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第56話 モンスター同士における食物連鎖の関係

「いや~この世界にはまだまだ知らないモンスターがたくさん居るんだな」


「本当ですね、あんな巨大なカマキリ初めて見ました」


「セシリア、この焼き鳥とかいう奴をもう一皿くれぬか?」


「あなた方はもっと緊張感を持ってください!それから倒したモンスターをよくその場で喰えますね!?」


「宜しかったらアグナードさんも如何ですか?このゴブリンとジャイアントマンティスの焼き鳥(?)、結構美味しいですよ」


「結構です!」


ダイナスを出て2日、7人の馬車での旅もそれなりに慣れてきても良い筈なんだがアグナードだけは未だにハジメ達の食生活に付いてこれずにいた。スライムなど体内に強力な酸や毒を持つモンスターを食べさせる訳にはいかないが、それ以外のオークやゴブリンの肉は【丈夫な胃袋】が無くても食べられる事はサリーネの両親が証明している。


マリアも最初はビクビクしながらマグロ(オーク)の胴体部分を口に入れていたがその美味さが分かると、モンスター喰い(モンスターイーター)の妻の本当の意味での仲間入りを果たす。しかしアグナードだけはどうしてもモンスターを食す事が出来ずセシリアに普通の食事を別に用意させていたのだった。


「ところでハジメさん、先程のジャイアントマンティスを食べてどんな能力を得られましたか?」


「う~んと、まずは【手刀】。あとは【不意打ち】かな」


「【手刀】はモンスターを捌くのに役立ちそうですね」


「どうしてモンスターを喰う方が優先されるのかな?」


「だってモンスターが美味い事を教えてくれたのがハジメさんとセシリア姉さまですよ」


サリーネが屈託の無い笑顔で言うものだからハジメは何も言えなくなった。




そうそう!さっきセシリアがゴブリンとジャイアントマンティスの焼き鳥と言っていたが、事の発端は朝食を終えてハジメ達が出発する準備をしていると林の中からボリボリという音が聞こえてきたのが原因だった。ハジメとランが様子を見に行くとそこには巨大なカマキリがピクシーを捕らえて生きたまま食べているという何ともグロい場面が広がっていた。


「うわぁ、モンスターがモンスターを喰ってるよ」


「なんじゃハジメ様、モンスターだって腹が減れば己よりも弱いモンスターを喰らうのは当然の理屈ではないか?」


「まあ、確かにそうなんだけどな。実際に間近で見ると想像以上にグロくてな」


「それはそれとしてハジメ様、当然目の前のカマキリを放置していく訳ではあるまいな?」


「放置する訳にもいかないだろ、きっと人間だって襲うだろうし。俺達に気付いていない今がチャンスだな」


ジャイアントマンティスに気付かれない様に頭上に回り込むと、巨大カマキリの首に鋸糸を投げて絡ませた。


「よいしょっと!」


鋸糸を手前に引くとジャイアントマンティスの首は簡単に落ちた、しかし胴体部分が急に暴れだす。


「ハジメ様、何をするのじゃ!虫は首が落ちても暫く生きているだろうが!?早く捌かないと我らも巻き込まれてしまうぞ」


「分かったよ、テンペスト!」


ジャイアントマンティスを真空の刃で細切れにすると、ハジメは地面に降りる。そしてカマキリの細切れをマジックバッグに入れ始めようとした時、背後でドゴッ!と音がするので振り返るとランがジャイアントマンティスの頭部に拳を叩き込んでいた。


「ハジメ様、さっきも言うたが虫は首だけでも暫く生きておる。気を抜くと命取りになりかねんから気を付けてな」


「ああ、悪かった。ラン、これは助けてくれたお礼だよ」


お礼に額へ口付けをすると、ランはその場に座り込んで放心状態となっていた。


ジャイアントマンティスの細切れを持ち帰るとセシリアがそれを使った料理を早速作り始める、ジャイアントマンティスの味は長ネギだった・・・。そして手持ちの食材と合わせて作られたのが最初に出てきたゴブリンとジャイアントマンティスの焼きネギまだった訳である。塩とタレの2種類が用意されどちらも非常に美味い、思わず酒が欲しくなってしまうが馬車の飲酒運転は危険なので止めておく。ここでまた事後報告になってしまうがダイナスを出る際にハジメはサトウからマジックバッグを譲り渡された。


