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日常怪異禄 あなたの隣に怪異を  作者: ま〜ち


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21 島男が体験した怪異

 ちょっと、ごめんな。兄さん。急に話しかけて。…なあ、あの広瀬のばあさんと話していたみたいだったが…なんか言われたのか?いやあの人、この島だとちょっと名の知れた人でな。災害、事故、まあ色々と言い当てたことがあったんだ。それで…この飛行機の事とか何か言っていたか?…そうか。特になかったか。そうか。良かった。


 改めて聞いても良いか?どんなことを話してたんだ?良かったら教えてくれ。…おう、そんなことを聞いていたのか。それ、聞いてどうするんだ?


 そうなのか。大したもんだな。その土地の風俗、とか伝承を集めるの大変じゃないか?いろんなところ行ったりするだろう。


 …楽しい、ときたか。まるで耳袋みたいだな。


 あ、俺?俺は…そんなの伝承とかしらないが…不思議な話?怪異?そんなのでも良いのか。そうだな…ちょっとあると言ったらあるが。


 まあ、心霊現象みたいなのにはあったな。一度だけ。


 え?それが良い?…そ、そうか。まあ、良いが。飛行機が着陸するまでになるが…それで良いなら。


 あんた…生首を見たことあるか?


 ま、普通はないよな。


 え、どこで?…そうだな。あれは冬が終わって春になったころだった。


 よくうちらってバーベキューをしたりするんだわ。バーベキューと言っても、川とかでやるわけじゃなくてな。じゃあ、海でやるのかって言ったら違う。家の庭でやるんだわ。外国みたいだって?そうだな。そうかもしれない。まあ南の島だからってことで。それで、その日も、皆で肉焼いたりして食べて飲んでたんだわ。それで、一緒に飲んでいた近所の奴が、もう一人呼んでいいか?って聞いてきてな。


 俺は、おお、良いぞ。誰だ呼ぶんだ?って聞いたら、島に転勤してきたばかりの奴だって言うんだ。おう、呼べと周りも俺も言ってな。それでそいつを呼ぶことにしたんだ。思い出しても穏やかな風が吹いて心地いい夕方だった。最高の気分だった。仲の良い友達と家族と一緒に飲んで食べて話すのがとても楽しかった。つい俺もその時、酒が進んでいてな。いつもならほろ酔いで終わるところが結構、酔ってしまってな。地面が回ってたな。トイレに行くのもやっとだった。


 それで、呼んだやつは20分後に来るってなって。どんな奴が来るんだろう?楽しみだなって思っていたんだ。それであれは…もう暗くなってたから夜7じぐらいだったとは思うんだ。春だけど、風が吹くと肌寒くてな。一枚、上着を着ようと思って椅子に掛けていた上着を取った時だった。俺の後ろは小さな小道が通っていたんだがな。その暗い道を。


 誰かが歩いてくる音がしたんだ。


 最初は、お、呼んだ人がきたのかなって思ったんだ。時計を見たら、呼んで10分ぐらいしかたってなかった。結構、来るの早かったなーって思ってたんだけどさ。スリッパをはいているみたいでな。そのスリッパの足音は少しずつ俺の後ろに近づいていって。


 そのまま、その小道の先まであるいて行ってしまったんだ。


 おかしいんだよ。…ああ。すまん。なんで俺が、おかしいって言ったかというとな。


 その小道の先はもう、廃屋しかないんだ。


 誰も住んでない。何十年も。


 最初はあれ?おかしいな?もしかして観光客とかが間違って行ってしまったのかな?と思って友人に誰かがこの先に行ってしまったから見に行ってくれって頼んだんだ。俺はもう千鳥足だし、追いつけなさそうだからさ。その友人が少し足早に、小道の先に行って少し経ったら戻ってきたんだ。


 「誰もいなかったぞ」っていうんだ。


 でも、その足音を聞いたの、俺だけじゃないんだ。他の奴らも聞いててな。俺と似たようなことを考えていたらしい。でも灯りはテーブルとバーベキュー台のところだけだったから、姿を見れたやつは誰もいなかった。


