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その世界は残酷なれど、旅人は旅をする……  作者: がお!


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111/117

#111 傭兵団との山中の戦い 6

少し分かり難くなりましたが、前半がプラエダ視点で、

後半がリア視点へと戻ります。

 思考が纏まらず、途切れそうになる意識を無理に繋ぎとめる。

 騒がしいはずの音が一切聞こえてこない。

 目の奥に熱した鉄棒を押し込まれたかのように熱く痛み、視界が暗転する。

 見つめている先が地面と知り、倒れまいと手で支えていた。

 空気を貪り喰う。

 俺は……切り札である魔眼を使った。あの女はどうなった。

 明滅する視界を持ち上げ周囲を見渡すも、所々燃え上がり周囲を赤く照らし出している。

 女の姿を探すが見える範囲にはいない。

 発火の魔眼。最大の切り札であり使用時には体力を消費し過ぎる為、乱用は出来ないが必殺の威力を誇る力。

 視力は弱く両眼で見れば世界がぶれて見えてしまう上、赤い目は目立つ。其の為眼帯で隠し目立たないようにしているが、隻眼では距離感を掴むのが難しい。

 対象を一気に燃焼さ燃やすと言うより、爆発を起こすと言った方が良いだろう。

 爆発する分周囲への影響は大きいが、しかし表面しか影響を及ぼさない。しかしその衝撃は人体に甚大な損傷を与える。

 火が飛散する為山の中でおいそれと使えるような力では無い。扱いが難しい上、使いどころも考えねばならない。

 あいつの言う通り受け入れはしたが、片目を失わなければ、欠点しかない力なんぞ願い下げだった。だが、今は思いのほか役に立ってくれた。

 あの女を此処で殺せたのであれば、其れだけで手に入れた甲斐があったと言うもの。

 火の灯りで明るく照らされたが、影は際立ってしまい暗掛かりは深さを増してしまった。

 其れでも周囲に目を向けるが、女の姿は見当たらない。同じくフギオの姿も無い。

 フギオと共に川へと落ちたか。

 時間間隔も曖昧だが、息が整うぐらいの時間は経った。ぼやけていた視界が鮮明さを取り戻してゆく。魔眼となった眼に触れるも、どうやらまだ無事の様だ。

 足にはまだ力が入らない為、立ち上がる事は出来ないが、這いつくばっていても事態は悪くなるだけだろう。

 剣を地に突き立て動かぬ足へ動けと叱責するも不快音が耳朶を打ち、動きを止めてしまった。

 何処だと探すも、眼の前に揺れる影が現れる。

 しっかりとした足取り、しかし何処か軽くもある足音に男ではないと分かる。

 目を向けなくとも分かるが、それでも信じられぬと目を向けてしまう。

 魔眼の力は確実に焼いたであろうと証拠に、上半身の服は焼けて所々肌が露出している。決して無事ではないと確信させるほどに右上半身の服は焼失していた。

 だと言うのに周囲の火に照らされてもなお白い肌と分かる腕を晒す姿は正に。

「バケモノ……」

 其の言葉は意識しての事では無かった。ただ無意識に呟いていた。

 其処に端然と佇む姿は決して触れ得ぬモノ。この戦いは初めから傭兵団の、俺の負けが決定されていた戦いだったと思い知らされるには十分だった。

 今はまだ生かされているのは、バケモノの気まぐれに過ぎないと。

 此れから先の事を悟るも、直ぐに考える事を放棄してしまった。ただ恐怖から逃れるためかどうかは後から考えても答えは出なかった。

 確実なのはこいつが俺の死神である事だけ。

 だからかこいつの言葉が理解出来なかった。

「私の、負け、ですね……」

 先ほどまであった殺気も無く、表情も穏やかに負けを宣言した。

「ま、負けだと……巫山戯るな。お前は、お前は何なのだ! アレを喰らって無事だぁ! 巫山戯ろ、信じられるか! 俺たちは初めから負けるのが決まっていたと言うのか!」

 土を握りしめ、剣を杖に立ち上がる。体の疲れなど頭の中から抜け落ち、怒気を膨らませる。

 冷静で居ようとする事止め、激情のまま吠えた。

 再度魔眼を使うべく、眼を意識する。痛みはこれ以上使えば壊れると訴えかけるがどうでも良い。

「まさか魔眼を持っていたとは思いもしませんでした。魔眼は通常、両目に発現します。片目しか発現していないのは誰かに貰いましたか。今の時代魔眼を他人に与える事が出来るなど技術的に無理だと思っていたのですが……誰に貰ったか気になりますね」