「俺が公国から外に出る事は何かしらの行事でもない限りほぼ無くなるだろう、だがこの何でも大量に保管出来るマジックバッグを所持していればそれだけで周辺の領主から要らん警戒心を抱かれてしまう。『誰にも気付かれずに密輸で富を築いたり武器を持ち込んでいる』とかな。だから、コレはお前にやるよ。まだバーベキュー大会の時の食材も余っているしな、これさえ有れば魔界で迷子になっても暫くの間は飢え死にする心配は無いぞ」


サトウ自身の戦闘力の方が脅威に思われるのではないかとハジメは思ったが、それは敢えて言わなかった。こうしてサトウの持っていたマジックバッグはハジメの手に渡り活用される事となったのである。




少し早い昼食(焼き鳥)を食べ終えて小一時間ほど馬車を走らせていると、恐らくアーシュラ&カルーラ夫婦によって切り拓かれたであろう新しい道の正面から何やら黒い物体とそれを追い掛ける鳥の様な物が迫ってきた。


「おい、正面から何か来るぞ。アレが何か分かるか?ミリンダ」


ハジメが馬車の中に居るミリンダに声を掛けると、窓から顔を出して慌てて叫び出した。


「気を付けて下さい!あの先頭の黒いのはモスマン、猛毒の燐粉を撒き散らす恐るべきモンスターです。マリアさんやアグナードが吸ってしまうと危険なので窓を一旦閉めますね」


バタンッ あれ、馬車を操っている俺は無視ですか!?状態異常無効を持っているからってそれは無いだろうが!だがハジメ達は真っ先に守らなければならない存在の事を失念していた、そう馬車を曳く馬である。


ヒヒィン! 馬車を曳く馬が舞ってきた黒い燐粉を吸い込んだ瞬間に口から泡を吹き出すとやがて動かなくなった、馬の命を一瞬で奪う猛毒の燐粉を馬車の中に居るマリア達に吸わせる訳にはいかない。ハジメは1人で立ち向かおうとしたその時だった!


『おのれ、また我の食糧を毒で穢しおって!その罪万死に値する、己が死を以てその罪を償え』


モスマンを追ってきた鳥の様のものが声を発してきた、よく見るとそれは上半身が鷲で下半身が馬のヒッポグリフだった。


『喰らえ、鷲爪風刃!』


ヒッポグリフは風の刃を作り出すと目の前を飛んでいるモスマンの黒い翼を切り裂き地面に落とした、そして鋭い爪を持つ前足で捕まえるとその嘴でモスマンを啄ばみ始めた。必死に逃げようとするモスマンだがヒッポグリフの前から結局逃げる事は出来なかった。呆然と見ているハジメの前でモスマンを食べ終えたヒッポグリフが今度は死んでいるハジメの馬車の馬に興味を示した。


『多少、毒に冒されておるがまだ食えるかな?』


「あの~?」


『あやつの所為でここ数日何も食えなかったから、こいつで我慢するか』


「あの!ちょっと良いですか?」


『やかましい!我輩の食事の邪魔をするで・・・ない?』


ここでようやくヒッポグリフとハジメの目が合った。




『いや、それはスマンスマン。我が縄張りに住む家畜達をあのモスマンが毒で殺してしまう所為で我輩が食べる分が無くなってしまってな。空腹で気が立っていたので少し懲らしめてやった所だったのだ』


(懲らしめる所かアナタ喰ってましたよね?)