 ただ、足音だけが皆、聞こえていたんだ。


 きっと、気のせいだったんだって無理やりしてさ。いつも通りの話に戻そうと思ったんだ。


 少し経った頃かな。ちょっと落ち着くときってあるだろ?そんな時だった。


 目の前のテーブルの上に大きな音を立てて何かが落ちてきたんだ。

 そう、考えている通りなんだけど。


 テーブルの上に生首が落ちてきたんだ。


 時が止まったような気がした。あんな感じ、初めてだった。今まで感じていた少し肌寒い風も、皆の声も、何も聞こえなくなってな。その首は横向きに落ちてきたっぽくて。落ちた反動で、テーブルの上を1回転、2回転とテーブルの上を横に転がっていた。男性?ああ、多分男性だったとは思う。その生首…強烈過ぎてどんな顔をしていたのかもう覚えていない。だけど…口だけは覚えているんだ。


 ニヤって笑ったんだ。


 俺に向かって。


 俺は椅子から転がると同時に一気に酔いがさめてな。転げ落ちると同時に、また時が元に戻った感じだった。慌ててもう一度テーブルの上を見たらそこにはもう。


 何もなかった。


 そう。最初から、生首何て落ちてきてないような感じ。周りのやつらは、どうした?飲みすぎたか?って近寄ってきてな。今、そこに生首が落ちてきたんだって言うと、お前飲みすぎたんだよー新しい人来たら挨拶して、寝た方が良いって言われてな。俺も、皆が言うから飲みすぎだったのかなって思ったんだ。確かにそうかもなってことで、新しい人が来るのをまったんだ。


 あれ程、時が長く感じたことはなかった。早く来てくれって思いながらお酒飲んだんだけど。味も分からない、もう酔えなかった。心臓が汗かいた後みたいに冷えてて。もう何を話していたのかも覚えていないんだ。


 「あのーこんばんは」って言う声が後ろからしたと思ったら、そこには新しい人が来たみたいでな。やっときた。って思って振り返ったんだ。


 あの生首の口に似ている男がいた。

 …笑ってはいなかった。ただ、形が似ていた。


 一瞬、声を上げそうになった。でも何とか堪えて、こんばんはって返したんだけどな。俺はそそくさと離席することを新しい人と、周りの奴らに言って、自分の部屋に戻った。


 自分の部屋に戻ってからも、何かあの新しい人…Uさんとしようか。Uさんとあの生首は関係しているのか?それとも気のせいか?とか色々と考えてしまってな。ベットの上で何だったんだろうってちょっと冷静になって考えてみたんだ。でも何も思い当たることがなくてな。ベットの上で腕組みしながら悩んでいたら、うちの妻が水を持って来たんだ。妻が「どうしたの?」って聞いてきてな。さっき見たこと、考えたことを言ったんだ。最初は酔いすぎよって言われるかなって思ってたんだけど俺が真剣に話していることが分かったのか、妻も真剣に聞いてくれてな。一通り話し終えると妻が言うんだ。


 「広瀬のばあさんのところに明日、行ってみよう」って。


 ちょうど休みだったし、不安だったこともあって、二つ返事で返した。

 それで広瀬のばあさんに話を聞いてもらおうと、家についてあいさつした瞬間に言われたよ。


 「あんたの後ろに……生首が浮いとるよ」って。


 ああ、やっぱりあれは酔ってたせいじゃなかったんだ。そう思った。

 

 話を聞くと、たまたま、あんたの後ろを通りかかったから憑いた。それで少しこの生首は悪意がある。だから祓わないといけないって言われてな。そう言われた瞬間、なんでか急に家に帰りたくなってな。俺の意思とは別に、いえ、良いです。帰ります。って言ってた。うちの妻がビックリしたような顔しててな。なんでだろうと思っていたんだけど。その言葉を無視して、広瀬のばあさんはお祓いをやり始めたんだ。そしたら俺の意思とは別に急に体が動いてな。立って帰ろうとするんだ。その時、なんで立ったのか分からない。自分の体が自分じゃないような感じだった。


 うちの妻がしがみついて押さえてくれなかったら、そのまま帰っていただろうな。


 それでお祓いをしてもらったら。急に色々と気持ちが軽くなってな。


 広瀬のばあさんにお礼を言って車で帰っていたら、急に妻が驚いた顔をしたことが気になったんだ。それでなんでお前、あの時、驚いたんだ?って聞いてみたんだ。そしたら。


 「だって、あの時、あなたの声じゃなかったから」


 そう言うんだ。


 今?今はもう、何ともない。うちの妻も子供も元気にしている。今日、飛行機に乗ったのは上の子が本州の大学に行ってて、それに会いに行くんだけどな。うちの妻はもう先に行っている。俺は仕事があったから後追い。


 でも…いまでも飲み会をしていると偶に思い出すんだ。


 あのニヤって笑った口を。


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