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日常怪異禄 あなたの隣に怪異を  作者: ま〜ち


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5 母と女の子

 ねえ、あなた。あの子。今日、変なことを言うの。どんなことかって言うとね。


 小さな女の子がこの家にいるって言うの。


 それでね、その小さな子が言うんですって。


 「ここに決めた」って。


 え、どういう意味?って思ったんだけど。あなた、どんな意味だと思う?うん。やっぱりそうよね。本当分からないわよね。

 ところで、あなた、そんなこと幼稚園の時に聞いたことある?あの子から。…そう。やっぱり小学生になって、ここ最近よね。何かしら?よく小さいころは見えるっていうじゃない?やっぱり見えるのかしら?それともイマジナリーフレンドかしら?でも…あの子、一人で遊ぶことがあったけど、幼稚園の時は友達と一緒に遊んでもいたし。え?気にすることないって言ってもあなた。でも私、なんか気になるのよね。悪い予感というほどではないけども、なんか胸騒ぎがするっていうか。ね?なんか不安なの。どうしたら良いかしら。お祓いとか?それともこのまま普通にしていたら良いのかしら?どう思う?


 …うん。うん。このまま普通にしたらいつかは分からなくなるだろうしね。でも、お外では言わないように伝えておくだけでも…しといた方が良いかしら?そうね。そうよね。私から伝えておくわね。ありがとう、あなた。聞いてくれて。


 え?どんな子?あの子が言っていたのはね。えっと…なんかね、小さな女の子で緑色の着物を着ているらしいの。私、この時点でイマジナリーフレンドではないかもって思ったの。だって、本当に“見てきた”みたいに話すから。それでね、おかっぱ頭でテレビで見る、女の子みたいな感じらしいの。ほら、お義父さんとか時代劇のテレビをよく見るじゃない?この間、お盆の時に帰った時に一緒に観ていたらしいんだけど。そのテレビに出てくる女の子みたいだったって言うの。もしかして座敷童?って思ったんだけど。でもあれって、古い家にいるものって聞いたことあるの。うちってマンションだし、5年前に買ったばかりだから、それはないかなって思っているの。昔?えっとね、ここに住むときに私、不動産屋さんのあの担当さん、名前なんだったかしら。そうそう。遠藤さん。その遠藤さんに聞いたんだけど、昔ここは畑だったって。昔から家があるような土地ではなかったって言ってた気がするの。


 そういえば…ちょっと私ね。笑わないでね?頭おかしくなったわけでも、あの子が言ったからというわけでもないの。本当よ。話してて思い出したんだけどね。でも、どうしようかしら。私の気のせいって可能性もあるし、夢だったかもしれないし。本当に。本当よ?…これね、あの子が、その女の子を私に言う前の事なんだけど。


 私も、その女の子、見たわ。


 正確に言うと、見たというか…鏡越しでね。ほら、お化粧する鏡あるじゃない?ええ。あのうちの祖母の形見って言った三面鏡の。そうそう。私がよくお化粧しているところ。あなたは、私がお化粧している時、よく昭和時代を見ているみたいって言ったやつ。ふふん。よく覚えてるでしょ?忘れないから。


 それでその日は…なんだったかしら?多分、外に出る時でお化粧している時だったと思うの。なんで外出しようとしたのか覚えてないけど。でもどこかあなたと、あの子の3人でどこか出かける時だったと思う。それでね、16時ぐらいだったかしら。日が傾いて、もう夕方になりそうな感じだったのは覚えているの。ほら、あの三面鏡がある部屋って畳部屋じゃない?私、座椅子みたいなところで座っていつもお化粧しているでしょう?その日も、鏡見ながらお化粧していたらね。


 鏡越しに緑色の着物を着た女の子が私を見ていたの。


 少し遠いところから。…ええ。そうあの子が言っていた特徴だったわ。なんで、今まで思い出せなかったのかしら?…ま、いいわ。それでね。その子を鏡越しで見て、え?誰?って思うでしょ?だから、急いで振り返ったんだけど。


 そこには誰もいなかったの。


 気のせいだったかしら。でも、別に…何ていうのかしら。怖いっていう感じがしなかったのね。怖いというより何か、不思議な感じはしたけど。それで私がまた鏡を見るとね、その子がいたの。