「お前こそ一体何者だ」

「貴方が言った通りバケモノですよ。人の世に交わろうとする、ね」

 まるで世間話するかのように、いや実際世間話程度なのだろう。だが世間話程度で潰され、その程度で勝敗を決めるなど理解できない、したくもない。

ましてや次の言葉は許せるものでは無かった。

「逃げるならば今のうちです。私は追いかける様な事はしませんので」


 冷静さを失っていても尚、其の言葉は誘いと気付くも、激情は真意へ遠ざけた。

「此の半端な状況で逃げろと。其れが出来ると思うのか……思っているのなら、お前が死ね」

 憤怒も限界を超えればまた冷静さを取り戻すのか、頭に上った血が一気に落ちたような気がした。

 だからか後ろから近づく足音に気付くことが出来た。

 一瞬部下が来たのかと思ったが、ならば気配を殺すようなことをして近づく事は無い。最早敵しか考えられないと。ありったけの力を込めた魔眼の力でさえ殺せなかったバケモノに、先程より力が籠らない魔眼が通用するとは思えなく。だけどバケモノの仲間はただの人間、この程度の力でも十分に殺傷能力はある。

 嗤った。バケモノを見て嗤ってから、後ろから来たバケモノの仲間へと力を使うべく振り向いた。

 けど其処に居たのはバケモノの仲間では無く……俺だった。

 醜く嘲け嗤いながら右眼だけは赤く爛々と輝き、獲物が怯え恐怖する様を楽しんでいる俺が佇んでいる。

 俺が、俺を殺しに来た。赫眼には怯えが見て取れるが、口元は歪みながらも口角が上がっている。

 自分自身に怯え恐怖しながらも、その姿を楽しんでいる自分がいる?

 何だ其れは? 頭が混乱しつつも、あぁ駄目だと。俺は魔眼を俺に使おうとしていると理解した。

「や、やめ……」

 一瞬上げてしまった命乞い。俺は遅いと言わんばかりに力を解き放つ。

 左目に熱が奔った。確かに熱だ。元より視力は悪く、霞掛かった視界がより暗くなっただけ。

 力を使い、ついに潰れゴミとなっただけ。

 そう思ったのは衝撃が走り抜けるまで。

 頭が揺れる。横っ面を殴られたかのように、意識が途切れそうになる。

 正面の俺は右目を燃やしながら……消えて行った。

 代わりに出てきたのは、暗闇でも分かる、深い黒曜のような瞳を持つガキ。

 知っている。バケモノの仲間。そっくりな見た目を持つ片割れ。

 来たのがバケモノの仲間であれば、俺たちは負けたのかと思いつつも、俺の意識は闇へと落ちた。


「大丈夫です。まだ生きていますよ。此れで約束は果たせそうですね」

 フォスレスさんが倒れた頭目の元へと近づき、生死を確認した結果だった。

 すごく危ない倒れ方をしたので死んでしまったのかと心配したけれど、左目が焼けて無くなってはいるが死んではいないとの事だった。

 此れで約束が守れると思うと少し安心したけれど、まだ生きていることにも不安はあった。

 山の中で爆発が起きてお姉ちゃんとネムロスさんの三人で急ぎ向かった。ネムロスさんの足を庇いながらだったから少しゆっくりではあったけれど、フォスレスさんを見つける事は出来た。

