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エルは掴む、果ての世界  作者: 必殺脇汗太郎
二章 勇者と悪魔編
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エルは謀る

「まぁ、あの状況であればその行動も仕方ないことだと思うから、そう全員で凝視するのはやめてやれ。」


「そ、それもそうですな。それにしても我々に対してここまで対等に話をしてくれる方は珍しい。本当にありがたいことです。それで、お金が必要な理由でしたな。」


そこで族長は言葉を切ると、誰かを探すように周囲に視線を向けると、一人の小人族が前へと出てきた。


「そのことについては、私からお話ししましょう。」


そう言って出てきたのは、小人族の中では少し背が高く、目鼻立ちも少年というよりは青年といった印象を受ける男だった。


「私の名は、マ・フリンスク・ポポ。ペペの父で、今はいない妻を買い戻そう・・・・・としている者です。」


たった一回言葉を発しただけで、この男が誰かも、何故この状況で話すことが許されているのかも、幼い少女が何故あそこまで必死になるのかも、納得がいった。


「・・・大体はわかった。なかなかに、厄介な状況だな。」


「そうでしょう。彼の妻を買い戻すのに必要なお金は金貨500枚。必死に山菜を採取しても売ることすらなかなか難しい我々にとっては、どうすることもできないと思ってしまうような金額なのです。」


「協力は?」


「是が非でも、と言いたいところでしょうが、私達の力で稼いだ金でないと受けつけないと言われてしまった以上、やれることは少ないでしょう。これは私の問題で、娘には手を出すなと言ってあるんですが、このような状況になってしまった。あなたを巻き込んでこんなことまで話してしまって、一体何がしたいのか自分でもわかりません。」


「追いつめられれば、誰だって焦るし、答えを見失う。俺のことは気にしなくていい。好きにしな。」


「はい、そういって頂いただけでありがたいです。」


ここで、会話が途切れ重たい沈黙が訪れる。


金貨500枚。

今の状況の小人族では、例え天地がひっくり返っても届きはしないだろう額。

奴隷一体にしては、高すぎる値段。吹っ掛けられているのは百も承知だろう。


それでも、それでもこれしか方法がない。


唯一残された道が、例え途中で縄が切れて谷底に落とされるとわかっている綱渡りでも、その道を選ばざるを得ないのが今の小人族。


だけどその中で必死に、全身が傷つき、骨が悲鳴を上げようとも決して諦めずになんとかしようというその勇気は、例え蛮勇だとわかっていても、嫌いにはなれない。


「そうだな、俺には何もできない。だからさっさとここから出て行くことにするよ。でも後味が悪いから、あんたの妻が囚われいる貴族の屋敷の場所を教えてくれ。ひどい仕打ちをされているようだったら知り合いに掛け合って注意してもらえるかもしれない。それくらいはしてもいいか?」


「ええ、それだけして頂けるなら、感謝しかありません。ただ決してあなたに被害が及ばないようにしてくださいね。あなたにもしものことがあれば、今度は私達の後味が悪くなってしまいますから。」


そう言った後に、その貴族の屋敷の場所の詳細を教えてもらった。

話は終わったし、後は出てくだけだ。小人族に案内してもらって茨の迷路とトレント達の縄張りを抜けて、街道までの通り道を教えてもらった俺は手を振る小人族に手を振り返し、一人村を後にした。


『ねぇ、いいの。君こういうの嫌いなんでしょう?』


・・・・・・・・


『まったく、無茶しないと気が済まないんだね?』


「わかってるさ、こんなことしても、どうせ問題を抱えるか、最悪の場合あの人たちに迷惑をかけるかもしれないってことくらい。」


『それでも、君は行くんだね。』


「俺さ、英雄って好きなんだよ。それでさ、あんなに非力な小人族がたった一人のために、人間に、涙目になりながら槍をむけるんだ。」


『そうだね、事情を知った今だからこそ、あれはちょっとかっこよかったね。』


「だったらさ、俺だって英雄になりたいと、そう思っても仕方ないだろう?」


『なかなかな発想だね、でも嫌いじゃない。』


「今回ばかりは優越感と言われても仕方ないさ。俺は困った人達を助けたという優越感に浸りたい、理由はそれだけで十分さ。この答えにたどり着くまで、ひどく時間がかかったんだけどな。」


