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日常怪異禄 あなたの隣に怪異を  作者: ま〜ち


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1 給湯室で話す女性社員の怪異について

 ねえ聞いて。今川さん。この間さ、飲み会があったでしょ。そうそう。あの先週の飲み会。加藤さんが、凄く酔っちゃった日の。お店を出た時に、二次会に行かずに私、帰ったでしょ?その帰りに、変なおじさんに声をかけられたの。その、おじさんに言われたことが、今日になって意味が分かったんだけどさ。あ、待って、ポットお水いれたばっかりだからまだ湧いてないよ。


 それでね、「おねえさん。ちょっといい?」って感じで、声をかけられてさ。ナンパかな?って最初は思って、無視して歩いていたの。こんな時間に声をかけるなんて、下心丸見えじゃない。夜21時ぐらいだったし、もう明らかって感じ。それでさ、振り切ろうとして私、早く歩いていったのね。そう、あの繁華街をさ。人が沢山いる中でも、ついてくるの。そのおじさん。結構、長く声かけられてさ。私、少し怖くなってさ。だって、無視したらすぐに諦めるじゃん。ナンパだったら。おじさんの声を冷静になって聞いてみたの。顔は向けずにさ。よくよく聞いたらさ、何か必死なの。お願いだから話を少しだけ聞いてほしいって感じで。懇願に近かった気がする。え、懇願っていう言葉よく知っているねって?うるさいなー私だってそれぐらい分かるよ。


 それでさ、最初は怖かったんだけど、どうしたんだろうって思って。ナンパじゃなかったかもって思ってね。だって年齢的に差があるし、声かけるなら私と同じ20代ぐらいの男の子だし。今川さんも、そうでしょ?…今川さん、モテるからなー世代が広いね。あ、ちょっと小突かないでよーもう。


 えっと……なんだっけ?あ、そうそう。それで私さ、改めて、そのおじさんを見てみたのね。やっぱり、どこにでもいるようなおじさんだった。休日とか子供連れて、どこか遊びに行ってそうな優しそうな感じ。顔?顔は……イケメンというよりも、若かったころは、可愛い系だったんだろうなっていう感じ?分かる?そうそう!あのアイドルみたいな感じ。そんな人が、私を引き留めようと何か必死なの。なんだろうと思って立ち止まって、話を聞くことにしたのね。何ですか?あなた?知り合いですか?って少し怒ったような感じで、言ったんだけどさ。立ち止まってくれたことに何か安心したような、やっと聞いてくれる、みたいなそんな雰囲気でさ。私が少し怒ったような声を出してもビビらずに、少し汗ばんだ顔で言うの。



 「この道を来週通ったらあなた、死にますよ」


 

 何、言ってんだこいつって感じじゃない?急に何?は?って感じ。改めて、そのおじさんの顔を見たの。目が合った瞬間なんだけど、すごく真剣。だけど、その目は私を見ているんじゃなくて、何か違うものを見ているような気がしたの。すっごく、不思議な感覚なんだけどね。何ていったら良いのかな…私を見ているんだけど、私を見ていない、そんな感じ。そんな目をされて言われたことが、私が死ぬっていうこと。え、どういうこと?って思うじゃん。急にそんなこと言われて、はいそうですかってなるわけないじゃない。でも、不思議と嘘だと、言えるような感じじゃあなかった。私、おじさんの顔を見ながら呆然としちゃって、何も言えずにいると続けておじさんが言うの。



 「あ、あとあなた…憑いてますよ。結構、異性から恨まれています?もしくは同性からも…あるかもしれませんね」



 そんなことを言ってきた。異性から恨まれているって…確かに、前のカレを振ったけどさ。それは、お互い納得しての事だったし。それで「気を付けてください」って言って去っていったのね。何だったんだろう、あの人って感じじゃない?急に声をかけてきて、すぐにいなくなったしさ。せいぜい15分とか20分ぐらいでの出来事。いや、もうちょっと短いかも。

 今川さん、どう思う?……うん、うん。そうだよねー最初、新手の詐欺とか、なんか犯罪に巻き込まれるのかって思うよね。私もその日、家に帰ってさ、スマホ見ながら考えてた。変な人に絡まれた。もしくは酔っ払いに絡まれた。そう思うようにしようって、考えていたの。


 …それでさ、今日のニュース見た?