目の前でマジックバッグから出したゴブリンの肉を啄ばんでいるヒッポグリフを見ながらハジメは呆れていた。


「あの、宜しかったらこちらも如何ですか?」


セシリアがゴブリンの肉を美味しそうに食べているのを見て、昼食の残りの焼き鳥を差し出した。


『ほほ~コレはゴブリンとジャイアントマンティスの身を串焼きにしたものか。どれどれ?』


まず塩串を試食してみたヒッポグリフは口に入れた瞬間に目が光ると周囲に響き渡る大声で叫ぶ。


『美~味~い~ぞ~!!』


「やかましい、少しは静かに喰え!」


ハジメが思わずヒッポグリフの頭を叩くと、器用に前足で頭を押さえながら反省を口にする。


『あまりの美味さに思わず我を忘れてしまった、今度はそのタレの串とやらも食べても良いか?』


「ええ、まだまだたくさん有りますから遠慮しないで言ってくださいね♪」


ヒッポグリフにまで料理の腕を褒められたのでセシリアは上機嫌である、そしてタレ串を食べてやはり大声を出そうとしたが目の前で拳を握るハジメを見てヒッポグリフは何とか叫ぶのを我慢する。


『貴様は毎日あの奥方の作る食事を食べておるのか?』


「まだ式は挙げていないけど、まあそうなるな」


『こんな事を急に言うのはアレなんだが、我輩も連れて行ってもらえぬだろうか?』


「はいっ!?」


『無論、タダでとは言わぬ。先程モスマンが殺してしまった、馬の代わりに我輩がその馬車を曳こう。それでどうだ?』


どう考えてもヒッポグリフはセシリアの料理で餌付けされてしまったみたいだ、しかし今まで曳いていた馬が死んでしまった以上この提案を断るとルピナスまで歩く羽目になってしまう。


「その提案、お受けされたらどうですかハジメさん。ヒッポグリフでしたらグリフォンとは異なり王家の象徴とされませんが、それに次ぐだけの威厳を周囲に誇示する事が出来ます。魔界に行く際も下に見られずに済むでしょう」


『そうそう!我輩がこれから言おうとしていた事を先に言われてしまったな、どうだ素晴らしい提案だろう?』


サリーネの言葉に便乗するヒッポグリフ、そこからはグリフォンに次ぐ威厳など一切感じられない。


『目的地さえ教えてくれれば、我輩がそこまで曳いて行くので御者をする必要は無いぞ。あと夜中も見張りも兼ねるから馬車の中で休むが良かろう』


ふむ、そこまで考えるとヒッポグリフに曳いてもらうメリットの方が大きくなるな。


「よし、分かった!今後、俺の馬車を曳いてもらう事にするよ。ついでにオークとかを適当に捕まえてきてくれると食費も浮いて助かる」


『任せておけ、我輩が食べる分も自分で何とかする。これからあの奥方の作る料理を食べられると思うだけでヨダレが出そうだ』


話が決まったので再び出発しようとしたがヒッポグリフは中々前に進もうとしない。


「どうした?馬具が合わないのか?」


『そうではない、出来れば・・・我輩に名を与えてくれぬか?』


「名前?」


『そうだ、我輩が忠誠を誓う相手から名を授かる事でより一層の力を発揮する事が出来るのだ』


「仕方ないな、それじゃ何にしようかな?」


名前を考え始めたハジメの頭をヒッポグリフは前足で勢い良く叩いた、鈍器で殴られた様な痛みにハジメの目の前で星が飛んでいた。


「痛いな!主に向かってなんだその態度は!?」


『ふざけるな!我輩の主はそちらに居られる見目麗しいセシリア様に決まっておろうが!?』


「そうね、呼び易い様に【ヒッポちゃん】でも構わない?」


『【ヒッポちゃん】なんと素晴らしい名でしょう、これからはあなたの為に働かせて頂きますセシリア様!』


「こちらこそ宜しくね【ヒッポちゃん】」


感動のあまり涙まで流し始めるヒッポグリフを見るのにいい加減飽きてきたハジメは出発を急がせた。


「ほら【ヒッポちゃん】そろそろ出発だぞ」


ゲシッ! 今度は後ろ足でアゴにアッパーをしてきた。


『誰が【ヒッポちゃん】だ!貴様は我輩の事をヒッポグリフ様と呼べぃ!!』


(コイツ・・・・終いには喰ってやるぞ)


この日、ハジメ達一行の馬車を曳く馬の代わりにヒッポグリフの【ヒッポちゃん】が加わったのだった・・・。

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