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第1話 久と花奈

春。


僕、江利久(えりひさし)は高校生になった。


中学時代は、これといって思い出もない3年間だった。


高校生になったからには、部活に遊びとそこそこに勉強と、充実した日々を送りたいと考えている。


まずは友達作り。


早い人は、クラスで自己紹介が行われたあと10分後ぐらいには、すでに初めて会う人と喋り出している。


すげえ。


クラスに同じ中学の人もいるけど、特別仲がよかったわけではないから話しづらい。


そして1時間が過ぎると、もう遊びに行こうとか話してる人達もいる。


これがコミュ力の差かと痛感させられた。


こうなったら部活選びで挽回だ。


と思って色々見てみたが、やりたい部活も無い。


帰宅部でいいかなとすでに思い始めている。


すでにスタートダッシュで失敗したみたいだ。


数日経ち、昼休みになると、トイレにいこうとして隣のクラスの前を通った。


ふとクラスの中を見ると、1人でお弁当を食べている女の子に目がいった。


あれ?なんか見たことあるような。


よく見てみると織美亜花奈(おりみあはな)だ。


昔近所に住んでいて、中学になると引っ越してしまった、女の子だ。


間違いない。


花奈だ。


僕は教室に入り「花奈?」と声をかけた。


女の子が僕の方を向く。


「ひょっとして久?」


「やっぱり花奈か。久しぶり。こっちに戻って来たの?」


「うん。まあ」


「戻ってきたなら、なんで言ってくれなかったんだ?」


「ちょっと家庭の事情でね」


そういうと花奈はうつむいた。


悪いこと聞いちゃったかなと思った。


そしてさっきから気になることが。


「お弁当、なんでごはんにふりかけだけなの?」と僕が聞いた。


「悪い?これでも朝、料理して自分で作ったんだから」と花奈。


「ごはんにふりかけをかけただけを、料理なんて言わねえよ」


「はぁ?りっぱな料理でしょ」


何故か花奈は自信満々に答える。


「ちょっと待ってろ」と僕は言って教室を飛び出し、自分の席に向かう。


カバンの中から弁当を取り出し、花奈の元に向かう。


花奈の机に弁当を広げ「料理ってのはこういうものだ」と僕は自分の弁当を見せる。


ごはんに、から揚げ、卵焼き、コロッケ、それにキャベツの千切り。


花奈が驚いている。


「好きなの食べていいぞ」と僕が花奈に言う。


花奈はおかずを全部食べてしまった。


「おい、誰が全部食べていいと言った」


「今、好きなの食べていいって言ったじゃん」


「全部食うなよ。僕の昼飯が……」


「ごめん。だって美味しくて」


周りが僕らに注目しだした。


「あの人織美亜さんの彼氏?」


「なんか他のクラスのやつが織美亜さんに、お弁当でマウントとって泣かしたみたいだぞ」


「えっ、まじで?ひくわー」


そんな会話が聞こえてきた。


違う。


泣きそうなのは僕の方だ。


僕は噂されるのが嫌なので、花奈を連れて教室を出た。


「どうしてくれるんだ。変な噂になってるぞ」と僕が言う。


「ごめん。うちね。親が離婚したんだ。今お母さんと一緒に住んでるんだ。前のところに住めなくなっちゃったから、以前住んでいたこっちに戻ってきたの」


「そうだったのか」


「それでね。料理って父さんの仕事だったの。だから私もお母さんも作れなくって」


「ならさあ。僕が教えてやるよ」


「何を?」


「もちろん料理を」


「ほんと?じゃあさっきのみたいの作れるようになる?」


「もちろん」


「じゃあ。よろしくお願いします。私ごはんにふりかけかけるしか出来ないけど」


「だからそれは料理じゃねーから」


こうして、僕と花奈の料理をするという目標が決まったのだ。


昼休みが終わるチャイムが鳴る。


その時僕は思った。


飯食べてねーし、トイレにも行き忘れた!

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