File 13 県大会
「今日は絶好の大会日和だな。」
ある晴れた日の金曜日
団体戦の県大会は一日で全ての日程を終わらせる為、シードである俺ら令成学園テニス部の出撃と同時に俺のデビュー戦でもある。
そんな晴れ晴れとした日に、一人余計な奴が付いてきた。
「剣道と違って、いい天気だ。これなら不正も見逃さない」
「なんでお前がここに居るの?大宮」
そう、なぜか大宮が俺たちと一緒についてきたのだった。
「なんでって、君がちゃんと活躍するかを確かめに来たに決まっているからじゃないか」
「別に嘘なんかつかねぇよ」
「ソレに初戦は誰だって緊張するものだ。そういう意味でもちゃんと喝を入れにだな...」
「まさか、わざわざ心配して付いて来たの?」
「ち...違う!!何故僕が君の心配なんか...」
コイツ堅物の割に、結構いい奴なんだな。と素直に感心した。
わざわざ学校があるのに...根はお人好しなのか?
「心配しなくても、ちゃんと勝ってくるさ。それじゃ行ってくる」
「...おう、気をつけてな」
そうだ。俺には負けられない理由が沢山あるんだ。
この県大会は、上位二校のチームが全国に行ける規定となっている。
その為、最悪決勝に行った時点で、本来は良いんだが...
「今回は、あの霊帝学園の高山智がいる地区だからな。勝ち上がりたいチームにとっては大きな障害になるんだろうざ」
成る程、あいつは去年だけで、全国的に一気に知名度を上げた選手だからな。
負ける訳にはいかないってか...上等。
そう思いつつ、試合は一気に進み始めた。
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正直、決勝までの道のりはあっという間に感じた。
今までつらい練習に耐えて来たからなのか...いい感じで勝ち上がって来れた。
霊帝学園も令成学園もここまで全勝で勝ち上がって来た。
その為、会場はかなりのボリュームを見せた。
「ヤッパリ、キタヨ。コンドウ」
「お前...察し悪い癖にこういうのには敏感なんだな。」
と威風堂々とした佇まいで、俺たちの方を見つめる霊帝学園テニス部
「この舞台でまた会ったな。水上」
「貴様もな」
「俺様は...ダブルス1に出場することになってしまった」
「奇遇だな。俺もダブルス1に出場するのだが...」
「ヤッフー!!俺は運がいい。まさかこんな形でお前と戦う事になるとは...」
「今回ウチのレギュラーはダブルスに慣れていない奴等ばかりだからな。仕方なく万能の俺に任された訳だ。だが、その分しっかり返り討ちにしてやるから覚悟しておけ」
「高山智ってのは、シングルス1なのか?」
「当然だろう。俺が勝てない男と言ったら、アイツぐらいだからな」
「そっか...」
と、自信満々に言って来た。
...アイツの事だから、ダブルスはないと踏んでいたんだが...
「フン、貴様せっかくあの時の勝負の決着をつけようと思ったのに、当たらんとは運がいいのか、悪いのか」
「高山智...」
俺は相手を睨みつけるように、言い切る。
今回は直接対決ができない形として試合に出る事になった俺は素直に言わなかった。
「情けないな。自分のチームメイトの行動すら把握してないやつが、こんな面倒なことするなんて...」
「ふん。近藤先輩はあんな風に見えるが、ウチの中ではトップクラスに強い。そしてシングルスに出る俺とビリーはそれ以上だ。貴様らに勝ち目などない。」
「上等だよ。うちのチームメイトを舐めてる発言すると痛い目見るってことをその身に刻んでやるぜ」
こうして、俺たちは決勝の舞台へと立った
俺の対戦相手は...ビリーだった。
「まさか、あんたと対決する事になるとはな...」
「キミトノ、ショウブ。タノシミダッタ。」
「それは光栄だね」
ニカっと笑う。ビリー
コイツも一応、ここまで勝ち上がってきた男の一人なんだよな。
気を抜かず、全力で倒す
それに今回、時間の都合上一斉に全員の試合開始は同時刻となった
団体戦なのに、まるで個人戦のような感じだが、負ける訳にはいかない。
それに、ちゃんと応援してくれてる奴もいる
「それでは、試合開始です。」
と審判の合図と共に、決勝戦が始まった。
ふんという合図と共に、ビリーのフラットサーブが突き刺さる。
サーブはこの前見た智のとほぼ同等のスピードで向かって来る
思わず、力に押されて、ラケットを弾かれそうになる礼治
なんとか返すことができたボールも彼の前では格好の餌食となり、あっさりとポイントを取られてしまった。
(...コイツ、強い)
やっぱり外国人選手だからなのか、これまで戦ってきた相手と何か根本的に違う部分があるような感じがする。
って考えてみれば、奴はあの霊帝学園でシングルスの座についてるんだ。
おそらくあの部長さんより強いって事なんだろう...
