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最強スキルは勇者でも聖女でも賢者でもなく肝っ玉母ちゃん!?  作者: 紅葉ももな


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第十八話『目指せ魔族の国、神魔(しんま)国』


「いっ、痛い……」


 いつのまに寝たのだろう、目元は熱を持って腫れぼったいし、頭はぼぅとして少し痛い。


 もぞもぞと身体を動かして見ると、ふわふわの毛布が頬に触れてそのまま寝なおしてしまいたい衝動に駆られる。


 「ん? 目が覚めたか?」


 毛布の内側から響く低い落ち着いた声に驚いて反射的に顔をあげる。


 腫れた瞼を持ち上げ見開いた瞳に映ったのは、キラキラと銀色に輝く長い毛皮の狼さんだった。


 えっ、ちょっと待て……この体勢ってもしかして抱きしめられてる!?

 

「あの! おはようございます、放していただいていいです……か?」


 私の声が聞こえているはずなのに、笑顔のまま放してくれない。

 

 「あ、あの! 動けないので放していただきたいんですけど……」


 わたわたと狼さんの腕の中で、もがいていたら狼さんの後ろから昨日のダークエルフさんがドスの効いた声で怒りの笑顔を浮かべながら片手を握り締めて立っていた。


 「ヴォールーフ? 昨日私が言ったこと、もう忘れたのかしら? この駄犬は!」

 

 振り上げられた拳が狼さん……ヴォルフさんの頭上に叩きつけられた。


 「痛ってえな、魔法職のくせになんでそんなに攻撃力高いんだよ……」


 私の身体に巻き付いていた逞しい腕が痛む頭を撫でるために外れると、その隙をついてシェリナはひょいっとまるで子どもでも持ち上げるように、容易く私をヴォルフさんの腕の中から助け出した。


 いやね、助け出してもらったのはありがたいんだけど、私そんなに軽くないはずなのよ。 


 アルトリード父さんは外国の血が入っているし、お母さんもいわゆる体育会系で、女性にしてはがっしりした豪快な人だった。


 その二人の血を引いているせいか同年代の少女の平均より、少しがっちりしているのだ。


 「ごめんなさいね、本当に駄犬なんだから、改めて自己紹介するわね、私はシェリナよ。そしてこの駄犬はヴォルフよ」


 とんっと地面に降ろしてもらい、改めて身長差に驚く。


 シェリナさんはスラリとしたモデル体型の長身の美人さんだ。


 そして立ち上がったヴォルフさんはシェリナさんよりも更に大きかった。


 多分二メートルは超えているのではないだろうか。

 

 「驚いたでしょう? おなかすいてない? あっちにほかの仲間が食事の準備をしてまっているから行きましょう?」

 

 差し出されたシェリナさんの綺麗な手を掴むと、後ろから低く威嚇するような声が聞こえて振り返ると音がやんだ。


 心なしかしっぽが大きく揺れている気がする。


 「オスの嫉妬はみっともないわよー」


 「わかっている……先に行く」

 

 不機嫌そうに返事をして、ヴォルフさんが走り出した。


 「さあ行きましょうか」


 シェリナさんに手を引かれて向かった先には小さな沢が流れており、その河原でヴォルフさんのほかに二人の男性が焚火を囲んでくつろいでいた。


「おっ、起きたか嬢ちゃん」 


 ニカリと私よりも小さな男性が声をかけてくる。


 「元気そうで良かったです、が目の腫れがひどそうですね」


 もう一人の細身の男性がゆっくり立ち上がると、失礼、と告げて私の目の前に手をかざした。


 「ヒール」


 男性が短くささやくと、手のひらから温かな何かが出て、閉じた両目の上を包み込む。


 「すごいすっきりしました」


 「それはよかった。 私は魔族のアスタリと申します。こちらのドワーフはガイズです」

 

