異世界の人間
カンナside
あたしたちは、食事をごちそうになると、人にまぎれて中庭を散策していた。
「簡単に見つけれるもんじゃないでしょ」
ヒナタは半ば諦めた表情で庭を歩く。
確かに…
「そうだよね…。やっぱどっかに隠してあるのかな」
あたしがそう呟くと、
「何をだ」
えっ?
突然、訪ねてきた問いに、その人物を見上げた。
玄武の…兵士…。
チラッと視線をそらすと、
その兵士の背後には、さっき道案内をした4、5人のやつらがいる。
「何を探してる」
やばい。最悪だ。
「お前たちのその身なり。ただの村娘ではなかろう」
えっ?
この服は若様たちと暮らしてるときから身につけてるもの。
あたしには、どういう服が立派とかわからないけど、
もしかして、位がいい服なのかも…。
なら、あいつらは、初めからあたしたちを不信に思ってた…。
「王がお呼びだ」
「えっ?どうして…」
「お前たちに聞きたいことがあるそうだ」
あたしたちは、腕を掴まれると、あっと言う間に黒い布が手首に巻かれた。
「連れて行け‼︎」
グイグイと布を引っ張られながら、
広間へ入ると、
「連れて参りました」
王と思われる人の前にドサっと投げられたあたしたち。
白髪交じりの髪の毛。
真っ黒な瞳。
王は、
あたしたちに、スーッと人差し指を向けると
「どちらだ?」
そう聞いてくる。
どちら…って何が…?
何も答えず黙っていたあたしたちを見ると、更にククっと笑い出す玄武王。
「そんな布、無駄だ」
側近に向ってそう付け足す。
思わず、手首に着いていた黒い布に視線を落としたあたし。
魔封じの布が…無駄?
それって…。
まさか、あたしのこと?
そう感じてパッと顔をあげると、
「お前か」
玄武王はあたしを見据えた。
「な、なんの…話しですか?」
「単刀直入に言おう。この世界のものではないな?」
えっ?
今…なんて…。
「全員下がれ」
玄武王がそう言うと、広間にいた側近たちは部屋を出て行く。
“この世界のものではないな”
側近たちが出て行く間、
あたしは、この質問になんて答えようかと、懸命に考えていた。
でも、この人は、
別の世界があることも、
あたしが、その世界の人間であることも、
たぶん全部わかって聞いてきてる。
どうして知ってるのかはわからないけど、誤魔化しは通用しない。
いつの間にか静まっていた広間。
「答えられないか…。なら質問を変えよう」
王は、何かを手に取ると、
それをあたしの前にポンっと投げた。
「これはお前の携帯ではないのか?」
うそ…。
これは…モアを助けたときに使った携帯。
どうしてあたしの携帯を王が…。
ううん。
そんなことより、
今、“携帯”って…言った。
どうしてそれが“携帯”だって…
知ってるの?
“病で魔力が使えなくなったらしいわよ”
本当に魔力が使えなくなったの?
それとも、まさか…もともと…。
魔力が使えないから武器を作ってるわけじゃなくて…
この人も武器の存在を…知ってるんじゃ…。
「その通りだ」
あたしの表情で全てを悟ったかのように、そう言葉にした王。
なんだか怖くなって、
あたしは胸をギュッと掴んだ。
「な、なら…あなたも…」
なんとか口を開いて精一杯の言葉を出したあたしを見て、薄笑いを浮かべた王。
「まぁいい。話してやろう。お前たちと会うことも二度とないだろう。
なぜなら、ここから生きては帰れないからな」
「……」
「私は、この世界の人間ではない」
やっぱり…。
どうして?
どういうこと?
「30年前…この世界に来た」
えっ?
30年前?
王は、廊下に目をやり、人の影がないことを確認すると、あたしに視線を戻す。
そして、声を落とすと、小声で呟いた。
「私と同じ顔をした奴が…玄武の王だった」
えっ?
ま、まさか…。
「同じ世界に同じ顔の人間は二人もいらない。そうは思わないか?」
「こ、殺したんですか?」
「そうだ。この世界で生き残るためにはそうするしかなかった。お前も同じ世界から来た人間なら、わからなくもないだろう?」
生き残る…ため…。
あたしは、
この世界にきて出会ったのが、
ヒナタや若様で、
食べ物や住む場所にも困らなかった。
もし、この出会いがなかったら、
生き延びるために、物を盗んで生きなきゃいけなかったかもしれない。
でも、だからって、同じ顔の人間を殺して、すり替わるなんて…。
あれ?
ちょっと待って…
玄武の王を…同じ顔の人間を…殺した?
なら…なぜ生きてるの?
全く同じ日に死んだモアとユリ。
鏡面世界で境遇しあっているのは、間違いないと思ってたのに、じゃぁモアとユリは、ただの偶然?
「一つだけ聞かせてください」
「なんだ。なんでも答えてやる」
「あたしたちの仲間が、半年前、殺されました。朱雀の女です」
「それが?」
「彼女は“玄武の企みがわかった”と…。あなたが殺したんですか?」
玄武王は、眉間にシワを寄せ考えると、首を横に振った。
「そんな女を手にかけた覚えはないぞ」
「そうですか」
「だが悪いがお前たちには死んでもらう。私の秘密も、そして武器の開発も知られてしまったからな」
王は、カチャッと音を鳴らすと、
あたしにピストルを向けた。
銃?
死の覚悟なんてする暇もない。
怖くて、パッて顔を下に向けると
「ま、待ってください!! このお方は白虎の皇女…カンナ様です‼︎」
きっとそんなことを言ったとしても
、もう殺される…。
絶対絶命のピンチの中で、
悪あがきでもして、時間稼ぎをするつもりで言ったであろうヒナタの言葉に、
「なんだと?」
玄武王は予想外に驚きを見せながら、銃を床へカタンっと落とした。
「泰子の…子なのか…?」
「えっ?」
泰子…?
誰?
目を見開いて、ヨタヨタとあたしに近づいてくる王。
「カ、カンナ…といったか。魔力は?」
「つ、使えません」
「それがなぜだか疑問に思ったことは?」
「……?」
それは、あたしがあっちの世界で暮らしてきたから…。
……。
あれ?
でもお父さんもお母さんも白虎族なら、
自然とあたしだって魔力が使えるはずじゃ…。
なんで…あたしは、
魔力が使えないの?
「申し上げます‼︎」
廊下から聞こえた声に、ハッと我に返ったように上座へ戻る王。
「なんだ」
「皇帝陛下が…お見えでございます」
「な、なんだと?」
「陛下の妃様がこちらにお見えだと申されておりますが…」
その言葉に、王はギロリとあたしを見てきた。




