27.ヘンリーの受難と秋のかぼちゃスープ
ピピピと、けたたましく目覚まし時計が鳴り響いてる。いつもその音で朝がきたって分かるんだけど、なかなか起き上がれない。あまりにも眠たすぎて、指一本動かせない。頭では起きる時間だって、そう理解してるんだけど。ゆさゆさと、アレンが私の体を揺さぶってくる。
「メイベル、メイベル。おはよう、朝だぞー? メイベル」
「ん~……あと五分」
眠たい。あともうちょっとだけ眠っていたい。このまま、ぬくぬくの毛布に包まれたまま、顔を洗う時の水の冷たさだとか、朝ご飯の味を知らずに眠っていたい。私が薄手の毛布に包まって、背を丸めるとアレンが笑った。ぎしりとベッドを軋ませ、乗り上げてくる。でも、眠たすぎて気にならなかった。アレンが私の肩に手を添え、また揺さぶってきた。
「おーい、メイベル? そうは言っても、どうせ五分後になっても起きられないんだろ? ほら、今起きた方が楽だぞ? メイベルー?」
「ん~……」
困らせたくなくて寝返りを打ち、仰向けになる。ああ、でも、眠たい……。今日はもう休んじゃおうかなぁとか、あまりにも眠たすぎて、休む気なんてないのにそう考えちゃう。アレンがくすりと笑い、顔を近付けてきた。気配が甘い。上手く言えないけど、雰囲気とか表情とかがぐっと甘く、柔らかくなってきたような気がする……。まぶたにふにっと、何か柔らかいものが当たった。それが何かを確かめる前に、アレンが私の髪を払いのけ、くちびるにキスしてきた。ばくばくばくと、一気に心拍数が上がって飛び起きる。その瞬間、ごんっと鈍い音が響く。
「あだっ!?」
「ごっ、ごめん! アレン、そこにいたの!?」
「いってぇ……!!」
「ご、ごめん! ごめんね!? 大丈夫!? おでこ!」
ああ、うっかり頭突きしちゃった! どうしよう? 怒られる……。でも、予想に反してアレンは、おでこを押さえたまま笑った。思わず目を瞠るぐらい、優しい笑顔だった。
「大丈夫大丈夫。おはよう、メイベル。あー……その、嫌だったか?」
「へっ? ぜ、ぜんぜん! 嫌じゃないよ? 嬉しいよ!?」
「なら良かった。ほら、見せてみろ。怪我してないか?」
「えっ? う、うん……」
アレンが優しく、私のおでこを撫でて確認してくれた。乾いた手のひらにどきどきと、心臓が騒がしくなる。真っ赤になってうつむいていると、ふっとまた優しく笑って、おでこにキスしてきてくれた。パニックになった心臓が口から飛び出てくるかと思った。
「よし、大丈夫だな。……朝飯、出来てるから。それじゃまたあとで」
「あっ、う、うん。またあとで!」
ばたんとドアが閉まったあと、いてもたってもいられなくなって部屋を飛び出し、アレンとヘンリーの部屋へ行く。勢いよくドアを開けると、ストライプパジャマのボタンを立って外していたヘンリーがびくっと、驚いて肩を揺らした。
「ねえ、聞いてくれる!? ヘンリー! アレンの態度があまあまなの! もちろん、彼氏になったからかもしれないけど……そうだ、彼氏! あのっ、私、とうとうアレンと付き合えたの! ヘンリー!!」
「知ってますけど!? あと、着替えてるから一旦外に出て、」
「どうしよう!? 私、耐えれるのかな~……これから! 元々優しかったんだけど、ますます優しくなってきてて! ゆ、昨夜なんかも一緒に散歩したいって言うからついて行ったら、」
「待って、ちょっと待って、メイベルちゃん? 俺、今、ズボン履いてないから……」
「あっ」
着る予定なのか、ヘンリーがチェック柄のズボンで前を隠して青ざめる。も、申し訳ないことしちゃったかも……。慌ててドアの方を向くと、そこにはアレンが立っていた。驚きすぎて「ふわっ!?」と叫んでしまう。アレンは面白がるような、でも、不機嫌そうにも見える顔をしながら腕を組み、戸口に寄りかかっていた。背筋が凍りつく。ヘンリーも同じ気持ちだったみたいで、後ろで大きく溜め息を吐いた。
「ご、ごめん、あの、アレン!? 私、わざとじゃないの……ヘンリーが着替えてるの、知らなくって。だから」
「わざとじゃないのは知ってる。でも、そういうことなら俺に言えばいいだろ?」
「そ、そういうことって?」
腕を組んだまま、アレンが照れ臭そうにそっぽを向く。あれ? ひょっとしてヘンリーに嫉妬してる?