「ご挨拶が遅れてしまいすみません、三ツ塚由紀と申します。ユキが名前でミツヅカが家名になります。昨日は皆様に助けていただきありがとうございました」


 彼らと会うことができなければ、私は今頃あのおっかないクマの、ディナーになっていたかもしれないと考えるだけで寒気が走る。


「こりゃずいぶん礼儀正しい嬢ちゃんだな、貴族のお嬢様かなんかかい?」


 ドワーフのガイズさんの言葉を否定する。


 だってどうしたって私は外国人父と体育会系の母から産まれた庶民代表、ただの六人姉弟の長女に過ぎない。


 まぁ、弟が5人もいる時点で普通ではないのかもしれないけれども、テレビ番組の『大きなお父さんと大家族』の家庭に比べたら三ツ塚家は普通だもん。

 

「普通の家庭の産まれですよ」


「そうなのか? ずいぶんおやごさんがしっかり育ててくれたんだな、まだ子どもなのにこんなに大人びているんだから」


 ガイズさんが何やら納得しているけれど、ちょいまち!


 今なんか聞き捨てならない単語が聞こえた気がしたような……?


「ちなみにガイズさん、私何歳に見えてます?」


「ん?十代になったばかりだろう?」


 キョトンとさも当たり前のように言われてしまったけれども、やはりこの世界でも日本人は若く、実年齢よりも幼く見えるらしい。


 十代になったばかりって、つまり私は遥斗と陸斗と同じ年に見えてるのか……


「ん?どうした黙り込んで」

 

「いやぁ、想定外に若く見られていることに驚いてしまいまして」


「まさか十代にすらなってねぇとか言わないよな?」


「違います! 私は今年で十六歳になりました!」 


 ガイズさんには一体私はどれだけ若く見えてるのよ。


 ガシャンと後ろで大きな音がして振り返れば、なぜかヴォルフさんがあたふたしている。


 私が視線を向ければ何事も無かったように落としたらしい荷物を拾っているが、そのフサフサな大きな尻尾がブンブンと振られており、こちらに届くほどの風力に焚き火の火力が上がる。


「いやぁ驚いた、嬢ちゃんそんなちっこいなりで成人してたのか」


「私の住んでいた国では、成人は十八歳なんですけど、この国の成人って何歳なんですか?」


 一応何年か前に成人年齢が二十歳から十八歳へと引き下げられたけれど、お酒やタバコは二十歳のままという不思議仕様だ。


「この国、と言うか種族によるな。 儂らドワーフは人間と同じで15歳で成人になる。 魔族のは三十歳、ダークエルフは三百歳だったよな?」


 ガイズさんが料理を盛り付けていたシェリナさんに声をかける。


「そうだね、エルフ系は寿命が千五百年を超えるからねぇ、子どもも授かりにくいし、成長もゆっくりだから成人するまでに三百年かかるんだよ」


「へぇ……」

 

「つまりシェリナはこんなナリで既に三百歳を越えてるっつうことだ」


 クイクイと自分の背後にいるシェリナさんを親指で指し示しながらガイズさんが言ってくる。


「人のことを指さすんじゃないよ、まったく……あんたたちが早く育ちすぎなんだよ」


 少しだけ淋しげ笑いながらにガイズさんの頭上にゲンコツを落とす。 


 そんなやり取りを当たり前のように行っている神速の暴風ラピディティプロケッラのメンバーは、しっかりと信頼関係で結ばれたチームなのだろう。


「そんなことより、ユキはこれからどうしますか?」


「どうしたらいいんでしょうか……そう言えば父が魔王城を目指せって言ってましたね」


 焚き火に新しく薪を加えながらアスタリさんが話しかけてきたので、転移前の父の言葉を思い出した。


 目指せも何も……魔王城ってそもそもどこにあるのかすらわからない。


 召喚された国でも、蒼汰と星夜に手伝って貰って魔王城の場所を調べてみたりしたけれど、結局ふんわりとした場所しか分からなかった。


 魔王を倒せとわざわざ異世界から呼んだんだから、事前に倒すべき魔王の居場所くらい調べておけってーの。


「魔王城を目指すのならばちょうど良かった、我々はこの遠征での任務も終わりましたので、これから神魔国へ帰還する予定なのです」


 アスタリの説明では、魔王城は神魔国と呼ばれる魔族や人族以外の種族で構成された国の首都にあるらしい。

 

「もしユキさえよろしければこのまま一緒に神魔国へ同行しませんか?」




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