あたしは…誰?
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カンナがこれを読んでいるときには、きっと私はこの世にいないでしょう。
えっ?
出だしの文章に、目を疑った。
誕生日の日。
お前に鳳凰の鏡を渡したこと、
後悔はしていない。
自分の進むべき道は、おのずと決まっているはず。
私も今年、80歳になった。
あの日から、
もう15年がたったのか。
……15年前のことを、
ここに記しておく。
それは、私が聞いていた、
ベリカ様と白虎王との会話だった。
「ベリカ王妃様…これは…」
「鳳凰の鏡です。もしものことがあったら…これを」
「これは一体…」
「皇太子に即位したとき陛下が私に献上してくださったものだ」
「それは存じてます。鳳凰の鏡は王位継承の証」
「それだけではない。これにはある伝説があることを知った。いざよいの日、鳳凰の鏡が光の扉を開く…と」
「ベリカ様?」
「冗談を言ってるわけではない」
「もし、マリ王妃が我々を襲い、白虎のお前達にも危害がおよぶのなら、これを使って白虎の一族を助けよ」
「ならば、その時はベリカ様とカイリ様もご一緒に」
「もしその時がきたら、私と皇子はこの命、惜しまない覚悟でおる」
「ならば私どももお供します。ベリカ様とカイリ様だけ逝かせるわけには参りません。それこそ白虎族の恥にございます」
「わかった…されどこの鏡はそなた達が持っておれ。もしかすると、マリ王妃の狙いはこの鏡かもしれぬ」
「白虎の玉もお前達にたくそう」
そして…事件は、本当に起きた。
山で、ベリカ様とカイリ様がお命を絶たれたという噂が白虎城まで届いたのは、5日も経ってのことだった。
その戦いで、白虎族はもう半分の兵を失っていた。
だが、白虎王はきっと最後の一人になるまで戦うおつもりだろう。
「キネ、あの話を覚えているか?」
「あの話とは…」
「ベリカ様がしておられた“鳳凰の鏡”の伝説のことだ」
「はい…これが、その鏡でございますか…」
ベリカ様は確信しておられたのだと思う。
近いうちにお命が狙われることを…。
だから我々白虎に鏡と玉をたくされた。
「キネ…今日はいざよい。伝説を信じて、どうか我が娘、カンナを助けて欲しい」
「ならば、王さまと妃様もご一緒に…」
「私たちはまいらぬ。ここで逃げれば、白虎の恥だ。亡きベリカ様と共にここで眠る。
されどカンナを道連れにはしたくない…逃げるのです。キネ…カンナを頼みましたよ」
カンナ皇女様は…立派に育ちました。
私の役目は、もう…終わりを迎えそうです。
最後までしっかり読んだ。
ベリカ様…カイリ様…キネ…
あたしの知ってる名前がたくさん出てきていた。
これは、一体…
どういう…こと?
あたしは…誰なの?
「カンナが…白虎の皇女様?」
そう確信させてくれたヒナタの言葉。
「ヒナタ…なんの冗談だろうね?これ…」
「カンナ‼︎もう一度あっちの世界に帰らない?もしカンナが白虎の皇女なら、あんたが生きるのはこの世界じゃないよ。それに、陛下を助ければ、蓮って人も死なずに済むんでしょ?
どちらの世界に住むのかは、全てが解決してからでも遅くないんじゃない?」
もし本当にあたしが白虎の皇女なら、その真実を確かめたい。
お父さんのこと、お母さんのこと、
全部知りたい。
もしかして、若様は…知ってたんじゃ…。
「いざよいが終わるまであと1時間しかないわよ!」
あと1時間…。
0時を過ぎたら、また1年は動けない。
「この先、カンナがどんな選択をしても、あたいはずっとそばにいるから」
ヒナタ…。




