第74話 ハジメを内緒で強化計画
「素体がハジメだから、もしやと思ったがスライム想像以上に美味いな」
「っていうか、なんで私たちこんなに早く走れるの!?」
「きっとハジメさんの所持してた能力をそのまま引き継いでいるのよ、この新しい身体!」
「それって、反則のような気がする…」
ハジメと別れてから、早3ヶ月。
アーシュラさんから魔界1周1週間を最初言われた時は魂が抜け落ちそうになったが、今ではギリギリ走れる様になってきた。
それもハジメがこれまでに得てきたバカげた能力のお陰だが、アーシュラさんは俺たちがハジメと同じ能力を持っているだろうと予想していたらしい。
俺とソニアはお互いに近接の壁と攻撃の両方をこなせる様になり、キャシーはフレイムキャノンなどの強力な攻撃を手に入れたので攻撃の幅が広がった。
問題はアンナの方で全員が自己再生能力を持った所為か、出番がほとんど無くなり拗ねている。
それでもキャシー同様に攻撃手段を得たので、攻撃に参加出来る様になったからパーティーの殲滅力は向上していた。
そんなある日のこと、残り3時間で師匠が待つ城に到着した俺たちに師匠がある重要な任務を与えてくれた。
「あなた達が今、人として生きられるのは婿殿のお陰なのは理解しているわよね?」
「はいっ! 師匠」
「婿殿の為に今の内からやれることが有るのだけど、あなた達にそれが出来るかしら?」
いつになく真顔で聞いてくる師匠、だが俺たち4人の答えは最初から決まっている。
「あいつの役に立てるのなら、何でもしますよ。 ハジメと再融合しろって命令だろうとお受けします」
ミシェルの即答にアーシュラさんも満足そうに頷いた。
「最終的には、再融合してもらうかもしれない。 だけどその前にして欲しいのは、この魔界に住むさまざまなモンスターを食べ歩いてきて欲しいのよ」
「モンスターを食べ歩く?」
何故、俺たちがモンスターを食べるとハジメの役に立つのだろう?
「これはね、ある実験も兼ねているの。 既に気付いていると思うけど、あなた達は婿殿の身体を素体にしているお陰で婿殿の能力を使うことが出来る。 すなわち、モンスターを食べることで能力を得られる力も兼ね備えているの。 だから、魔界で婿殿がまだ食していないモンスターを食べることで婿殿にもその能力が備わるのか知りたいのよ」
つまり俺たちのやる事は、ハジメの奴がまだ食ってないモンスターを見つけ出して食う。
それがそのままハジメも習得出来れば大成功、仮に失敗しても再融合すればそれまでに貯めてきた能力を全て与える事が出来るって訳か。
「面白そうですね、その実験。 ぜひ俺たちにやらせてください」
「物分りが良くて助かるわ。 でははい、これが魔界に生息しているモンスターの分布図よ。 クリスタルゴーレムやダイヤモンドタートルはもちろん、レインボーヘッドドラゴンも入れておいたからよろしく頼むわね」
クリスタルにダイヤモンド!?
胃袋は大丈夫かもしれないが、歯が折れないかこれ?
「あの師匠、レインボーヘッドドラゴンとは一体?」
「ああ、レインボーヘッドドラゴンは文字通り7色の頭を持つドラゴンのことよ。 それぞれが色にちなんだ属性のブレスを吐くの、食べれば文句なく婿殿は最強の存在になれるわ」
(師匠! ハジメよりも先に俺たちが最強になってしまいますが!?)
こうして、師匠発案の特訓第2弾。
魔界1周食い倒れツアー(別名、アーシュラ・ザ・イート・キャンプ)が始まった…。
ハジメの身体に異変が起きたのは、ミシェル達と別れてから3ヶ月が過ぎた辺りからだった。
「おかしいな」
「どうかしましたか、ハジメ?」
「いや、何故か知らないんだけど勝手に能力が増えているんだよ」
「道ばたに落ちてるカリントウに似たモンスターでも食べたのでは?」
口元に手を当てながら笑うセシリアに対して、ハジメの方はこめかみに青筋が浮かんでいた。
「誰が犬の○ンなんぞ食うか!」
早朝から夫婦漫才をしている2人の声で目覚めた他の4人も、続々と1階のリビングに下りてくる。
ルピナスに戻ってきてから1ヵ月後、ハジメは5人の女性と合同の結婚式を挙げた。
セシリア・ラン・ミリンダ・サリーネ・マリア。
親族の顔ぶれだけでも物凄い濃いメンバーとなったが、式自体は質素に行った。
ミリンダに配慮してのことだが、アーシュラさんが
「今日からはあなたも私の義理の娘、お義母様と呼んで良いのよ」
と言うと、即答で
「謹んで辞退します」
なんて答えるものだから、式が途中からミリンダとアーシュラさんの追いかけっこになってしまった。
しかしこれが、肉親に可愛がられた経験の無いミリンダの照れ隠しであることは全員承知している。
なのでアーシュラさんも本気で追いかけようとはしなかった、本気出したら最初の1歩目で捕まっていただろう。
こんな感じで新婚生活がスタートしているのだが、ミシェルの騒動以降システィナが何かをたくらんでいる様子は見受けられない。
力をさらに消費させることが出来たかも? と思ったが、アーシュラさんから釘を刺された。
「システィナの奴はミシェルに少しの加護を与えただけで、あとはフュージョンエティンを喰わせただけにすぎない。 まだ力は残っているはずだから、油断すると危険よ」
そんな中、次々と知らない能力が増えているのだ。
不安にならない筈が無かった。
一方その頃、ハジメを逆に不安にさせているとは知る由も無いミシェル達4人は奇策を用いてモンスターを食べ歩いていた。
バリバリボリボリ…。
「最初にダイヤモンドタートルで勝負をかけたのは正解だったな、凄い便利な能力が手に入った」
「ええ、ほんと。 まさか水晶で出来たゴーレムを噛み砕ける様になるなんてね…」
ミシェルはハジメに喰われなかったことで残った自分の能力【捕食融合】で、ダイヤモンドタートルを最初に喰ってしまったのだ!
そうして得た能力が【金剛膜】
任意の場所をダイヤモンドの膜でコーティング出来るというものだった。
ミシェル達はそれを使って、歯と歯ぐきをダイヤモンドでコーティング。
クリスタルゴーレムの関節を折ると、一斉に喰い始めたのだった…。




