屋上改造
逃げることはやめだ。
考えてみれば相手はただの業界のおっさんだ。
例え裏社会に繋がってたとて、神さまにもらった能力で対処すれば正直敵ではない。
そもそもこちらもここまで大きな問題にするつもりもなかった。
今後はその局の仕事を控えることをチーム内で決めただけで実際には先方に伝える前の出来事だ。
結果的にこうなったのは本人が不正に手を染めていたからであり、こちらの知ったことではない。
それを逆恨みされても正直困る。
いつまでもこんな輩に振り回されるのもアホらしいしな。
というわけで迎撃だ。
どんな手を使ってこようと対処してみせる。
その日の夜。
風呂は狭いので混浴は回避できたが、寝るときは一緒だと譲らなかった。
とは言ってもダブルベッドだし3人で寝るには無理がある。
だったらついでに拡張を試してみようとギルに相談してみた。
「いいけどさ、マネージャーたちが来たらバレるぜ」
「あ」
「「確かに」」
「部屋には入らないと思うけどな」
「絶対に来ない部屋とかはないのか?」
「あ! 屋上の小部屋は?」
「おー、あそこは絶対に来ないな」
「ならそこにしようぜ」
ということで、屋上にある小部屋を拡張することにした。
「どうしたらいいんだ?」
「イメージだよマスター。広い部屋をイメージしてみな」
と言われてもな。
だったら……こないだみんなで泊まった貸し切りコテージだな。
イメージだよな。
目を閉じてコテージの作りを思い出す。
玄関を空けたら広いリビングが広がっていたな。
入って右手にキッチンスペース。
大きなアイランドキッチンもある。
大きな冷蔵庫にコンロ、オーブン、かっこいい食器棚に調理器具も最新式が揃っており、本格的なコーヒーメーカーも置いてあったな。
リビングはとんでもなく広くて大きな1枚ガラスの窓が奥に広がる。
大きなソファ、大型テレビ、ローテーブル。
廊下に入るとトイレと広いバスルーム。
その奥には寝室が4部屋。
すべてにクイーンサイズのベッドと広い収納、大きなテレビ。
2階にあがるとリビングとトイレとバスルーム。
そのリビングの海側には壁や窓がなく、吹き抜けになっていてバルコニーにそのまま繋がってた。
バルコニーにはジャグジーがあり、ベットチェアが4つ並んでいて、最新式のマッサージ機もあった。
ハンモックもあったし、天体望遠鏡も置いてあったよな。
庭には大きなプールと天然温泉の露天風呂!
大きなサウナがあって、ここにも水風呂にできる深めのジャグジーがあったな。
庭にもシャワーとトイレがあって便利だった。
で、巨大なバーベキューコンロ。
薪を燃やせるスペースもあったぞ。
庭の奥には小さな小道があり、プライベートビーチに繋がってた。
っても海は再現不可だろうなあ。
あ、海の代わりに海水を引き込んだタラソプールを視界いっぱいにできたら素敵だなあ。
あー、また行きてえな!
と。
そんなことを真剣に妄想していたら、ユキナに肩を叩かれた。
我に返ると目の前にはそれらがすべて完全再現されていた。
「んなあっ!!!!」
「マスターすげえー!!!!」
「うわー!こないだのところだ!」
「こんなことできるのー!?」
いや驚いたのはのはこっちだし。
「マスター、これ単なる【拡張】じゃないぞ。【クリエイト】発動してるだろ!」
調べてみたらどちらも発現していた。
あと【コピー】も。
「すげえなマスター。これは驚いた」
「やばーい! もう下の部屋いらないよ!」
「ミズホもここに住むー!」
「いやいや、これ外から見たらどうなってんだ?」
慌てて外に出るとそこにはいつもの小さなプレハブが立っているだけ。
「マジかよ」
「すげえな。さすがはオレのマスターだ」
「いや無理があるだろ。何でもありじゃねえか」
こりゃうっかり立ち入られたら終わるな。
古杉くんと三花くんにもいずれは打ち明けるつもりでいるけどさ。
なんにしても屋上には人が来ないように気をつけよう。
たまにショート動画を撮ったりするからその時は部屋の鍵を無くしたことにして鍵をしておけばいいな。
「これ、この部屋に鍵かけないとだな」
「特定人物しか入れなくすりゃいいぜ」
「え。どうやんの?」
拡張した部屋を見えない壁で囲むイメージだとか。
選んだ人は拡張スペースに入れるが、他の人にはいつもの小部屋にしか入れない。
どこでも転移に選別機能を付ける感じかな。
えーと。
「オレとユキナ、ミズホ、ギルはこっちの部屋に入れるけど、ほかの人にとっては元の部屋!」
イメージしながら言葉にしてみたけど……こんなんでいいのか?
よくわからんな。
「なあマスター。冗談半分で言ったんだけどさ。……がっつり機能してるぞこれ」
「マジで?」
「バリアも発動してるな」
「え? 前に聞いたときはまだまだ出来ないって言われたよな」
「出来ちまったな。しかもかなりの強度だぞ」
「なんかこっち方面の才能でもあるのかな」
「マスター天才かもな」
とにかくこれは嬉しいぞ!
ユキナが言う通り、もうずっとここに居るだろうな。
あとバリアが発動したのはデカいだろ。
日常生活における汎用性はかなり細かくテストしないといけないけど、いざってときは確実にふたりを守れる。
やべー! 楽しみすぎる!!!
とりあえず荷物を運び込むか!
あ。
コピーと転送があるよな。
試しにやってみるか。
――出来た。
クローゼットの中身をコピーして収納できた。
あれ?
そういえば転送ってこっちから知ってる場所に送れるってやつじゃなかったっけな。
向こうからも引っ張れたのか。
思い込みでもイメージできればこんなアレンジもできるってことだよなあ。
てかなんで他のクローゼットから別のクローゼットに移せるんだよ。
しっかりハンガーに吊るされてるし。
ふたりのクローゼットはどうなってるかわからないので手運びさせよう。
あ。
お金、コピーできるよね。
でも番号とかダメだな。
それにもうかなり溜まってるし。
なんか神の力で偽造はダメな気もする。
それよりこの秘密基地をあちこちの田舎にコピーしたいな!
よし、田舎に土地を買うことにしよう。
転移ですぐ行けるしな!
うーん! ワクワクが止まらないぞ。
いかん、世界を救うための力だった。
てかさ。
本当に何から世界を救えばいいんだろうな。




