イライアスとシュゼット㉓ side イライアス
さて。
この展開を受けてリュシアンはどう出るだろう。
また『僕を無視するな』と怒ってくれるかなと、期待しながら満面の笑みでリュシアンを見れば。
実に連れないことに、リュシアンはこれ以上の茶番には興味はもう無いようで。
「上出来とは程遠いですが……。シュゼット嬢、最初の約束通りイライアスを僕の前で跪かせたので今回は特別にこれで不問とします。どうぞ、末永くお幸せに。あぁ、僕は生まれてくる子供と妻を置いて国を離れたくないので、結婚式には呼ばないでくださいね」
それだけ言うと、ボクに背を向けさっさと貴賓席に向けクリストファーとブライアンと共に歩き出してしまった。
結婚式には来てくれないのは残念だが。
まぁ、結婚の報告のため早々にボクらが遊びに行けばいいだけなので問題はないやと、
「あぁ分かった。子供が生まれたら、またこっちからすぐ会いに行くから心配しないで~」
無視できないくらい大きな声でそう言って、その後姿に向かいヒラヒラと手を振れば、
「絶対に来なくていい!!」
リュシアンが振り返りざま、また猫の様に『シャー!!』と肩を怒らせるから。
別にリュシアンを煽るつもりはなかったのだけれど、あまりに面白くて、また声を上げて笑ってしまった。
笑いが治まった後で、シュゼットに視線を戻せばどういう事だろう?
また何か勘違いしたのだろうシュゼットがリュシアンに、熱い視線を向けていたから
「……プロポーズした男の前で、さっそく別の男に目移り? シュゼットは本当にボクを煽るのが上手だよね?」
不機嫌を精一杯隠しながら、ボクの体で、シュゼットの視界をぐいと塞ぎ
「シュゼット、プロポーズ返事をもう一度ちゃんと聞かせて」
そう、迫れば……。
長い長い沈黙の後
「……はい。私、……私、イライアス様をお慕いしております」
シュゼットがまた顔を真っ赤にしつつ、でも今度はしっかりボクの目を見ながらそう言ってくれたから。
ボクはどうしようもなく嬉しくなってしまって、幼い子供のようにギュッとシュゼットを抱きしめた。
その後、
「リュシアンに一杯喰わされた事は悔しいけど……。こうして堂々シュゼットを手に入れるの逃げ道を塞ぐ事が出来たから、まぁいいか」
うっかり、そんな独り言をシュゼットに聞かれてしまったボクが、しかし決してシュゼットに逃げられない様、シュゼットを抱きすくめるこの腕に力を込めた事は、まぁ言うまでもないだろう。
******
シュゼットの父である辺境伯から結婚の了承を得る為、その足で辺境伯の屋敷を訪ねれば、辺境伯に代わりボクらを出迎えたのは、彼女の従兄だった。
「これまで守ってくれてありがとう。でも私ね、これからは強くなりたいの」
シュゼットのそんな言葉に、彼女の従兄は観念したようにグッと言いかけた言葉を飲み込んだ。
そして長い事黙りこんだ後、
「分かった。お前が嫁ぐまでに辺境伯領領騎士団の奥義、流星突きをオレ自ら仕込んで見せよう。もし次、不埒なものが、お前に無体を働こうとした際には、必ずその意識を刈り取れる程完璧にな!!!」
睨み殺さん勢いでボクを見ながら、そんな事を言った。
きっと、彼は先日ボクがシュゼットの首元に残したキスマークに気づいたのだろう。
シュゼットは、彼が冗談を言っていると思い笑っているが……。
彼女の従兄がボクに向ける、あの目は間違いなく本物の殺気だよなと、ボクは鳩尾辺りがヒュッと冷たくなるのを感じた。
******
「また夜に会いに来るよ」
馬車に乗りこむ前、シュゼットにそう声をかければ。
「今度は王太子妃教育の為、私がお昼にお城に上がる予定になっていますよ」
色々と覚悟を決めたのであろうシュゼットが、これまでとは異なる凛とした口調で、年齢相応の大人の綺麗な女性の様に微笑んで見せた。
それは、本来王太子妃としては望ましい態度であるのだけれど……。
ボクはボクの駄目なところを丸ごと受けれてもらえたように、彼女の不器用な純粋さをこのまま幼い頃の記憶として置き去りにはしたくなくて、
「それでも。……ようやく君の居場所を見つけたんだ。時を止めてあげられない代わりに、何度でも。もう二度とキミを悲しい思い込みの世界に取り残したりしないで済む様、ボクが夜に会いに来るよ」
そう言って。
その言葉に違わぬよう、彼女の唇に触れるだけのキスを落とした。
すると……。
シュゼットはまたボクの想像を斜め上に飛び越えて。
そう、まるで昼と夜の混ざったこの美しい紫色の夕空の様に。
幼い日の純粋さを残したまま、それでいてそれに魅せられたボクの胸がドキドキしてどうしようもなくなるくらい、酷く綺麗にボクに向かって笑って見せたのだった。
最後までお付き合い下さりありがとうございました。
イライアスが曲者過ぎて、全然筆が進まず苦戦の日々でしたが、いつも皆さまが読んで下さるおかげで、なんとか最後まで書ききることが出来ました。
誤字報告、ご感想、いいね、評価、ブックマークにも沢山励ましていただきました。
本当にありがとうございました。
いつか、お礼がてら(?)リュシアンsideのお話もまた、『愛が重すぎる悪役令嬢は~』の方にかけたらいいなとは思っていますので、また何か書いた際には読んでいただけると幸いです。
そう、それから完結に合わせて、こちらのお話を加筆修正したものを先週の金曜日よりアルファポリス様にアップしたところ……。
なんと現在、女性向けHOTランキングの7位に入れていただく事が出来ました(;゜Д゜)!!!
これもひとえに、ここまで読んで下さった皆様のおかげ。
アルファポリス様の方で再度いろんな方に読んでいただく機会をいただけてとても嬉しく思っているところです。
【アルファポリス版】
悪役令嬢は『壁』になりたい
https://www.alphapolis.co.jp/novel/201143401/373753385
こちらでは書けたところで区切ってその都度upしていたので、お気づきの通り話の流れが強引なところが多かったのですが、アルファポリス版はその辺り加筆修正しております。
なろう版とアルファポリス版では、イライアスとジェレミーの関係が最後少し違ったりもしているので、もしもしお時間ありましたら、アルファポリス様の方にも遊びに来ていただけると、そして『マジで根気よく完結まで付き合ってやったぞ! その優しさに感謝しつつ、また何か書きやがれ!!』のサインの代わりに『お気に入り』や『しおり』をポチッなしておいていただけますと、むせび泣いて喜びます。
今ならランキングの表紙入りしているので、公式のトップページからすぐ見つかるんじゃないかなぁ~なんて…… |ू•ω•)チラッチラッ☆
最後になりましたが、更新大変お待たせしてしまったにも関わらず最後まで読んでくださり、本当に、本当に、本当にありがとうございました。
また、何か楽しんでいただけるようなお話が書けるよう頑張ります。




