番をする事になった。この後、防具も見に行きたかったんだが…予定変更だ」



 アリサは不満だらけのようだが、質の良い杖を手に入れる事は1番の目的だったので、諦めるように納得したのだ。



「私は構いませんよ。こういう店で接客する機会なんて、そうそうありませんから良い経験になります」


「……そうだな。どうせやるなら楽しむ事にするか!」



 そう言ってアリサもルナも、滅多にない経験として店番を楽しむ事にしたのだった。

 

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