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同じ顔の人間

カンナSide



「ここはね、白楽って言って、この辺では一番栄えてる城下町なんだよ」


「へぇ~」


「ここに来れば、食べ物から衣類から何でも揃う」



元の世界に帰るためには、何としてもあの鏡を探しださなくてはいけない。


だけど、霊とか変質者とか、そんな話を聞くと、もう一度あの森に行くのが怖くて、森に入るその一歩が踏み切れずに沈んでいたあたしを、


“なんか元気がないから気晴らしに”って外へ連れ出してくれたヒナタ。


初めてヒナタに借りたこの世界の服を着て外に出た。


七五三を思い出す。


目新しい衣装を身につけて胸が高鳴ったあの時の感覚に似て、少しわくわくした。


ヒナタには、

まだ鏡の話はしていない。


話したら彼女は信じてくれるかな。


あたしがヒナタの立場だったら、“鏡の中から来た”なんて話を信じる自信がない。


「何が食べたい?」


「ん~そうだなぁ…」


服といい、食べ物といい、


元いた世界では見たことのない品がたくさんあって、あたしは露店に釘付け。


ヒナタのガイド付きで店を吟味しながら歩いていると、


「かわいそうに…」


「あれは流白村の娘だよ」


こそこそと、話しをしてる人たちの声が聞こえてきた。


その話題の的へ視線を移すと、


男たちに囲まれ、黒い布を手に巻かれた女の子が、どこかへ向かって引きずられるかのように歩いてる。


あたしたちと同じ年くらいだろうか。


どうしたのかな…。


だけど、その少女をじっと凝視していたそのとき。


えっ?


ちょっと待って、


あれって…。


うそでしょ?



目を疑うかのような人物にあたしの体は凍りついた。


「ユリ!!」


大声でユリの名前を叫んで一歩前に出たあたしの体をぐぃっと引き戻したヒナタ。


「ちょっとカンナ!!何する気?やめてよ!!」


だって…。


「…ど、どうしよう。あの子…あたしの友達なの!!」


「えっ?」


「どうしてこの世界に…それになんで捕まってるのよ!!」


今度は逆におどおどした顔であたしを見つめてきたヒナタは、ゆっくりと口を開いた。



「カンナ…あの子が連れて行かれるところは…死刑場よ?」


「えっ…!?」


死刑?


う、うそでしょ?


「窃盗か…もしくは皇族に魔力を使ったか…捕まってしまった以上、止めることなんてできないわ…」



そんな!!ユリ!!



「助けなきゃ!!」


「ちょっと!!助けるったってどうやって…」


そう言ってまた、ぐいっとあたしを引き戻すヒナタ。


「どうしよう…どうしよう…ユリが処刑されるなんてありえない…どうすればいいの?」


なんとしても助けなきゃ。


でもどうやって?


鼓動が激しすぎてうまく息が吸えない。


思考さえ正気を失いそうで頭がくらくらする。


何か方法はないかと考えているうちに、どんどん遠ざかって行くユリ。



「カンナ落ち着きなさいよ!!」


あたしの両肩を掴んで、ぐらぐら揺らしたヒナタに冷静さを失っていたあたしはハッと我にかえった。


「だ、大丈夫…あたしは…落ち着いてる…」


もう一度ユリに視線を移すと、周りを囲む男が4人。



「ヒナタ…お願い!!力を貸して!!」


そう言ったあたしに、

ヒナタは首を横に振った。


「いくらあたいの魔力でも男4人は無理だよ。しかも相手は兵士だし…」


「そんな…何か方法はない?」


顔をしかめて腕を組んだヒナタを見て、やっぱダメなのかと肩を落とすと、


呆れたようにも聞こえるヒナタのため息。


「全く…方法がないわけでもないよ…」



「えっ!?ほんと!?」



「成功する補償はないけどね…ん~例えば、そうだなぁ…。何か兵士の気を引くような隙を作るとか…」


気を引くようなスキ?