よし、ちゃっちゃと帝都に向かいますか。


____________________________________________________________


帝都は半日もかからない程度の遠さだった。

これじゃ侵略されたらすぐに敵の軍がやってくるじゃないかと思ったが、グリム様がいる限り、帝都は安泰なんだ。まぁ、商人の受け売りなんだけどね。


「それにしても、貴族街ってのは、本当に大きい家ばっかりなんだな。それに護衛に強そうな冒険者が多数ときてる。ほんとに金持ちってのは次元が違う。」


「そりゃそうですわ。なんたってここは大陸の中心といっても過言ではない都。すべての物が集まり、すべての文化がここから生まれるという格言があるくらいなんですから。そこに居を構える貴族は並大抵の金持ちでは歯が立たないんですわ。」


「なあ、なんでそんなに胡散臭い話し方なんだ、ぺぺ・・。」


「しーーー!私は今潜入中なんですから!小人族とばれないよう話し方を変えているんです!」


「いや、だって明らかに今の方が怪しいし、もしかしなくてもお前らが小人族ってバレるのその間違った変装のせいなんじゃないのか?」


「そ、そんなこと、ないとおもいたいんですわ。」


ひ弱を体現するかのような華奢な体に、ドワーフが着るような衣服を身に着けた自称変装中のぺぺ。

ハッキリ言って森での格好の方がまだ人間の子供ぽかった。


というか、何故ここにこいつがいるのか。

答えは俺を追いかけて、森を抜けたあたりで追いついてからずっと後ろをついてきたからだ。


今いる場所はギルドの四階、その展望デッキである。

都全体を見渡して、どこに何があるか把握するため、見晴らしのいい場所を選んだ結果、ここに行きついた。


「なぁ、頼むから帰るか宿で待っててくれよ。どちらにせよ送っていくからさ、な?その格好で外を出歩くのは攫ってくださいと言っているようなものだぞ。」


「むうう、じゃ、じゃああんたが服買ってよ!あたしお金なんてないもん!この服だってドワーフの家族の裏手に干してあったものを借りただけなんだから!」


「おまえ、盗人極めた言い訳すんじゃねーよ。」


『小人族の中でも、この子は異質なんだろうね。』


(こんなんばっかだったら、とっくのとうに種ごと絶滅してるよ。)


「はぁ、わかった。ほら行くぞ。」


「へ?」


「お前が服を買えって言ったんじゃないか。ほら、さっさといくぞ。」


あ、その前に鱗を換金してしまおう。


____________________________________________________________


呆けた顔を晒すペペのうなじ当たりの襟をつかんで引きずて行くエル。

この時、ペペの顔は真っ赤に染まっていたが、お金のことで頭がいっぱいになったエルは気づくことはなく、意識が疎かになったことで手を滑らせ、ペペに地面とキスをさせてしまったのだった。


____________________________________________________________


「うん、似合うんじゃないか?ていうか、さっきまでの服はどうしたって似合わないよな。」


「そんなこと、私だって、わ、わかってるもん・・・。」


なんだかさっきまでの勢いを失ったようだが、そこまで目に付くほどの変化でもないし、静かになって俺的にはこっちの方がいい。


とりあえず、大体の街の構造は理解したし、明後日にはアリアさんを探しに行けそうだな。


よし、今日は帝都にならあるだろう、魔石専門店に行くぞ!


と、意気込んで店を探し、意気揚々と乗り込もうとしたのだが。


「なんだ、ガキが冷やかしに来たんだったら他を当たりな!」


なんという定型文。まさに護衛のごつい人が、店に入ろうとするお金のなさそうな子供に放ちそうな言葉の数々。


ふふふ、だが今の俺は、鱗を売った金だったのおかげでそこら辺の大人より金を持っているんだぞ?


