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何処に行っても苦労は尽きない

 貨物船ラビット・スキップの護衛依頼を終えて中央ステーションに戻ってきたシンノスケとマークスは依頼達成の報告のために商船組合を訪れた。


「カシムラさん、お疲れ様でした。こちらにどうぞ」


 他の窓口に行こうとしたシンノスケの先手を取ってケヴィンが声を掛けてくる。

 シンノスケは肩を竦めつつ諦めの表情でケヴィンの前に立つ。


「護衛依頼完了しました」


 ラビット・スキップの護衛依頼のデータを提出するシンノスケ。


「はい、ありがとうございます。確認しました。護衛については問題なし。で、今回は海賊船2隻を撃沈。これで討伐実績は宇宙海賊3隻目ですね。・・・ああ、今回撃沈した内の1隻は賞金が掛けられていた海賊ですね。討伐報酬に賞金が上乗せになります。しかし、カシムラさんの実力ならばもう少しスコアを挙げてもいいと思うのですが?」


 厭味ったらしい口調のケヴィン。

 

「護衛対象の安全が最優先ですからね。それに、この辺の宇宙海賊は引き際を心得ていて、厄介な相手ですよ」

「確かにそうですね。彼等は兎に角すばしっこくて、沿岸警備隊や他の護衛艦乗りの方も手を焼いています。むしろ、短期間で3隻もスコアを挙げたカシムラさん達の方が異質ですよ」


 シンノスケ達のことを評価してくれているようたが、それならば嫌味を言う必要はないだろう。

 ケヴィンは優秀だが、その性格にクセがある。


「ここでの仕事にまだ慣れていませんからね。慣れればもう少し結果を出せるとは思います。まあ、おいおいの課題ですよ」

「期待していますよ。はい、手続き終了です。護衛依頼の報酬と、討伐報酬に賞金の振り込みも完了しました」


 シンノスケと話しながらもケヴィンは手続きを済ませる。


「ありがとうございます。それでは我々はこの辺で・・・」

 

 返送されたデータを確認したシンノスケは長居は無用とばかりに早々と退散しよう試みた。


「カシムラさん、ちょっと待ってください。カトレアさんから次の指名依頼が入っていますよ」


 カトレア自身も言っていたが、カトレアは再びシンノスケを仕事に連れ出そうとしているようだ。

 

 しかし、カトレアの護衛依頼は危険度と難易度が高い。


「いや、このところ休みなしでしたからね。少し休もうかと・・・」

「しかし、カトレアさんの依頼を快く引き受けてくれる方はカシムラさん位しかいませんので」

「いや、私も別に快く引き受けているわけではないですよ?貴方が押し付けてくるから仕方なく引き受けているんです!」

「押し付けるなんて心外です。割のいい仕事を斡旋しているだけですよ」

 

 飄々と話すケヴィンに辟易するシンノスケ。


「報酬が高くても危険で厄介な仕事です。前回なんか、海賊に襲われている最中にカトレアさんはブースターを使って急速離脱してしまいましたからね。まあ、カトレアさんの船は非武装だし、自船の安全を優先しただけなので契約違反ではありませんけど、護衛対象が護衛艦を置き去りにするなんて、聞いたことがありませんよ」

「それでも、護衛依頼を全うしてくれたではありませんか。他の護衛艦ではなかなかこうはいきませんよ」


 どうあってもケヴィンはカトレアからの依頼をシンノスケに押し付けようとしているようだ。

  

 このまま会話を続けていると逃げ道を失う。

 一刻も早くこの場を離れなければならない。


「兎に角、今回は・・・」

「・・・あら、私からの依頼を受けてくださらないのですか?」

「うっ、カトレアさん・・・」


 足音もなくシンノスケの背後に忍び寄っていたカトレアの尻尾がシンノスケの首に巻き付く。

 シンノスケはカトレアではなくマークスを見た。

 背後に立っていたマークスならば、如何に移動する時に足音を立てないカトレアでも、その接近に気づけた筈だ。


「マークス、何故知らせない?」


 マークスはそっぽを向いてシンノスケから視線を外す。


「シンノスケさん。つれないじゃないですか。私はぜひとも貴方にお仕事をお願いしたいのですよ」


 気がつけば、首だけではない、全身にカトレアの下肢が巻き付いていて身動きが取れない。

 物理的に逃げる機会を完全に失ってしまった。


 カトレアはラーミア人と呼ばれる蛇のような下肢を持つ種族だ。

 ラーミア人はアクネリア銀河連邦周辺では出会う機会は滅多にないが、ソル民主共和国にはかなりの数のラーミア人がいて、特段珍しい人種ではない。


 カトレアの下肢は3メートル以上はあろうかという位に長く強靭で、本気で締め付ければシンノスケの全身の骨など粉々に砕かれてしまうだろう。

 尤も、今は本気ではない甘締めの状態で、首も身体も痛くも苦しくもないが、逃れることもできない。


「いや、私も少しは休みを・・・」

「んっ?何ですか?」


 少しばかりキュッと締め付けられる。


「・・・とりあえず、お話を聞きます」

「まぁ、嬉しいです!シンノスケさんなら引き受けてくれると信じていました」

「いや、まだ引き受けるとは・・・うっ!」

 

 もはやシンノスケに選択肢は無い。

 シンノスケは裏切り者のマークスを睨みながら諦めた。

最近、ラミアにハマっています。

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