番外編1:これがフラグ回収
ちょっとした番外編。本編は完結済みですけど、番外編をいくつか投稿予定。
波の音ってなんか知らんけど落ち着く。
だから前世の頃から海は結構好きだ。海水浴は体がベタつくけど楽しいし、のんびり波の音聴いてるのも好き。
というわけで、今世初の海である。
新婚旅行だって言って結構あちこち行ったけど、そういや海は行ってねえなってことで来た。
なにより、またタコ食べたい。この世界の人間はタコ食べないみたいだから、いくや食べても文句言われないのはいいよね。
もちろん限度があるから乱獲はしないけど。
ちなみにタコ以外にも、ホタテらしき二枚貝とかサザエっぽい巻貝も獲ってもらった。
これをアングレカム印のバーベキューセットで焼いていく。
醤油バターは最高だよね。
『我な、やっぱりその生き物食うのまだちょっと怖いんじゃけど』
「特大たこ焼き普通に食べてたじゃんかよ」
『いやだって、あれ生地のおかげでタコと別物だって認識しちゃってな』
「あれでいけたんなら生でもいけるいける。ほい、一思いにガブっと」
で、貝たちを焼いている横でタコを捌き、脚丸々一本にレモン絞って塩振りかけたやつをアングレカムに差し出したんだけど、じっとりと私が手にするタコを睨むだけで食べようとしない。
昨日食べたたこ焼きは全然問題無く食べてたのに。やっぱり生地が無いと嫌なのか。
……まあ本気で嫌なら仕方ない。この美味しさを共有できないのは残念だけど、無理強いするのはよくないもんね。
じゃあたこ焼き作ろうかと、改めて提案しようとした時海からざばーん! と音を立てながら、半透明の角みたいな物が飛び出してきた。
結構遠いのにそれでも衝撃で海水がこっちに思いっきり飛んできたけど、それはアングレカムが魔法で弾いてくれる。
『ほほぉ、クッリオーネか。結構大きいな』
「へぇ、あれクッリオーネって言う……クリオネ!?」
まさかの名前に思わず半透明の角みたいな物を二度見する。
すると、どんどん海面から半透明の巨大な物体が出てきてしまいには宙に浮いた。
その姿はどう見ても前世水族館で見たことのあるクリオネそのもの。
ただ大きさがあまりにも違いすぎる。隣にいる彼よりは小さいが、それでも六階建てのマンションくらいの大きさはあるんじゃなかろうか。
「前世とスケール違い過ぎでは……?」
『お、リグレーの世界にもクッリオーネはいたのか?』
「手のひらに乗っちゃうくらいに小さいサイズがね! 間違ってもあんな巨大生物じゃないからね!!」
タコとか貝とかは前世で見慣れたサイズより大きいけど、それでもめちゃくちゃ巨大というわけじゃないのに、どうしてクリオネあんな馬鹿でかいの!?
というか、未だ宙に浮いているクリオネを眺めているアングレカムはのんびりし過ぎでは?
クリオネって確か肉食でしょ。しかも頭くわっと開いてガブリといくタイプの。
小さい頃にそのシーン見たことあるけど、結構衝撃的だった。
可愛い見た目して食い方がえげつないんや……。
『まああれは肉食だが、我がいるから襲っては来ぬよ。それに元々大人しい気質だからな。空腹時以外は人が近くに寄っても問題無い』
「そ、そうなの?」
『そうじゃよー。だからそうビビらんでも大丈夫……』
アングレカムが言い終わる前に、クリオネが頭をパカーンと開くとそこから触手が伸びて、海面をジャンプしていた魚たちを見事に捕まえて食べていた。
触手って、一本一本別々に動かせられるんだね。しかも私の目じゃ追えないくらいに動きが速い。気がついた時には、触手の先に魚が捕われている。
……なんか、前世のクリオネよりも食事シーンがホラーなんだが。
『ま、まあ、食事する時の姿はだいぶアレだが大丈夫じゃよ。襲っては来ぬからな。ほんと食事時はアレじゃけど、リグレーを食いには来ぬから。来ても我が追い払うからな』
ひしっと逞しい足にしがみ付いた私を見ながら、アングレカムが宥めるようにそう言った。
それでも食事シーンがあまりにも衝撃的過ぎて、巨大クリオネが海中へと沈んでいくのを見届けるまでは、アングレカムの足にしがみ付いたままだった。
あの巨大クリオネは食事するために海面に出てきたかんな……。
クリオネが無事に去った後は、美味しい海の幸を存分に味わった。
今度海に来る時は、あの巨大クリオネに遭遇してしまわないことを祈ろう。
かなり珍しい魔物らしいから、これから遭遇することは無いと思うけど、一応ね。
しかしそんな祈りも虚しく、何故か海に行って食事をしようとする度に巨大クリオネが現れては、あの食事シーンを見せられる羽目になったのだった。
なるほどこれがフラグ回収。やめてください。
そうして何度も遭遇しているうちに、ノリでタコあげてみたらなんか餌付けに成功してしまったのだった。
クリオネもタコは好きなんだなぁ。