「だから、さっきヘンリーに言ってたみたいなことをだよ」
「アレン……もしかして、それって」
「申し訳ないけど、二人とも出て行ってくれないか? 寒いんだよ! 俺は早く着替えたいんだよ!!」
「あっ、悪い」
「ご、ごめんね!? つい! じゃっ、私も着替えてくる!」
「えっ、メイベル!?」
ばたばたと、慌ただしく出て行った後ろ姿を見つめ、アレンが溜め息を吐いた。ヘンリーが複雑そうな顔でパジャマのボタンを外し、着替えてゆく。
「なぁ……俺、避けられてる気がするんだけど。メイベルに」
「知るか。悪いけどアレン、俺はお前の相談にまで乗れない。メイベルちゃんのなら聞くけど」
「おい、一体なんでだよ? お前、まさかメイベルのことが好き、」
「違うって!! アレンは知らないのかもしれないけどさ!? メイベルちゃんが怖いんだよ、最近……。聞くという選択肢しか与えられてないんだよ、俺には!」
「は? メイベルが怖い? どうせお前が悪いんだろ。さては怒らせたな?」
「違うって、だから……。ああ、もう、出て行ってくれ! 二人の話を聞くのはもううんざりだ。俺が間に入って聞く必要、あるか!? なぁ!? 二人だけで話せばよくないか!? 両想いだろ、もう!」
「わ、悪かったって……。落ち着けよ、一体どうした?」
「この鈍感魔術師め……!!」
「おい……」
朝から仕事に身が入らなかった。分かってたけど、集中出来ないのは。包み紙でマグカップを包みながらも、目の前に立つカイルさんに話しかける。秋が深まってきたからか、今日は紺色の上質そうなスーツをかっちり着こなしていた。
「それで私、アレンにプロポーズして貰って結婚することになったんですけど、アレンの甘さというかその、優しい眼差しとか態度とか、声とかにまだぜんぜん慣れなくって! 付き合ったとしても、普段通りのままなのかなと思ってたから、余計に緊張してしまって……!!」
「そうですか……。幸せオーラに吐き気がしてきました」
「はき、吐き気っ!?」
「はい。たった今、胃がやられました……」
ちょっと気持ち悪そうな顔をして、胃の辺りを擦ってる。わ、私ったらつい、聞いてくれるからといって、惚気話なんかしちゃって! 慌てながらも、さらにプチプチでマグカップを包みこむ。カイルさんが「げふっ」と、大きめのげっぷをした。
「ご、ごめんなさい……。あの、自分でもよく分からなくて戸惑っているんです。友達に相談するのは恥ずかしいし、ヘンリーに相談しようと思ったんですけど、最近忙しいみたいで」
「へえ」
「アレン、あんなに怒りっぽかったのに、今ではぜんぜんで……。嬉しいんですよ? 嬉しいんですけど、急にあまあまで優しくなったらその、緊張しすぎて逃げ出したくなってしまって!」
「へ~。良かったですね……」
「はい! ありがとうございます! 今朝なんかも、私にキスして起こしてくれて……。男性ってみんな、そんな感じなんですかね? 私、アレン以外の人とお付き合いしたことないから分からないんですけど、急に態度が優しくなって、私がぎゅーってしたいって言っても、嫌がらずに、むしろ優しく包みこんでくれるような感じでしてくれるしっ……!!」
熱く語っていたその時、からんからんとドアベルが鳴り響いた。期待して見てみると、予想通りアレンだった。私を見つめ、優しく笑いながら片手を上げる。朝、出勤した時は黒いジャケットを羽織ってたけど、今は脱いでいて、モカブラウンのニット一枚だった。嬉しくなって手をぶんぶん振っていると、カイルさんが振り返り、頭を下げる。