 魔眼封じの布は外している。どうやら無理がたたった様で、布越しでは見えづらくなっていた。だから外したのだけれど、見つけるぐらいには問題は無かった。

 辿り着いたときには右上半身の服が焼けて右腕を晒しているフォスレスさんと、剣を杖にして立っている頭目が向かい合っていた。

 何が在ったのかは分からないけれど、余程激しい戦いが在ったのだろうと思わせる様相だった。

 少し離れた所で見守ろうとネムロスさんが言ったけれど、足に怪我を負ったネムロスさんに、魔眼を使い過ぎて倒れた私では足元が疎かになるのは必然。

 直ぐに気付かれ此方を振り向く頭目に驚きつつも赤く光る眼を魅入ってしまい、眼を逸らさなければと思いつつも見つめ返してしまう。

 頭目の左目が、隻眼では無かったんだと的外れな事を思っていたら、頭目の左眼からいきなり火が出て、そして倒れた。

 何が起きたのか理解出来てないまま、頭目の様子を確認するフォスレスさんの元まで歩き、そして今に至る。

 振り返っても何が起きたのか分からない。ネムロスさんは口を挟まなく、頭目の状態を聞くと一息吐いただけだった。

 お姉ちゃんは理解することを諦めたのか、周囲を警戒している。

「向こうは一応方付いた。ソキウスが動いている故、時期に此方にも来よう」

 ネムロスさんが来ていた服を脱ぎ、フォスレスさんへと掛けながら現状の報告を交わしてゆく。

「フギオが川に落ちたようです。生死は不明、傭兵の一人がまだ山の中に居ます」

「下手に動くは危ないか?」

「胸骨を折っていますから戦闘は不可能でしょうが、警戒はした方が良いでしょうね」

「川にフギオが潜んでいる可能性は」

「無いでしょう。生きていても流されていますから、戻って来た処で戦闘は続行できないと判断します。何処かへ逃げているかと」

「分かった。リティス、頭目を縛る紐を出して頭目が逃げられぬ様縛ってくれ。リア目隠しを付けて少し休むように。フォスレスは周囲を警戒してくれ。俺は川から水を汲んで火を消そう」

