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日常怪異禄 あなたの隣に怪異を  作者: ま〜ち


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22 老婆が語る人形の怪異

 人形が夜に動くの。西洋の人形。


 本当よ。ほら、誰も信じない。まったくもう。嫌になっちゃう。怪談しようって言ったのに。でも旅行で話すとしたら恋バナか、怪談よね。やっぱ。こんな60代になっても10代の頃と変わらないんだから。私もそうか。でも、皆も変わらないのね。

 え?話の続き?するの?…まあそんな大した話じゃないし怖くないかもしれないんだけど。それでもいい?…分かったわ。そしたら少しだけね。

 

 少しだけって言っても私が体験したことはこの一つだけなんだけど。


 その人形は私が小さいころに父親が、出張で帰ってきた時のお土産だったの。


 小さいころから大切にしていた人形で。私にとって初めての友達。ほら、前に話したことがあると思うんだけど、うちって共働きだったのね。それで父親がせめて人形でもってことで買ってくれたみたいで。よく、その人形でおままごとをしたわ。私が母親役で、人形は子供役。そんなこと、子供の時ってよくするじゃない? 


 それも私が少しずつ、大きくなるにつれて人形に触れることは少なくなってきたんだけど。でも私、その人形が好きでね。よく枕元とか机の上とかにおいてたりしていたの。…そうそう。あの人形。まーちゃんは私の家に遊びに来たことがあるから見たことあるわね。そう、あの人形。目が青くて白いフリフリのワンピースみたいなのを着ている人形。


 大学に入って、私が一人暮らしした時もあの子だけは持って行ったぐらい。その当時、付き合った彼氏はちょっと怖いみたいなことを言ってたこともあったけど。


 え?いつから?そうね…あれは、うちの子たちが成人して、学校卒業して独り立ちしたあとだったかしら。結婚してからその人形は段ボールにいれていたんだけど、掃除をしていたら出てきてね。あーそうそう。年末の大掃除の時だったかしら。その時だわ。思い出してきた。それで、あら懐かしいって思うじゃない?それで少し埃をはたいたり拭いたりして、綺麗にしてから居間にあったピアノの上に置いておくことにしたの。


 うちの孫たちは、女の子だから可愛いって言ってたけど、下の男の子は興味がないみたいだったわ。それで少し触らせたり、おままごとみたいなことをさせたりしてるんだけど……つい私が小さいころを思い出してしまったの。ああ、上の女の子は今6歳になったのね、この間。もう大きいわよ。抱っこも出来ないぐらい。そうねー子供の成長って早いわよね。それで自分の年が取るのが早くなっていくのが嫌になっちゃう。


 まあそれで。うちの孫が遊んだりしていたんだけど、何日か経った後だったかしら。


 ちょっと汚れちゃったから、拭こうとした時だった。なんかこう…視線を感じたのね。何か見られているって言うのを漠然と感じたんだけど最初はどこから見られているのか分からなかったの。


 それが、その人形を掃除するたびに、それを感じるようになった。


 どこからだろう?なんか気味が悪いなーって思っていたんだけど…ある日、その人形を清掃し終えて目線を合わせたら。


 目が合ったの。


 …その人形と。


 あれ?なんかこんな風に目が合うような子だったけ?って最初はそう思ったの。でもじっとその子から見られているような。そんな気がしたわ。気のせいだと思って、その日は思ったんだけど。次の時も、そのまた次の時も。その子を清掃した時に、目が合うような感じがするようになったの。

 

 最初は気味が悪かったけど、人間ってなれるものね。小さいころからの人形だったというのもあったけど、そんな怖がることないなって思ってね。あと、その子から嫌な雰囲気っていうの?そんな感じも一切しなかったから。もう、なんとも思わなくなったの。


 それで、1ヵ月後ぐらいだったかしら。ある日、何か物音がして目が覚めたの。なんだろう?って思って目を開けて布団の横を見てみたら。

 

 その人形が立っていたの。


 じっと私を見るように。


 もう驚いちゃって。私。声を上げて良いのか分からないし、どうしたら良いのか分からなかった。私、急いで電気をつけて人形がいたところを見たの。そしたらね。


 もう人形はどこにもいなかった。


 寝ぼけていたのか、それとも夢を見ていたのか。そう思って私、寝なおしたのね。目をつむりながらもし、本当に私のところに人形が来ているのならその理由とか色々と妄想してみたの。寂しかったのか、それともまた昔みたいに遊んでもらいたいのか。とかね。何だったんだろうって思いながら寝たわ。でもね。その日だけじゃなかったの。


 翌日も、そのまた翌日も人形は私が寝ている時に来たの。


 なんで分かったかと言うとね。いつも少し物音がするの。何ていったら良いのかしら…こう、少し誰かが歩いてくる音?というか動いている音というか。ごめんなさい。うまく言えなくて。その音がして、横を見ると人形がいる。電気をつけると人形はいなくなる。それを3回、4回ぐらい繰り返したかしら。


 それで、私、電気をつけないようにしたの。怖い感じがしないって言ったと思うんだけど、それもあってね。あと慣れてきたっていうのもあるかしら。え?肝が据わっている?そんなことないわよ。それを言ったらここにいる、あなた達だって私よりも肝が据わっているわよ。


 それでね。暗闇の中、私見てみたの。


 布団の上で顔を横にしてその人形とにらめっこ。

 寝たままね。


 じっと見たのね。そして気が付いたんだけど、人形の青い目がとてもやさしい感じなような気がするの。私の事を見守ってる、どんな時もそばにいますって言っているような気がしたの。この感覚があっているかどうかは分からないけど。それでそのまま見つめ待ったまま寝落ち。翌日の朝に、目が覚めた時には、やっぱりその人形はどこにもいなかった。


 それで今に至るって訳。どうだったかしら?怖かった?…えー私が怖い?なんでよ?うん。えーその人形に対しての接し方が?そうかしら。でもほら誰でも愛着を持つものってあるじゃない?それがたまたま私はその人形だった。そんな感じ。


 旦那?あー旦那とは別の部屋で寝ているしね。そのことを言ったことはないわ。私だけの秘密。孫にも言ってない。でも、うちの旦那はそういうの信じるような人じゃないしね。まあ、以前、なんか森の中で変なのに出会ったとか聞いたことがあるけど。ただ、それだけ。


 皆にはそういった物が動くとか、視線を感じるってことある?今更聞くけど。ええ。そうなのね。やっぱり、こういった経験した人っていないわよね。そう考えると私って結構、珍しいのかな。え?天然記念物?ちょっとやめてよ。もう。おかしい。


 ところで、ふと思ったんだけど、私が家にいない時ってあの人形はどうしているんだろう?もしかして探し回ってたりして。代わりに旦那のところに行っているかも。分からないけどね。


 え?なんか音がした?どこから?……荷物の方?何か大きな動物が動いたような音だった?えーネズミとかだったら嫌なんだけど。ねえ、一緒に見に行きましょ?お願い。良いでしょ。


 あら。バック開いているわね。なんでかしら。空けた覚えがないんだけど。ああ、私の荷物。何か中に。

 

 あのね。落ち着いて聞いてほしいの。嘘もついてないし、私の勘違いでもない。これだけは信じてほしい。

 旅行先に人形何て持っていくつもりはなかった。出る時に床の間にあることも確認しているの。


 ……私のバックに、あの人形がいるんだけど。

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