第60話 【最終回】バレンタイン
2月14日の今日、クラスの男子生徒たちは、どこか落ち着きがない。
みんな、今日という日を気にしているのだ。
僕と松君が話していると、戸尾君がやってきた。
「2人はチョコをもらえるからいいよなあ」と戸尾君が言う。
「松君はもらえるけど、僕はわからないよ」
「ひさっちは花奈ちゃんからもらえるだろう」と戸尾君が言う。
「まあ義理で一口チョコぐらいならね」と僕が言う。
「僕はがっつり本命のもらえると思うけどなあ」と松君。
僕は話題を変えるために「戸尾君だってもらえそうじゃん」
「う~んどうだろう。半々ってところだね」
そして授業開始のチャイムが鳴り、この話はこれで終わった。
放課後僕はドキドキしながら部室に行く。
ドアを開けると花奈はまだ来ていない。
とりあえず何故かホッとする。
いつもの時間を過ぎても、花奈は来なかった。
実は好きな人がいて、その相手にチョコを渡しているのではないだろうか。
それとも僕にあげないのが気まずくて、今日は来ないのではないだろうか。
もしかして作ったはいいが、僕に渡す前に自分で食べてしまったとか。
う~んどれもありえる。
ただ、他の人にチョコを渡しているなら、ショックで立ち直れないんじゃないか。
その時は僕は、花奈の恋を応援できるだろうか。
そうしているとドアが開いて花奈が入って来た。
「一口チョコクラスの男子にあげてたら遅くなっちゃった」
「みんなに義理チョコあげてたの?」
「うん。だってホワイトデーにみんなからたくさんお返しもらえるかもしれないじゃん」そう言って花奈が笑う。
「それで今日は何作るの?」と花奈が聞く。
僕はいつも通り料理の話だったので、少しだけがっかりした。
だけど顔に出さないように努力をして「何にしようか?」と花奈に聞く。
「この前のコンクールで見た白エビの唐揚げってのが食べたいな」
「それは難しい。この辺では中々手に入らないよ」
「そっかあ残念。じゃあ貝焼き味噌ってのは?」
「貝を焼くのはIHだと難しいな」
「それなら私の家で作ろうよ」
こうしてスーパーに寄り、貝殻付きの帆立を買って花奈の家に行く。
そして2人で貝焼き味噌を食べた。
「美味しいね。これ青森だっけ。これが審査員特別賞の味か」
「そうだね」
「そう言えば久、東京に深川めしっていうのがあるって言ってたね。今度食べに行こう」
「わかった。今度行こう」
そうして、僕は帰ることになった。
外に出て1人で家に向かう。
すると花奈が走ってやってきた。
「ごめん肝心な事忘れてた。はい私の気持ち」そういって僕に大きなチョコを渡す。
「ありがとう」
僕は花奈の気持ちに応えようと思った。
「花奈……」と言いかけた時に、「ホワイトデーは10倍返しね」と花奈が言う。
僕は苦笑いをした。
結局僕と花奈の恋の関係は進展しなかった。
でも料理を通じた僕たちの関係は、確実に進んだ。
ふりかけから始まった花奈との関係はもはや立派なパートナーとなった。
いつか恋の方もパートナーになれる日が来られるといいな。
そう思って帰り道を歩いた。
(完)
お読みいただきありがとうございました
これにて2人の話は終わります
これで終わりか一旦終わりかはまだわかりませんが
続きを書く機会があればよいなと思いながら〆させていただきます