 また私一人何も……。でも此れ以上倒れても迷惑をかけるだけなので、魔眼を封じる。

 視界は真っ暗になり何も見えなくなる。

「あの……」

「色々ありましたが、皆生き残れたようですね。お疲れ様です。聞きたいことは言いたいことはあると思いますが、後程にしましょう」

「……はい」

「色々と聞かせて貰えるのでしょうね」

「此れから一緒に旅をするのです。貴方たちが逃げないと分かった以上は教えておく必要があります。無論、全てと言う訳にもいきませんが」

「其れは良かった。これ以上秘密にされたんじゃ、こっちが信用も信頼も出来ないからね。っと、こんなものかな」

 頭目を縛り上げたのか、腕で額を拭うような仕草している。

「……紐の結び方を教えてあげますね」

「是非そうしてちょうだい。此れから一杯披露する場がありそうだわ」

 微笑みながら素人作業と言うフォスレスさんに、そっぽ向きながら皮肉げに返事するお姉ちゃん。

 そんな二人の姿見えなくても分かるやり取りだった。

「リティス、こっちは大丈夫ですから、ネムロスの手伝いを。あの足では辛いでしょうからね」

「そうね、あいつが一番無茶するから……ちょっと手伝って来るわ」

 そう言ってネムロスさんの所へ駆けつけて行った。

「フォスレスさんも無茶はしないで下さいって、言いたいのですけど……」

「えぇ分かっています。でも其れはリアにも言えますからね」

「今回は皆、無茶をし過ぎたって事にしましょう」

「まぁ……そうですね、そう言う事にしておきましょう」

 少し魔眼封じの布を外す。今は魔眼の力も弱くなっているし、どうせフォスレスさんには通用しない。外した所で影響はそうないはず。

 周囲を見渡す。懸命に火消し作業をするネムロスさんに、其れを優しく見守るフォスレスさん。

 一瞬目が合って、微笑んだ気もしたけれど、瞬きしたときには山の中へと目を向けていた。

 暗闇の奥から複数人やって来る気配。慌てて目隠しを付け、頭巾を目深く被る。

 今更顔を隠した所で遅いけれど、なんとなく隠してしまった。

 やがて姿を現したのは五人の兵士。そのうち一人はソキウスさんだった。

「ご無事でしたか」

「其処まで慌てて来なくとも良いと思いますが。戦闘継続中でしたら敵に警戒されていますよ」

 ソキウスさんの登場にも動じることなく応じる。フォスレスさんの中では想定通りなのだろう。

 そして、この状況もソキウスさんにとって一番望んだ形となった。

「あの爆発ですからね。非常事態と判断し助力すべく急いできた次第、しかしその必要は無かったようですね」

 周囲を見渡し、演技掛かった言葉を吐く。

「此処は良い、消火作業を」

 直ぐに連れて来た部下へ指示を出すと、頭目へ目を向け一つ頷く。

「ご協力感謝します」

「向こうはどうなりましたか」

「死者、重軽症者共に多数ですが制圧は出来ました。団長と副団長の両名を生きて捕らえる事が出来、成果としては十分です。今は捕らえた賊を敵拠点で見張っています。朝には護送車と共に支援が到着し、其れを待って引き上げようと思います」

 副団長も捕まってよかったと思うけれど、誰が副団長だったのだろうかと今更どうでもいいことを思ってしまう。

「ならば今夜の所は世話になるが良いか。朝になれば俺たちの事は気にせず好きにしてくれ。俺たちもそうする故」

 火消し作業を交代したネムロスさんが話に加わって来た。

「成程、怪我の様子はかなり深いようですね。早めに処置をした方が良いでしょう、簡易治療品をお渡しいたします」

「申し出ありがたく、ご厚意に甘えるとしよう」

 火消しが終わった兵士たちが戻って来ると、担架が用意されネムロスさんは運ばれていった。

「お互い色々と聞きたいことはあるでしょうが、街へ戻ってからにしましょうか」

「そうしていただけると此方も助かります。そうですね、そろそろ名乗っても良いでしょう。私はルードゥス領が領主補佐、ソキウスと申します。今後良しなに」

「私はフォスレス、ただの旅人ですよ。そして彼が」

「ネムロスだ。生憎と礼節は嗜んでおらぬ故失礼は目溢ししてくれ」

「リティス」

「リアです」

「此処は他領になります。今はただのソキウスとして、一晩共に鍋を囲むとしましょうか。代わりの服も用意しなければなりませんしね」

 提示された場所は敵であった傭兵団の拠点後。

 敵の拠点にて一晩過ごす事はどうなのかなと、思いはしたけれど夜の山を下るのは危険なのも確か。ソキウスさんには仲間もいる、信頼は出来ないが信用はしてもいいと思う。

 他に体を休める場所など知るわけもなく、誰の反対も無くただ頷いて向かっていった。

 元拠点には傭兵達も当然居るわけで、彼らは後ろ手に木の棒へと連なって縛られていた。

「あぁ、彼が副団長でしたか」

 同じように繋がれている少し大柄な男、他の傭兵とは違い傷は見当たらないけれど、すごくつらそうな顔をしている。副団長と呼ばれた男が此方を見て軽い口調で聞いて来た。

「俺等の団長様はまだ生きているのかい」

「えぇ生きていますよ。ただ魔眼は使いモノにならなくなりましたよ」

「はっ! それは僥倖だ」

「ネムロスさん、なるべく彼らに情報を与えたくはありません。此処までにお願いします」

「それはそうですね。出過ぎた真似をしました」

 ソキウスさんの忠告に口を閉ざすフォスレスさん。素直に応じたのはわかる。

 でも彼は団長の魔眼が使えなくなって嬉しいと言った。何故だろう、あれは制限があるものの強い力を持っている。在って牽制や抑制に使えるのに、無くなってしまえばそれも出来ない。

 分からないまま。

「彼方で汁物を用意しています。口に合うかは分かりませんがお召し上がりください」

 皆で囲む汁鍋。野菜に干し肉。そして香辛料が入ったとても美味しい汁鍋でした。

 やはり香辛料が入ると味が全然違うと思いつつ、ようやく戦いが終わったと実感した。

 そして食べ終えた後の記憶は、無かった……。


いつも読んで頂き、ありがとうございます。

投稿時間を少し変更してみました。

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これからもよろしくお願いします。

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