 

 ほら、昨日の夜にあった通り魔事件。あったでしょ?そうそう。3、4人ケガして大騒ぎになったやつ。営業の人が話していたのを聞いたんだけどね。事件があった場所ってさ。


 あの夜、おじさんに声をかけられた所なんだよね。


 それで私、気になっちゃって。営業の後藤さん…ほら、あの眼鏡をかけた若い人。そう。あの人に、ちょっと聞いてみたの。後藤さんが言うにはさ、飲み会で使用したお店の繁華街で起きたんだって。なんで、後藤さんが知っているかっていうとね。営業の帰りに通ったら、警察車両が沢山いて何かな?って思ったんだって。そしたら、その事件だったらしいの。テレビでは被害者が3人?4人?だったかな。正確な人数は覚えてないんだけど。それで、加害者は現行犯逮捕されたっていう事しか知らなかったんだけど。その後藤さん、なんかその事件に興味持ったらしくて…繁華街にある、お店の人とかに事件当日の事、聞いてみたんだって。ヤバくない?普通、そんなことしないよね。刑事かよお前って思った。同時にさすが営業だなって、思ったけど。後藤さんが聞いたお店の人の話だと、当日の夜に奇声が聞こえたんだって。お店の人が何だろう?って思ってお店から顔を出したら、刃物を持った男の人が繁華街の真ん中で奇声を発しながら、腕を振り回していたらしいのね。


 それを遠回りに見ている人が多かったし、そのお店の人も警察に連絡したらしいのね。おかしい人がいるって。それで、警察に電話し終えた後にお店の人が繁華街の方を見たらさ、急に走り出していろんな人を切りつけたんだって。ヤバいって思ったらしくてさ、お店の人。周囲にいる人を呼びこんで、すぐにお店の扉を施錠したんだって。中にいたお客さんにも事情を説明して、外に出ないようにしたみたい。お店の人も凄いよね。


 そんな事件があったんだけどさ…私、その繁華街の道、毎日通る道なんだよね。

 

 事件があった日、昨日なんだけどさ、仕事終わって会社から出た時なんだけど。急に、おじさんに言われた言葉が気になったのね。あんな言葉、きっと妄言だし、そんなことないって頭の中では分かってはいるんだけど。……でもなんか気になってさ。無視できなかった。その時だけは。「この道を通ったら死にますよ」っていう言葉が頭から離れなかったのね。エコーが、かかったようにずっとその言葉が響いているの。だから、別に信じたわけではなかったんだけど…でもその日はいつもその繁華街の道じゃない、別の道で帰ったの。


 結果的に、あのおじさんに救われたって感じなんだよね。声かけられた時は、その人が不審者っぽく見えたけど。でもね、今思ったんだけど…なんで私だけ、声をかけてくれたのかなって思うの。だって現に、けがした人がいるわけじゃない?その人達にも声かけたのかな?……あーそうかもね。


 もしかしたら、私だけが死ぬ事件だったから…なのかもね。


 今川さん、天才じゃん。探偵みたい。凄い。あーそっかー。余計に、あの人にお礼言いたいところだね。つまりは命の恩人なんだよねー声かけてくれた時、嫌な対応しちゃったから、それも悪かったなーって思うんだけどさ。え、しょうがない?まあ、そうだよね。


 …ん?あと一つ?あー憑いているってやつ?それは、どうしようか。本当に。私、どうしたら良いのか分からないんだよね。昨日の事件の事もあってさ、信頼度がぐっと、上がったよね。そのおじさんの言葉にさ。


 そういえばさ、最近っていうかさ…2ヵ月前からよく部屋の電気が点いたり消えたりするんだよね。

 

 ほら、私たちって経理じゃない?飲み会の前までは凄く忙しくて、家に帰るのが遅かったじゃない。私、電球が切れかかっているものだとばかり思ってて…電球、私、替えたんだよね。

 

 それでも…電気が点滅するの。


 え、本当怖いんだけど。どうしよう。私、どうしたら良いんだろう。お祓い?お祓いだよね?こういうのって。今川さん、何か知らない?そういったこと、出来る人とかできる場所って。……うん、うん。そうだよね。知らないよね。ちょっと調べてくる。


 …あ、あのさ、良かったらなんだけどさ。


 一緒に行かない?お祓い。

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