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最後に求めるスキルは”ログアウト”です  作者: 汎田有冴


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13.虫だらけ道中

 私が〈ライト〉でやりたいことを説明しようとすると、ダイラーが手を上げて制した。

「わかってる。俺が先に登るから、後ろから照らしてくれよ。そういや光に反応する敵がいたよな。しかし、もっと強い光はないのか。隠れているやつをいっぺんに出せるような」

「あるけど……」

 ダイラーは魔法に詳しくないらしい。今までほとんど使ってこなかったのだろう。

 私は〈ライト〉の上級魔法〈ハイライト〉を唱えた。

 杖の先から更に太く強い光の筋が出てきた。その光量といったら、眩しくて眩しくて使用者の私たちが目を開けられないほどだ。

「この通り。おかげでこっちも落ちかねないのだ」

「極端だな。修正入らなかったのかよ」

「あまり流行らなかったからか未だにほっとかれている。だいたい〈ライト〉で事足りるから使われないしね。イベントで手に入れた最上級の光魔法もあるけど、まだ一回も光らせたことがない」

「いいよ、ちっさい光の方で。消してくれ。ああ、消えても目がチカチカする」

 実はこの〈ライト〉も店などでは売っていない。手に入れるにはミネルに貰うしかないというレアもので、光魔法系自体がゲームでは軽い扱いだから持っていない人も多い。

 〈ライト〉の情報を整理していると、最初の冒険の続きを思い出してきた。ミネルにあぶりだされた虫になれない分身で剣を振り回し、たき火の前で心地いい疲労感に浸っていると、ミネルに手を握られて声をあげるほど驚いた。とてもリアルな感触だった。かつて遊んでいた頃から何十歩も進んでいるゲーム技術に感動した。

 その場でいろんな機能を試してみた。地声は出したくないので、発声せずに口を動かすと、ゲーム機が動きを読み取り、設定した声でキャラクターが喋る。腹話術みたいだ。

「なぜ、ウラーを、くれるのか?」

 コツをつかむために、立ったまま私を見守っているミネルに質問してみた。

「君は、使わない、のかい?」

 ミネルは微笑んで躊躇なく答えた。

「魔王を倒すにはあなたのような導かれた勇者の力が必要なんだって。今のままではただの足手まといだから」

 あとで確認すると、攻略サイトに載っている通りの返答だった。

 それからゲーム機が与える感覚を自分のものにすることに没頭した。私にはそれに費やせる時間と権利があった。それで日常の空白を埋めていったのだ。

「──じゃあ行くぞ、ライト係。ついて来いよ」

 ダイラーの声で、私は我に返った。

「いいのか? 虫が苦手って言ってたじゃないか」

「虫が大嫌いなのは本当だけどよ。出るってわかったら大丈夫だ。さっきのは急に目の前に出てきて不意をつかれただけだ」

 ダイラーは二つの戦斧を交互に幹に突き刺し、それを手がかりに登り始めた。

 私も持っている中で一番小さな魔法の杖(それでもチアリーディングのバトンくらいの長さはある)に〈ライト〉を灯し、ハンドアックスと一緒に握ってダイラーの後ろから登った。そして、時々ダイラーの行く先の幹を光でなぞる。光が虫の隠れている所に当たると、虫どもがうにょうにょと出てきて、ダイラーが払い落す。なるだけ体液がでないように。

 次の枝まで順調に来ると、絡んでいる蔓が細い道となって私たちを導いた。斧でクライミングするより楽になった。

 そこからは敵の虫もより大型化した。幹に太い顎をガチガチならす甲虫、空中にオオクマバチの集団、梢には花粉を吹き出す花が咲き乱れている。甲虫を光で目をくらませ、混乱している間にダイラーが始末する。甲虫の体液も可燃性なので、近くで着火しないよう炎斬りは封印した。花やハチの巣は遠くから火矢を放って燃やす。

 ハチの巣を燃やせばハチの数は増えなくなるが、残りは〈ライト〉では惑わされないくらい怒り狂っている。さらわれると、尻の針で刺されたり空中に放り出されたりの散々な扱いを受ける。狭い足元に注意しながら必死にハンドアックスを振り回した。

 すると突如、ダイラーがいるはずの前から甲虫が襲いかかってきた。反射的に鋭い大あごをハンドアックスで受け止める。前を歩いているダイラーが動かない。甲虫はダイラーの体をすり抜けて来ている。

 側面からは待ったなしのオオクマバチども。もう片方の装備は魔法の杖。

 仕方がない。目をつぶって〈ハイライト〉を一瞬!

 魔法はすぐ消したが、視界のホワイトアウトはすぐには消えない。目の奥にも蒔いたような星屑が輝いている。ほんと修正の余地ある魔法だな。

 使い手の邪魔をする魔法だが、敵もそうなっているはずだ。ハンドアックスを食んでいる顎の力が弱くなっている。そのまま押し込み頭部を切り落とした。

 次はオオクマバチだ──瞬きを繰り返して視覚の回復を狙う。空中に浮かぶぼんやりした影。それがハチの姿になったと思ったら、急に動き出したリザードマンが横からハチの影を叩ききった。

「どうしたんだよ。何かトラブルか?」

 ダイラーは戦斧を振って刃に付いたハチの体液を落としながらため息をついた。

「森神が重たいんだよ。ゲーム機の処理速度が遅くなっちまって、不安定だ。本体がすごい音立てていて、熱も持ってる」

「さっき虫が急に目の前に現れたっていうのもそれか」

「たぶん。先輩の中古の払い下げをずっと動かしっぱなしだからな。お前のは平気なのか」

「まだなんともないけど……これをやる時に買ったばかりだからかな」

「なんだリッチマンめ。まさかコクピット型じゃないだろうな」

「さすがにそれには手がでないよ。ウェアラブルタイプで前から使っていたゲーミングチェアに座ってる」


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