6人目の社員
夕方になりまずユキナが先に帰宅した。
私と親父が一緒にいるのを見てそのままテーブルに座り込んできた。
「ウミさん! お父さん! ただいま!」
「「おかえり」」
「顔合わせはどうだった? 行けなくてすまないな」
「ほとんど知ってる人だったし大丈夫だよ」
遅れて古杉くんも顔を出す。
「おつかれさまです!」
「おつかれ。ありがとうな」
「鈴木さん、朝は慌ただしくて失礼しました! 昨日は楽しかったです!」
「こちらこそだよ」
そのまま話をしていたら今度はミズホが飛び込んでくる。
「わー! みんないるー! ただいまー!」
そして三花くんも合流。
私は席を立ちみんなに声をかけた。
「みんな、親父には全部伝えたよ」
「私に出来ることは協力を惜しまないよ。みんなと一緒にこの世界を救う手伝いをさせてもらう」
一同も立ち上がって拍手。
「このメンバーで世界を救うことになる。巻き込んで申し訳ないけどみんなはもう家族だ。遠慮なく助けてもらうからな! 改めて宜しくな!」
全員がそれぞれ握手を交わす。
「さあ、仕事帰りのところを悪いが開店準備を手伝ってくれ。すっかり話し込んでて全然手がついてないんだ」
「よしやるぞー。ユキナとミズホは着替えて厨房で仕込みの手伝いよろしくな」
「「はーい」」
「古杉くんと三花くんはオレと店の掃除だ」
「「はい!」」
海クリエイティブ総出で開店準備をして、どうにかギリギリ無事に開店できたのだった。
騒ぎになるので私たちは裏口から外に出て事務所に戻ったのだった。
―――――――
「古杉くん、三花くん。ちょっと話があるんだけど」
「「はい」」
「ここに座りなさい」
「なんすかなんすか」
「え。オレたちなんかしましたっけ」
「里山さんの件だよ。なに勝手に面接して入社させてんだよ」
「「ええ!?」」
「ん?」
「ユキナが社長案件の緊急やゆうてきましたよ」
「私もです。ミズホからの指示です」
「なぬ?」
「社長に聞こうとしたら邪魔するなと言われました」
「私もです」
「里山さんとの恋の旅路の始まりやゆうて」
「そういうことなら確かに部下に指示はしにくいかと納得した次第です」
「何だそれは!」
「はぁ、ガセでしたか」
「だよなあ。公私混同なんてあり得ないとは思ったんですよね」
にゃろう。
「ユキナ! ミズホ! ちょっとこっち来て座れ!」
あ、逃げた。
―――――――
古杉くん、三花くんとこれからについて話し合う。
なお、ふたりには罰として露天風呂を掃除させている。
「最初に良縁を告げるサインは来てるんだけどな。まだ付き合いも浅すぎて躊躇してるんだ」
「サインが来てるなら話しても良さそうな気はしますけどね」
「人当たりは間違いないとは思いましたけど」
「ひとりだけ知らないってのはね。可哀想ってのもあるけど、やりにくいだろ」
「いざって時はそうでしょうけど、通常業務はめちゃくちゃ助かりますよ。女性スタッフは欲しかったんで」
「それはそう。オレたち一部のファンに疑われてますし」
「社長の方がバレバレなんで刺されずに済んでますけど」
「なんだよバレバレって。オレは何にもないよ」
「いや社長はそうでもふたりとも社長LOVEをまったく隠さないんで。疑われて当たり前っすよ」
「やめてくれ。もうすぐ50だぞ。とにかくふたりも彼女のことはしっかり見極めてくれ。ユキナとミズホは話してほしいと言ってる。あとはオレたち3人の合意で判断する」
「「わかりました」」
―――――――
翌朝。
9時少し前に里山さんが出社してきた。
初出勤なので全員で出迎えだ。
「おはようございます!」
「「「「「おはようございます」」」」」
改めて古杉くんとユキナ、三花くんとミズホの組み合わせを説明して4人と私の通常シフトを説明する。
それからこのマンションでの生活について。
「ということで2階が事務所、3階に私の部屋がある。こないだまで4階にふたりは住んでいたんだけど、今はレッスン場に改装した。いまふたりは屋上のコンテナルームに住んでるんだ」
「そうなんですね」
「このことは妙な誤解を生むから社外にはオフレコで頼むよ」
「わかりました」
「里山さんには前職の仕事を優先してもらいます。その上で手が空いてるときはユキナかミズホの現場見習いからお願いしようと思う」
「はい、わかりました! 仲介業の作業予定を用意してきました。今週フリーに動けるのは3日あるのでそこで現場の勉強をさせてください」
うん。やっぱり仕事ができるな。
言われずともきちんと業務予定を用意してくる。
「じゃあ改めて里山さん、挨拶をお願いします」
コホンと咳払いをしてから大きな声で宣言する。
「みなさん、改めまして里山さちです。今日からお願いします。エンターテイメントのど真ん中で仕事をすることになるなんて夢にも思いませんでしたが全力で頑張りますので宜しくお願いします!」
全員で拍手をする。
「それから私は社長のことが大好きです! でも公私混同には気をつけますのでご安心ください! ユキナさんとミズホさんに負けないように頑張ります!」
止めなさい。
なに大胆宣言してるのかな。
みんなも拍手すんな。
――――――
さっそく不動産仲介の進捗を報告してもらった。
「最初のオファーはみなさんご存知の通りこのマンションの購入でした。これは共同名義という形で終了しています」
みんなから拍手。
「次に地方エリアの土地購入ですが、それぞれ候補を絞りました。資料にまとめてありますので後ほどチェックをお願いします」
そういって資料セットを私に手渡ししてくれた。
うん。簡潔でわかりやすいな。
「報告ありがとう。じゃあこれで朝礼は終わります。あ、いつもは朝礼はやりません。毎週金曜日の仕事終わりに全員で集まって報告会と来週の予定共有をやってます。全体の予定はそれくらいかな。あとは自由裁量で営業と現場に動いてもらってます」
「そうなんですね。でも私はどうしたら」
「このあと貰った仲介業の予定を基に現場研修のシフトを組みますよ」
「ありがとうございます」
「自宅はマネージャーに共有しますね。そこにピックアップに行かせますから……」
「いえ、私は毎朝出勤しますよ。ユキナさんもミズホさんもここから出発ですし」
「え、それはそうですけど。面倒でしょう」
「私、社長との恋も全力ですから。直行直帰なんてあり得ませんよ」
うーん。
言ってることは正しいな。
まあそういうことならいいか。
「まあ無理はしないでくださいね。デスクはそこになります。ノートPCと会社携帯を置いてありますからセッティングしておいてくださいね」
「ありがとうございます。仕事と社長、どちらも全力で頑張りますね! みなさん宜しくお願いします!」
里山さんは肩を回しながら自席へ。
うん、やる気に溢れてますね。
賑やかになりそうだ。




