みんなでトレーニング
仕事が休みになったふたりは屋上に作った拡張秘密基地のタラソプールで浮かんでる。
いいなあ。
一方の私は朝からギル師匠とトレーニングだ。
「バリアの張り方はなんか分かった気がするよ」
「普通はこんなことできないぞ」
指をさしたら対象にバリアを張れるようになった。
人間サイズからなんと大きさは制限なし。
夜中にこっそりテストしたけど、見える範囲にはビルでも山でも何にでもかけることができた。
しかもバリアをかけるとチュートリアル画面が出てくるようになった。
なんかわかりやすい制御方法がないかなあと考えたらこうなった。
なかなか便利だな。
「あのな。普通は城を囲むような障壁の発動には何人も魔道士が必要だし、それを維持するにはさらに何十人もの魔道士が何セットも必要なんだぜ」
「なんか魔力は無限らしいからな」
「山にバリアかけられるとか反則どころじゃないからな。マスターめちゃくちゃだぜ」
そもそもは周りにある魔素を使って魔法を発動させるのが当たり前なのに、私の場合は体内の魔力だけで完結させている。
本来はありえないことらしい。
そして覚えたばかりのクリエイトとコピーはとんでもない能力だった。
コピーは等価交換なんて無視。
素材もなしに何でも増やせた。
物理ってなにかね。
クルマも増やせたしな。
たぶんやろうと思ったら富士山でも増やせそうだ。
これもとてつもない魔力を消費する魔法だから本来はせいぜい小さなものひとつをふたつに、くらいのものらしい。
私の場合は倍々で増やし続けられるので制限がない。
100個を200個にしても全くノーダメージだった。
で、クリエイト。
これは奥が深すぎた。
想像するだけでモノを作り出すことができる。
なんとクリエイトで魔法も創造できるらしい。
ギルからはこれが伝説の魔法のひとつだと教えてもらった。
神界(というものがあるのも驚いたけど、まぁあるよな。神さまがいるんだし)でも使い手は限られるそうだ。
てかコピーだけでも世界は救えそうだよな。
いまの揉めごと……例えばレアアースとか石油とかの資源とか、そんなものは無限に増やせる。
逆に価値が暴落して違う戦争が起きるのかもな。
うん。大きなことは忘れよう。
ということで、不要になったユキナとミズホの部屋があったフロアを、広いレッスン場にクリエイトした。
壁の全面を鏡貼りにして完全防音。
スチール撮影はもちろん、簡単な動画も撮れるように配信、録音ができる機材も入れた。
ついでにカラオケも。
ここは拡張はせず、レッスンコーチもマネージャーも入れるオープンな仕事場にした。
これでややこしい同居も誤魔化せるので、通常の事務所として人も招く事ができるな。
あ、古杉くんと三花くんにレッスン場を見せたらふたりの部屋がないことがバレるな。
屋上のバルコニーに大きくて豪華なグランピングテントでも張ってふたりはそこに住んでることにするか。
昼からはみっちり魔力コントロールのトレーニングをさせられた。
抱える魔力が膨大なために、とにかく繊細なコントロールをしなければいけないそうだ。
これが出来ないと憧れの攻撃魔法は扱えないと言われているのでこっちも本気だ。
タラソプールに満足したふたりも午後からはトレーニングを始めた。
実はこのふたり、武道のたしなみがある。
ユキナは幼少期から始めた剣道。
大学までバリバリの剣道女子だった。
同世代に世界大会で優勝するような天才がいたので優勝経験こそなかったが、全国トップ3……つまり世界トップ3に入る腕前だったらしい。
実業団の誘いを蹴ってまさかの芸能界入りをした時には当時の剣道界には激震が走ったという。
ミズホは空手だ。
それも極真。
こちらも幼少期から名を馳せた選手でオリンピック代表に手が届くような逸材だったという。
こちらも突然歌手の道を選んだことで連盟はひっくり返ったと聞く。
このふたりはおそらく私の影響によりいち早く魔力に覚醒すると言われている。
その時に備えてふたりもトレーニングを再開したのだ。
ユキナは魔法剣士、ミズホは武闘家とか格闘家になることを宣言している。
実際に有名なRPGゲームみたいなジョブがあるのかはわからないけれど、まあ具体的なイメージを持ってトレーニングするのはきっと成長に役立つだろう。
素質でいえば私より格段に上だよね。
追い抜かないでほしいものだ。
―――――――
夕方になりトレーニングはようやく終了となった。
クタクタの身体で屋上にあがり、癒しタイムに移行する、
天然温泉の露天風呂からサウナ、水風呂、ととのいスペースのゴールデンタイムだ。
クタクタになったといっても実は体はなんともない。
オレ頑張ったし! という心の問題だけだったりするのだけどね。
こういうの大事だから!
3セットを終えてリクライニングチェアでサーバーから注いだビールを楽しんでいると、仮眠していたユキナが起きてきた。
「あー、いいな! ユキナも飲もうっと」
そういって私のリクライニングチェアに割り込んで当たり前のように私のビールを奪って飲み干した。
「ぷはーっ!って感じだね! お代わり持ってくるね!」
私に新しいビールを渡すとそのままプールサイドにあるバーベキューコンロでなにやらつまみを作り出した。
こういう時のユキナのつまみは良いんだよな。
楽しみだ。
そのうちミズホも起き出してきたので、そのまま庭でバーベキューをすることにした。
「マスター、収納持ちでコピーもあるんだしもっと大量ストックしとけよ」
「確かにな。明日は買い出しにするか」
「え、なに? 買い出しにいくの? ユキナも行きたい。調味料がいろいろ無くなりそうなんだ」
「えー、ならミズホもいくー!」
「いやいやふたりは保護対象だぞ。バリアかけとくからここにいろよ」
「「イヤだ」」
「おいおい」
「いいんじゃねーか。マスターの近くにいるのがどこよりも安全だぞ」
「あーそういう考え方もあるのか」
「「?」」
「ギルが連れて行っていいってさ」
「ギルちゃん最高」
「ギルちゃん大好き」
「うひょー!嬉しいもんだな!」
ギルは喜んでふたりの周りを飛び回った。
「ん?」「あれ?」
「どうした?」
「なんか飛んでるよね」
「うん。飛んでる」
「え、見えるの?」
「いや、見えないけど気配がある」
「うん。なんかいるのは分かるよ!」
ギルは急停止して驚いた声を上げる。
「まじか! もう目覚めるのか!?」
「いつ頃になるんだ?」
「どうだろうなー。ここから長いケースもあるしな。なんにせよ兆しは異常に早いぞ」
そのことをふたりに伝えると大喜びをしていた。
楽しみなニュースにワクワクしながらみんなでバーベキューを楽しむのだった。