「どうも、アレンさん。こんにちは」
「おっ、シェラ弟。久しぶりだな、あの時以来か」
「ですね。……聞きましたよ、メイベルさんから。ご結婚、おめでとうございます」
「いやいや、まだだから。式とか入籍日はこれから、二人で相談し合って決める予定だから」
「待っててね? アレン。お会計済ませちゃうから」
木のトレイに置いてある紙幣を掴んでいると、アレンが「ゆっくりでいいぞ」と言いながら店の中に入ってきた。そのままカイルと二人で喋り出す。
「嬉しそうですね……。アレンさん」
「まぁな。お前があの時、アドバイスしてくれたおかげだ。ありがとう」
「アドバイス? しましたっけ?」
「おう。してたぞ」
「まあ、良かったですね……。メイベルさん? 別れたら俺に連絡してください」
「えっ!?」
「しねぇよ! お前、しつこいな!?」
「あわよくばと思ってます。奪う気とか無いですけど」
「喧嘩売ってんのか……?」
あれ? 一気に空気が不穏なものに……。慌てておつりを返し、マグカップ入りの紙袋を押し付けて外へ出した。すぐさまガラス扉に“お昼休憩中”と書かれたプレートを吊り下げていると、アレンがむすっとした表情で話しかけてくる。
「あいつ、しょっちゅう来るのか? この店に」
「ん~。週に二、三回ぐらいかな?」
「めちゃくちゃ来てるじゃん、あいつ……。今度来たら追い返してやれ」
「ふふふ。お客さんだから、そういう訳にもいかないよ。ほら、一緒にご飯食べに行こう?」
手を差し出すと、アレンがちょっとだけ嬉しそうに笑って、私の手を握り返してくれた。ああ、でも、まだ緊張する。繋いだ手から体温が伝わってきて、いてもたってもいられなくなる。でも、手を繋いで歩きたい。しばらくの間、無言でビジネス街を歩いていた。すっかり秋が深まっていて、青空が澄んでいる。頬を撫でる風は冷たいんだけど、不思議と暑く感じた。
「あの、アレン? 何が食べたい? 今日は」
「あ~、そこまでがっつり食べる気分じゃないけど。メイベルは?」
「私も。スープぐらいでいいかも」
「じゃあ、サンドイッチ屋にするか。あそこ、確かスープも取り扱ってただろ?」
「そうそう。今は季節限定のカボチャスープがあるみたいで。この前、店員さんが教えてくれたの。来週から新商品出ますよって」
「へ~。じゃあ、行くか」
カイルさんに嫉妬してる? って聞こうと思ったけどやめた。式のこととか、両親への挨拶とか、色々話し合うべきことはいっぱいあるんだけど、胸が詰まって何も言えなくなる。結局、バニラちゃんのこととか、当たり障りのないことばっかり話してしまう。……話が尽きたら、ついうっかり、キスとかハグとかして、イチャイチャしちゃうし。昨夜のことを思い出して、トマトとベーコンの断面を見つめていると、隣のベンチに座ったアレンが「ん?」と言い、顔を覗き込んできた。
「どうした? メイベル。調子でも悪いか?」
「あっ、う、ううん! 何でもない! あの、これからの話もちゃんとしなくちゃね……」
「ああ、そうだな。俺のところはまぁ、いいとして……。父さんも母さんも喜んでるし。問題はメイベルのところだな。特に父親」
「ふふふ、お父さんなら大丈夫だよ。気にしないで? 私も気にするつもりなんて、一切無いから」
