仕事に追われるのは運命
結局、カトレアの頼み?を
断れなかったシンノスケは再びラビット・スキップの護衛に出ることになった。
「報酬がいいとはいえ、カトレアさんの仕事ばかり押し付けられているような気がするな・・・」
商船組合を出てシラヌイのドックに向かって歩くシンノスケとマークス。
組合から借りているドックまでは徒歩で30分以上掛かるが、シンノスケは無人タクシーや軌道交通システムを使おうとはしない。
毎回、散歩がてらのんびり歩いて行き来している。
「押し付けられているといっても、強制されているわけでもないのですから別に断ればいいのではありませんか?」
「そうなんだが、どうにもな・・・」
「以前から申し上げていますが、マスターは交渉事が不得手過ぎます。今後のことを考えると、もう少し強気の交渉術を身に付ける必要があると判断します。特に、マスターは押しの強い女性に弱すぎます」
「・・・・」
マークスの言葉にぐうの音も出ないシンノスケ。
確かに、カトレアもだが、ミリーナといい、リナといい、押しの強い女性に迫られると3歩程引いてしまい、相手のペースにのみ込まれてしまうことが多々ある。
それを自覚していながらも改善することがなかなかに困難なのだ。
「わかってはいるんだがな・・・。しかし、それにしてもカトレアさんは手強過ぎるだろう。物理的に逃げられず、断れない状況に追い込んでくるとか!さすがラーミア人だ、その恐さは蛇そのものだぞ」
横を歩くマークスがシンノスケを見上げる。
「マスター、まさかとは思いますが、ラーミア人の下肢は蛇のもので、ラーミア人も蛇類から進化したとお思いですか?」
「・・・?蛇そのものからの進化だとは思わんが、そんなもんじゃないのか?」
「マスター、ラーミア人の下肢は蛇に似ていますが、全くの別物ですよ。カトレアさんに締め付けれられて気づきませんでしたか?」
「?」
「そもそも、士官学校には多様な種族との共生に関するカリキュラムがあった筈ですが?」
「ああ、あったにはあったが、そっちの分野はあまり成績が良くなかったな。限りなく不可に近い可だった」
マークスが呆れた表情を見せた(かに見えた)。
「以前のラーダ人の知識についてもそうでしたが、商人ならば、そういったことの知識も必要だと思いますよ。そもそも、ラーミア人の下肢は蛇のものではありません。湿地が多い惑星の環境に適用した進化を遂げた人類です」
マークスによればラーミア人の下肢は足場の悪い湿地や沼地での移動が容易になるように進化したということで、蛇のように鱗や腹板等は無いとのことだ。
「そういうことか。進化はともかく、学校での授業で覚えているのはラーミア人の白兵戦能力は高い、ということだな」
「確かに、移動の静寂性と、鋭い感覚器官、銃火器や刃物を操る上肢と、強靭な下肢による打撃と締め上げ、下肢の先端でも銃やナイフを扱える者もいるようで、ソル宇宙軍や沿岸警備隊にはラーミア人の白兵戦部隊もあるようです」
「確か、ラーミア人は女性が大半だったよな?そんな部隊、想像するだけで恐ろしいな」
「そういった部隊がある反面で、宇宙海賊にもラーミア人が存在しますからね」
「絶対に相手にしたくないな」
そこでふと気付くシンノスケ。
「因みに、お前の今のボディでラーミア人に対抗できるのか?」
「相手が複数なら難しいですが、一騎打ちなら対応可能です」
「以前のガチメカマークスならともかく、そんな小さな身体でもか?」
確かに今のマークスのボディは子供の教育支援用の友達型ドール。
生態外装は施されていないが、余計な突起物の無い、滑らかでシンプルな身体だ。
「以前は多少の不満がありましたが、この身体もなかなか良いものです。パワーリミッターを解除しているので、以前の身体程ではありましたが、パワーは十分ですし、速度は15パーセント増しです。シンプルなデザインもラスボス的で良いですね」
「ラスボスってなんだ?」
「少年用バトル物語にあるでしょう?何段階かに変化するタイプの強敵の最終形態です。小柄でシンプルなのに桁違いの強さというものが定番です」
「お前は何を言っているんだ?どこでそんな知識を得た?」
「この身体の基本メモリーにインプットされていました。子供との会話に対応できるように各種データがありました。他にも物理法則を無視して、科学力を凌駕した魔法少女ファンタジーのデータも。魔法という超絶能力を有しながら最終的には5人組で1人の敵を相手に殴る蹴るの物理攻撃を・・・」
「止めろ!誰かに怒られるぞ!」
いつの間にかくだらない会話になっている2人。
脱線したが、現状でカトレアの仕事ばかり引き受けるというわけにはいかないのが現状だ。
「私達が引き受けている仕事の大半はカトレアさん絡みですが、それ自体は問題ではありません。彼女の仕事は確かにリスクが高いですが、十分に対処可能です。同程度の他の仕事と比べても報酬の高さを考えれば彼女の仕事を選択するべきでしょう。しかし、それだけでは足りません」
「確かにな。アクネリアに帰還するためには早急にシラヌイのローンを払い終え、暗黒大運河を跳躍できるだけの能力を持つ船を手に入れなければならないからな。・・・先の長い話だな」
「現在の稼ぎだと数年を要しますね。やはり働き方改革が必要です」
「もっと働いて稼げ!ってか・・・」
逆働き方改革を必要とする程のシンノスケとマークスの現状。
仕事はどこまでも追ってくる。