無言で背中に背負った布袋を下ろし、中に入れていた小さい袋を護衛の人だけに見えるように傾け、ずっしりと詰まった大金貨を見せつける。


「し、失礼しますたぁ!!!どうぞ、中にお入りください!」


「おまえ、なんだか今すごく悪戯してやったみたいな顔してるからね。」


「失礼な、俺はただ、例えガキでも冒険者を見た目で判断したらだめだよと、身をもって教えただけじゃないか。」


「『だめだこいつ、きっと一生こういうことやるやつだ。』」


聞こえないはずの声と何故か一字一句被った少女を無視して店内のガラスケースに入った魔石の数々を眺める。


そもそも魔石とは魔獣の核であり、魔獣が魔獣と呼ばれる大きな理由である。

強大な力を持つ魔獣は魔石もより美しくなり、強大な力を秘める。


竜が持つ魔石ともなれば、国宝級の宝石にも匹敵し、国家予算に相当するとも言われる。


そう、莫大な金が手に入るわけだ。・・・畜生!!


銀竜の魔石があれば!ここにある魔石全部買ってもまだ余裕が生まれたはずなのに!

わかってるよ!リソースを吸収する上で魔石は外せないってことくらい!


だけど金欲しいじゃん!手に入ったかもしれないものがあったら誰だって後悔するじゃん!


・・・まぁ、あの時は完全に魔石のことなんて頭になかったんですけどね。あとから気づいた時にはそりゃぁ悶えたよ。


そんなことを考えても仕方ないので、俺は目的の物を、いや物達を探すために、目が金貨に変わった状態で俺を見つめる店員に向かって話しかける。


「あのー、ある程度の強さしかない魔獣の物でいいので、店先に出してない物を纏めて売ってほしいんですけど。」


「はい!かしこまりました!種類は纏めたほうが?それともすべて別な物の方がよろしいですか?」


「全部別で。あと、このキングシャドウバットの魔石も買うので、これを含めて金貨100枚以内でお願いします。」


「金貨100枚!?すぐにお持ちいたします!!!」


驚愕し目をむき出しにした店員は血相を変えて店の裏に走っていく。

程なくして、約20個の魔石を並べたトレイを持ってきた店員は一つ一つの魔石を説明していく。


「なるほど、なかなか種類が豊富ですね。また欲しいものがあれば来ます。その時はまたお願いしますね。」


そう言って大金貨1枚を置いて店を出る。

俺が店を出るまで、店員は頭を下げ続けていた。


「エル、あの金額指定、わざとやったでしょう?」


「お、名前でよんでくれたのか。とにかく、俺はキリがいい数字を言ったまでだよ。ああ、それにしても金があるって素晴らしい。」


ほんと、銀竜さんマジ感謝ですわ。


『なんだか、君と銀竜くんが違うベクトルで可哀そうに思えてきたよ。』


ふん、いくらでも言え!


「それにしても、今日が暑いな。ほらぺぺ、先に宿に入って休んでなさい。俺は少し日陰を歩いて涼んでくるから。」


「なによ突然。まったく勝手なんだから。すぐ帰ってきなさいよ!」


「ハイハイ、わかりましたよ。」


「ふん、襲われても知らないんだから!」


そう言ってペペはぷんすかしながら宿の扉をくぐっていく。最初会ったころに比べて大分元気になったみたいだ。なによりだな。


俺は宣言通り、日陰を求めて裏通りの更に奥深くへと向かっていく。


「なあ、坊主。その袋重いだろ、俺達・・が持ってやるよ。」


なんと!声を掛けられたので後ろを振り返ってみれば、先ほど店にいた護衛の人じゃないか。








・・・・まぁ、わかってたんですけどね!!


『君、悪巧みするの本当は好きなんでしょ。』


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