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オレの家から徒歩30分。徒歩じゃねぇな吸血鬼の全力ダッシュで30分、オレの全力ダッシュで10分。
いやね?出掛けに言われたわけよ、全力で走るぞって。でね?走ったらなんか余裕でカルア抜いちゃったわけよ。一位独走のオレが場所なんか知るわけもなく迷いに迷い。結局カルアを見つけるのに30分近く要した。
……そのときのカルアの目はアホを見る目だった事をここに追記しておく。みんなは人をアホを見るような目で見ちゃダメだぞい!
「なにかすごい疲れたんだが」
「いや全力で走れって言ったから」
「森の中を亜音速擬きの速度で走るバカがいるとは思わなかったんだ」
「森の中の法廷速度とか知らんもん」
「バカが」
「そんなことより何処だよ吸血鬼の隠れ里」
「隠れ里ではない拠点だ。もうすぐそこだ」
「えぇなにそのこだわり。すぐそこ?見えねぇっすよ?」
「見えてるではないか」
見えてる見えてないじゃなく、この濃い霧で一メートル先も視界がおぼつかないんだが。目的地周辺で急に霧が出てきたな………ん?
「この霧の事?」
「あぁ。この霧が拠点への入り口を隠してる、魔力を用いた防衛手段だ。解説しようか?」
「いや魔力すげぇだけでいいわ」
カルアの後に続き霧の中を歩く。濃霧の中にいるのに全然濡れた感じがしない。これが魔力でできた霧か、まぁ見た感じわからんわな。
霧を抜けたと同時に視界に光が広がる。明暗の違いで目が少し眩んだが、回復するとそこにはとてもファンタジーな町並みが広がっていた。
「ほぅすげぇな」
「そうだろう。これだけの規模の拠点はここぐらいだからな」
「ほうそりゃすごい。……そういや吸血鬼たちのコミュニティ?ってのはどんな感じなんだ?」
なんかここの拠点、見るからに町なんだよなぁ。見た感じからから別の場所にも拠点と呼ばれるようなところがあるかなぁと聞いてみたわけだが。
「どう言えばいいか……王建政に近いものがあるな。絶対君主たる真祖様の下に血族、私も含めた五人がいる。その五人一人一人に拠点を任されている。でその下に普通の吸血鬼たちがいる」
「へぇ……てことはカルアってお偉いさん?」
「まぁそうだな」
「……足をお舐めしやしょうかお嬢!」
「ええいやめんかうっとうしい!」
敬ったら足蹴にされました。まぁ自分でもうっとおしいと思う類いの敬いかたを実践したわけだが。
「はぁさっさと城に行くぞ。話はそこでする」
「アイアイマム!」
城に行くことになりました。