「でもなぁ~……。メイベルの父さん、どんな感じなんだ? 警察官って聞いたけど」
「ん~、そうだなぁ」
とりあえず、サンドイッチに齧りついて食べる。いきなりどんな感じかって聞かれても、上手く答えられない。アレンが顔色悪く、隣でかぼちゃスープをすすっていた。私があれも食べたい、これも食べたいって言ってたら「じゃあ、俺がかぼちゃスープを頼む」って言ってくれた。でも、それだけで足りるのか、それ以外頼んでなかった。珍しい。
「私とはぜんぜん似ていなくて……。えーっと、ライ叔父さんから優しさを抜いて、老けさせて、もっと怖くて頑固にした感じかな! あと、すごく心配性なの。一人暮らしするって言った時も、うるさく騒いでたし」
「……怖いな。俺、殴られないかな……?」
「ふふふ、大丈夫大丈夫! お父さん、手は出さない人だから。口は出すけど」
「えっ、えええええ~……」
「でも、私が説得するから大丈夫。一生無視するとでも言っておけば、すぐに許してくれると思う! 私に甘くて淋しがりやなの」
「そ、そうか……。きついな、それ」
アレンがほっと息を吐き、上を見上げた。公園の古い樹木が枝葉を広げ、黄色と赤に染まってきた葉を揺らしている。辺りには誰もいなくて、地面には団栗と木の葉が敷き詰められていた。目の前の池からはグァッ、グァッと水鳥の声が響いてくる。のんびりと、穏やかな秋の景色を眺めていたら、ふいにひらひらと、黄色に染まってきた葉が何枚も落ちてくる。落ちてくる葉を眺めながらも、アレンが話しかけてきた。
「なぁ、俺、まだ聞いてなかったな。そういや」
「へっ? 何を?」
「俺を好きになったきっかけとか……」
「好きになったきっかけ!?」
びっくりして声を張り上げた瞬間、ポケットに入っていた魔術手帳がリンリンと鳴り出した。アレンが強烈な舌打ちをする。慌てて取り出し、謝りながらも通話を始める。
「もっ、もしもし? ウィル? どうかしたの?」
「姉さん、久しぶり」
「久しぶり。あの、私、今、アレンとお昼ご飯食べてるから……」
「結婚するって聞いたけど本当?」
心なしかウィルの声が硬い。あれ? どうしたんだろう? 私からじゃなくて、アレンの方から伝えたから? でも、確かにちゃんと私の口から言うべきだったかもしれない。
「そうなの~! ほら、好きになったって言ってたでしょう? ずいぶん前から」
「えっ!? ウィル、えっ!?」
「う、うん……」
「もう私達、付き合ってるも同然の関係だったし! 一緒に暮らしてるし、アレンが結婚しないか? って言ってくれて~! あ、そうだ。ウェディングドレス選び、ウィルもついてくる?」
「メイベル、ちょっと待て。色んな意味でちょっと待ってくれ……!!」
「どうしたの? アレン」
慌てて、アレンが私の魔術手帳を握り締めてきた。ウィルの返事は無くて、しーんとしちゃってる。アレンが「ちょっといいか? 代わってくれ」と言い、自分の耳に手帳を押し当てた。
「ウィル? メイベルが俺のこと好きだって、一体いつから知ってたんだ!?」
「裏切り者にそれを知る資格はねぇよ……!!」
「わ、悪かったって……。でも、昨夜も話した通り、ちゃんとメイベルのことは大事にするつもりだから」
「姉さんは? 代わって」
「あ、うん……」
「もしもし? どうしたの、ウィル~」
不思議に思って聞いてみると、ぐすぐすと泣き始める。や、やっぱり直接伝えた方が良かったかも!?