だから、どうした?俺は強くならなくちゃいけない。
約束もあるし、何より何かを得るには勝ち取るしかない。
こっちもサービスゲームはキープしながらもなんとか喰らい付く。
しかしその直後2−3の状態のまま、こっちは初めてブレイクを許される
そしてそのままズルズルと行き、5−3まで追い詰められてしまった。
状況は非常にまずいと言わざる終えない
完全に流れを持って行かれてしまったのである
そんなことを思っていると隣から、歓声が上がった。
どうやら、あっちの方では試合が終わったらしい。
どうやら高山智が、6−2で金次郎を打ち破ったらしい。
金次郎はうな垂れるような顔で俯いていた。
しかし、彼は眼を腫らしながら、こっちを応援してくれていた。
「諦めたら終わりだぞ!!」...と
俺はその光景を見た時、体に火が灯るような感じがした。
「フン」というサーブと共に、繰り出された俺のサービスエースをとった。
初めて、有利に立てた瞬間でもあった。
...まだまだ、こんなところじゃ終わらせねぇよ
礼治は改めて実感した。
これは団体戦だ。金次郎はずっとプレッシャーと戦ってくれたはずだ。
初めてレギュラーになれた俺達の為に必死で戦ってくれたことは彼の練習風景からよく見ていた。
俺は強豪校でレギュラーに初めてなった身。まだまだ足りない所だらけだ。
今の俺に出来る事なんて、殆どない。
でも、俺の周りの奴らは死んでも泣かせない。
先輩はきっと勝ってくれる
今はそれを信じて、俺は全力を尽くすだけだ。
そのままの勢いのまま、サービスゲームをキープした。
そして、強烈なスマッシュと共に初めてこの瞬間、ブレイクに成功したのである。
(...マズイですね。)
ビリーは思う。
彼は今の瞬間で確実に一皮向けたような感じだ。
この前会った時、そして今試合してる時と明らかに雰囲気が別人のように感じる。
彼はおそらく逆境に強いタイプだろう。
これだから、テニスは辞められない。
手が震える。焦ることはない確実にポイントを取っていこう。
(...彼に勝てば、正々堂々と言えるかもしれません。プロに行くと..)
ビリーはずっと悩んでいた。
彼の両親は彼に多大な期待を寄せていた。
彼は間違いなく、トップに立てる器の持ち主だろうと言われる程に...
でも、彼は自信が無かった。理由は簡単彼には自信が無かった
元々穏やかな性格の彼は、勝負の世界にあまりに不向きだった
しかし、親の期待という重圧から逃げるように、母国を去った
...何か心に大きな重りを乗せられたような感覚があったのである
しかし、彼はおそらく違うのだろう。
本気の勝負とは、常に真剣なんだ。
向いてる向いてないじゃない。決めるのは自分の意思だ。
だから、無名の彼に勝ってはじめて言おう。プロになるとその為に...
「俺が勝つ!!」
「いや!!勝つのは僕です!!」
二人の声が会場中に木霊した
互いの応援もそれにつられるように、ヒートアップする。
ゲームは5−5でタイブレイクに突入した。
サーブゲームは確実に取る一方で、ブレイクを奪う機会を窺う
勝負は一気に決まるかの様に一気に進んで行った。
俺のサービスからのスマッシュで、得点に絡んだ後、相手のサーブからになる。
強烈なサーブがコートに突き刺さり、リターンをする。
そして、ラリーを続けた後、強烈なジャックナイフが、コート奥に深く突き刺さり、勝負は決した。
「ゲームセットウォンバイ、令成7−5勝者 令成学園常盤」
俺はそこではじめてガッツポーズをした。