「もし少しでも隙を作れば……なんとかなる?」



「なるとは思うけど…。

だけど4人の気を、同時に引くのよ?」


一度に4人とも。


なら…



「あたしに考えがある。でもそのスキができるのは一瞬だけだと思うの…」


すがる思いで頼み込むと、ヒナタは、仕方ないなって顔であたしを見てくる。



「わかったよ。一か八か、やってみよう!!」


「ありがと…」



4人の兵士に怪しまれない程度にできるだけ距離を縮めようと、


人を掻き分けながら、徐々にユリの近くまで接近したあたしたち。



「カンナはここにいて!!」



「うん!!」


先で兵士たちを待ち構えるため、ヒナタは全速力で店の裏手に周ると、彼らの前まで走っていった。


それを見たあたしは、すぐさまポケットに手を突っ込む。


えっと…携帯…。


ポケットから携帯を取り出し、画面を開いた。


あぁ…。

もう充電が1メモリしかない。


お願いどうか保って…。


携帯の存在を知らなかったヒナタ。


きっとこの世界に携帯はないはず。

なら注目を集めるには最適。


えっと…どの曲にしようかな。

できるだけ目立つ曲…。


あぁ、これでいいや。


音量は…最大。


全部の設定をして、

ヒナタに視線を向けると、


ヒナタはあたしを見てコクリと深くうなずいた。


“マナーモード中です。再生しますか?”


“YES”



液晶画面に指が触れたと同時に


♪♪~♪♪~♪♪。


大音量で流れ出したメロディー。



「なに?」

「どっから鳴ってるの?」

「なんだ?この不思議な音色は…」



失敗は許されなかった。


ヒナタが仕掛けてくる以上チャンスはきっと一度しかない。


だから、想像以上に騒ぎ出してくれた商人たちを見て、内心ホッとしたのと、


みんなが携帯を知らなくてよかったと思いながら安堵のため息が漏れた。


男4人だけでなく、周りの人たちの視線も一気にあたしの元へ集まって、


その瞬間、兵士たちの周りはあっという間に炎で包まれた。



「いやぁ!!火事よ」

「誰か!!水!!」

「玄武はいないか!?」

「水を持って来い!!」


燃え上がる炎に住民たちは大パニック。


さすがヒナタの魔力…凄すぎ…。


携帯の音を消してポケットにしまおうとしたその時。



「おい…そこの女」


「は、はい…」


一人の兵士に呼び止められて、ポケットに入れそうだったその手を止めた。



「それはなんだ」



「えっ!?わ、わかりません。あたしも何かと思い手にしたら突然音を出して…」


兵士は、バッとあたしから携帯を奪うと、爆弾でも手にしたかのように、


携帯と距離をとりながら眉間にシワ寄せてじっと見つめている。


そしてもう一度あたしをチラッと見た後、何も言わずに携帯を持って立ち去って行った。


あぁ…こ、怖かったよぉ。

心臓が飛び出すかと思った。



「おい!!娘はどこに行った!!」

「今の火事の間に姿を消しました」

「なんだと!!」


4人の兵士は、いなくなったユリに今更気がついたのか、辺りを見回しながら激怒している。


よかった…ヒナタありがと。


携帯はあの兵士に奪われてしまった。


でも、この世界じゃまったく役に立たないと思ってた携帯でユリを助けることができたなんて…本当によかった。



ヒナタたちはどこだろう…。

とりあえず二人を探さないと。


小走りで辺りを見回しながら、ユリたちの姿を探した。


うまく…逃げられたよね。


煙も凄いし、それにこの人だかり。


この中から二人を見つけるのは至難の業だな。


それに、もう白楽にはいないかもしれない。


あたしも一度、白森の村に戻ろう。


柱の影などに隠れていないだろうかとキョロキョロ見渡しながら、村のほうへ足を進めていると、


突然、背後からぐいっと肩を捕まれて、勢いよく後ろへ倒れ掛かったあたしのカラダ。



痛っ!!


だれ?ヒナタ?


引っ張られた勢いで振り向くと、

そこに立っていたのは長身の男。


一瞬、目と目が合って沈黙が流れた。



ん…!?…あれ!?


こいつって…。


う、うわっ…マジ最っ悪!!



もしかして、


こないだのキス男!?




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