ポップアップの内容、書き換えちゃおう(1)
塔型ダンジョンの―――中庭、とでも言えばいいのだろうか。
石畳に覆われた、そのだだっ広い空間のど真ん中で、大事な武器を放っぽった魔法使いが力なく倒れている―――いや、ぶっ倒れていると言った方が情景を伝えやすいだろう。
もちろん、彼女の体力ゲージは3分前に満タンまで回復されている。使用したポーションが質の悪いものであったことを考慮しても、十分に全回復するだけの時間を取ったはずだ。
つまり、今のティアラが地面に倒れている理由は他にあるということである。
スケルトン・アーマーを装備した俺は、倒れているティアラの方へと歩み寄った。ティアラに遅れてポーションを飲んだ俺の体力も、もうじき満タンまで回復する頃だろう。
「やったなティアラ。俺たちって、意外と最強のコンビになれるかもしれないぞ」
俺が声を掛けるが、彼女が応じることはなかった。
「おーい、聞いてる? なあティアラ」
「……ました」
横たわったままのティアラが、何かを呟いた。しかし、あまりにも声が小さくて聞き取ることができない。
「ん? どうしたって?」
聞き返してみると、悔しそうな表情のティアラがこう呟いた。
「ポ、ポーション……忘れました……」
「え? 回復ポーションならさっき飲んだだろ……あ、さては高レベル帯の君の体力ゲージは、一本のポーション瓶じゃ回復し切れなかったとか」
「い、いや……魔法ゲージの回復ポーション……」
魔法ゲージ? そんなのあるのか?
自身の体力ゲージ付近を探してみるが、魔法ゲージなどという項目は見当たらなかった。ひょっとして、ジョブ『魔法使い』限定の仕様なのかも。
と、すると……魔法使いティアラの身体は、体力と魔法の二つのゲージを燃料として動いているのか。
俺はしゃがみ込んで、ひとまずティアラに肩を貸すこととした。この辺の地面は石畳―――痛かろう。
「ティアラ、ひとまず撤退を……」
俺がそう言いかけると、俺の肩を借りて立ち上がったティアラは、すぐさま言葉を遮った。
「いいえそれは無理です来月の用事に間に合わせるべく異世界を脱出するには今日中に『ストーリー・チャート』を入手しておきたいのですからここで撤退するわけにはいかないのです貴方にはまだ説明していませんでしたが来月ある用事とは」
早っ! 早口すぎるし!なんか前にもこういうことあったし! 何言ってるのか全然分からないし!
しかし―――ティアラの気持ちは伝わった。撤退は無しだ。
「分かっている俺とて来月の用事への参戦を欠かすことは絶対にできないし確かに今のところ身体はかなり疲弊しているがそれでも今日中に『ストーリー・チャート』を入手して異世界攻略によりスピード感をもって挑みたいと考えているところだったのだから撤退するなんて本心では尻から打ち上げ花火が出てくるくらい言いたくなかったところだ」