「だ、大丈夫!? ウィル。ごめんね? 私、ちゃんと伝えてなくて!」
「反対……。俺、あと数年ぐらい姉さんと一緒に暮らしたかったのに!!」
「ご、ごめんね? あっ、そうだ。私とアレンが引っ越したら泊まりにおいでよ! 新居はね~? ふふふ。前に写真を送った素敵なお家で、なんとアレンのお義母様が、」
「姉さん、そんなのはどうでもいいから! あと早すぎる! アレンに代わってくれ! どういうつもりなのか問い詰めてやるから!!」
「ウィル、ごめんって……勘弁してくれよ」
「問い詰めるって? 一体何を?」
「そんな男に姉さんはやれないから……」
まさかウィルが反対してくるだなんて。すっと表情を失くした私を見て、アレンが肩を動かしていた。せっかくの、楽しい休憩時間だったのに……。
「ウィル? 私が選んだ人なのに反対するの?」
「えっ? い、いや……そうだ! 父さんには!? 話してないよね!?」
「うるさいからお母さんにしか話してない。ウィルから伝えて?」
「えっ」
「次、結婚を反対したら許さないから。じゃあね」
「あっ、ちょっと待って、姉さん……」
ぱたんと、魔術手帳を閉じて切る。アレンがおののいた表情で「あ~……メイベル? 大丈夫か?」って聞いてきてくれた。にっこりと微笑みながら振り返る。
「大丈夫! ありがとう~」
「……ヘンリーが言ってたのって、こういうことだったのか」
「えっ? ヘンリーがどうかしたの? 私について、何か言ってたの?」
「ああ、いや、何も……。まぁ、ひとまず挨拶の時に、ウィルの好きなお菓子でも買って持って行くか」
「へっ? ううん。いらないんじゃない?」
「メイベル……」
アレンを好きになったきっかけか~……。改めて聞かれるとよく分からない。私を「可愛い」って言う理由が知りたくて、でも、私が好きだから言ってくれてる訳じゃないんだって気が付いた瞬間、ショックを受けた。だから、好きになったのかもしれないって気が付いた。青ざめてかぼちゃスープをすすっているアレンの肩へともたれる。アレンが驚いて、カップから口を放し、見つめてきた。恥ずかしくなってきて両目を閉じる。
「私ね……アレンの不器用で優しいところが好きになったの。でも、好きになったきっかけはね?」
「あ、ああ、うん。さっきの続きか?」
「そうそう。……私が風邪を引いた時、綺麗って言ってくれたでしょう? それから」
私の醜い気持ちを知っても、アレンは綺麗だって言ってくれた。真剣に。たぶん、あれからすごく意識するようになった。もっと甘えたいだとか、アレンの優しい笑顔を見たいだとか、そんなことを考えるようになった。膝の上に置いたサンドイッチを持ち上げ、断面を見つめる。まだかなり残ってるから、早く食べなきゃ。
「私……。あの時、優しく笑いかけて貰えたのがすごく嬉しかった。私は悪くないよって、そう慰めて貰えてすごく嬉しかった」
「あれからか~……。でも、態度に変わりがないというか、いつも通りだったよな!? 飯食いたいって言ってたよな!? 俺に!」
「えっ、うん。甘えたくなっちゃって?」
「分っかんねぇな~……!! 難しいなぁ、そうだったのかよ……」
「アレン? どうかしたの?」
何故か落ち込んでしまった。背中を擦って慰めてみれば、一気にぐーっと、かぼちゃスープを飲み干した。もう冷めてぬるくなってるから? 驚いて見つめていれば、アレンがぱっと無邪気な笑顔を浮かべる。……そうだった。私、こんな笑顔を見て好きになったんだった。
「回りくどいことしてないで、早く好きだって言えば良かったかもしれないな? 俺」
「う、うん……」
「でも、良かった。メイベル」
落ちてきた茶髪を耳の後ろへとかけ、甘く笑う。ああ、だめだ。緊張する! でも、ちゃんと伝えておきたい。
「に、逃げちゃってごめんね!? 最近……。好きだよ、アレン。ちゃんと好きだから、大丈夫だから……」
「大丈夫、ちゃんと分かってるから。俺も好きだよ、メイベル」
ここまできちんと言ってくれる人だとは思ってなかった。その後、家に帰ってヘンリーに話したら、すごく嫌そうな顔をされてしまった。
「アレンはね? ちゃんと好きって言ってくれる人なの……」
「そっか。良かったね。うちには庭があるよ? 行ってきたらどうかな?」
「アレンは今、お風呂に入ってるから……。それでね、ヘンリー? 聞いてくれる!?」
「聞くという選択肢しか、俺には残されていないのか……。いいよ、聞くよ。分かったよ」
「アレンはね? 私にちゃんと好きって言ってくれる人で……」
「せめてバリエーションを増やして欲しいなぁ。苦痛だ」
「わ、分かった! 増やすね!? 実は今日、お昼ご飯を食べたあとにっ!」
「俺のバカ野郎……」