 私のすぐ後ろに。


 でもね。ああ、思い出してきたわ。何ていうのか。笑っちゃうんだけど。目をまん丸にして私の手元と顔を交互に見てたの。こんなお化粧道具、初めて見たって言う感じで。私が幼いころ、お母さんのお化粧を見てたみたいに。この筆は何に使うんだろうとか。このお餅みたいなのは何に使うんだろうかっていう、感想を持ってそうな顔だったわ。本当に笑っちゃいそう。それがね、本当に可愛くて。うちに女の子がいたら、もし出来たら、こんな感じなのかなって。でもね、ああ、この子はこの世の子じゃないんだって分かったんだけど。でもね、可愛いし、無害そうな子だったから、私は気にせずにお化粧の続きをしたの。そしたらね。その子、より良く見ようと私の横に来たり、また後ろから私の顔を見たり、斜め下から見たり、そんなことをしていたのね。私は気づかないふりをしたわ。なんていうか、気づいたらその子がどこかに行ってしまう気がして。すごく楽しそうに、あまりにも興味深々に見ていたから。私ね、静かにお化粧をすることにしたの。少しいつもより遅めに作業して、より長く見れるように。だって、いつまでも見ていたい光景だったわ。私に…私たちに女の子がいたら。こんな風にしたいなって思いながらお化粧したの。


 そしたらあなたが、私の顔を見に来たのね。それにビックリしたのか。鏡越しだったけど、あなたの横を通り過ぎてどこかに行っちゃった。あー行っちゃったって。少し残念だったわ。それで確かあの後、うちの父が亡くなって、叔母が倒れて入院してっていう事が続いたからなのかな。このこと忘れていたのは。本当、あの時は大変だったわね。何とか叔母は回復したから良かったけど。でも父が亡くなったときは色々と協力してくれてありがとうね。


 え?今、その子?分からないわ。あ、でも、あの子が言うには一昨日だったかしら、なんか「もう少しで会えなくなるけど、1年ぐらいしたら会える」って言ってたらしいの。どういうことなのかなって思うんだけどね。ん?…そうね。悪いものでもないしね。なんか不安だったけど、大丈夫な気がしてきたわ。


 ところで、あの子はなんでうちに来たのかしらね?意味は、なんだったのかしら?本当に分からないけど。もしかしたら本当に座敷童だったのかなって今は思うの。幸運を私たちにもたらしてくれる。そう思った方が前向きにもなるし、良いと思うの。

 

 あ、ごめんなさい。急なんだけど、なんか酸っぱい物ある?食べたくなってきて。ちょっと買ってこようかしら。え?最近、味覚変わった?そうかしら?でも、急にそういう時ってない?私はあるわよ。だから今回もそうかなって思うんだけど。ちょっとーもう。妊娠?そんなことないわよーだって私たち、最後にしたのって…確か一昨日だったかしら?ほら、あの子がお義父さんの家に泊まった時。ええ。そうね。そんな早く、兆候でないって。もう、あなただって知っているでしょう?あの子が出来た時だって最初は気が付かなかったんだから。


 うん、うん。そう?じゃあ検査してみた方が良い?んー分かったわ。ちょっと妊娠検査キット薬局で買ってきて。いえ、やっぱり私も行くわ。ほら、いまあの子、寝てるし。一緒に行こう?ね?


 あーなんとなく分かった気がする。いや、でも私の思い過ごしかもしれないし、考えすぎかもしれない。こんなことが、ドラマみたいなことがあって良いのかしら。…ほら、あなた、あの子が言っていたじゃない?女の子が「この家に決めた」、「もう少しで会えなくなるけど、1年後ぐらいに会える」っていうのはそういうことなのかな?私たちの子として。来るっていう事なのかな。


 ねえ、あなた。私、それだったらとても嬉しい。


 だって、あんな可愛い子なんだもん。


 ほら、あなた早く準備して。行くわよ。私たちの娘がいるかどうか早く知りたいわ。すごく私、ドキドキしてきた。楽しみになってきたわ。


 …もし…もしね。私のここにあの子がいるのなら。


 精一杯、歓迎してあげたいの。


 「ようこそ、わが家へ」って。

4の次は生だろうって思って書きました。

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