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エルは掴む、果ての世界  作者: 必殺脇汗太郎
第一章 始まりの街編
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17/50

エルは挑むことにする

各々の装備初披露を終えて、それぞれの性能や効果などをターニャの口から聞いた。纏めると、


____________________________________________________________


エルサさんの装備

《頭》

太陽と不死鳥のカチューシャ

・・・赤銅色のカチューシャにフェニックスの尾をアクセントとして使用したもの。

フェニックスの尾は美しいだけでなく、魔力回復効果があり、魔法のネックである継戦能力の低さをカバーする。

赤銅色に輝くこの金属は、魔鋼鉄を溶かし、太陽石という、陽光を浴びると魔力を蓄積する特性をもったものを粉末状にし混ぜ込み再び打ち直したものである。魔鋼鉄のもつ魔力親和性と合わせると、蓄積した魔力を装備者に還元する特性を生み出す。魔力の回復を早めることに特化した装備。


《胴・足》

ビショップオブサン・ドレス

・・・太陽の司教という名を持つドレス。

フェニックスの尾を染料として使い、鮮やかな色で染め上げている。

なんとフェニックスの尾を染料として使う場合、魔力を流すことでその色を調整することができ、尚且つフェニックスの持つ再生能力をドレスにも付与することが可能らしい。傷ついても自動的に修復され新品状態に戻る服は女性からするととてもうれしい機能だろう。

そして留め金やラインとして使われているこの金色の光沢をもつ金属は太陽石を砕くと出てくるレアメタル、太陽核金といわれる高い耐熱性をもったもので、触れたものにもその耐熱性を付与する貴重な金属である。

ただし今回使われている量を用意するとなると途方もない時間と莫大な金をが必要になる。

なのでまず本物の金を使用し、粉末状にしてからスライムの粘液と混ぜ合わせ、服にラインを描く。金の持つ高い魔力伝達性を用いて太陽核金同士をラインで繋ぎ、相互作用により増幅させ、ただ装着する以上の効力を発揮させている。金があれば大量の太陽核金で彩りまくることも可能だが、さすがにターニャもそこは無理だと判断したらしい。


《靴》

灼熱の舞踊靴

・・・強い衝撃を加えると発火する着火石に、フェニックスの尾を粉末状にしスライムの核と水と一緒に混ぜ合わせて塗布することで再生能力を付与。着火石が半永久的に使用可能な状態にしてから靴底に取り付けたもの。

靴に使用した白火蜥蜴の皮にも太陽核金を取り付け金の刺繍を施し、高い耐火性を持たせている。なぜここまで耐火性を持たせたかというと、蹴りを放った際に着火石が火を噴き、相手を燃やす性能を付けたいがためだった。

試しに案山子を設置し蹴ってもらうと、蹴り足が触れた直後に追加で爆発が起こり火が噴き出た。靴は元々の耐火性能で焦げ目すらなく、ドレスも裾に火がついて色づいたと思ったら次の瞬間には再生し、元通りとなった。派手なギミックに加えて演出も完璧とは、やりおる。


《腕》

純白の戦乙女の手袋

・・・この世で一番白いとされる白雪山羊の羊毛から編まれた手袋。魔石や、魔石の粉末とスライムの粘液をしみ込ませた糸を使用し、留め金や刺繍を施し、全体で一つの魔法陣としての機能を持たせた。効果は魔法威力増幅と仕様魔力軽減であり、エルサさんの魔法能力にさらに補正が入った。

バックラーを取り付けるための機構は魔鋼鉄を加工して作られており、こちらも魔力親和性が働き少量の魔力回復効果がある。おしくも太陽石が切れてしまったためただの魔鋼鉄となってしまったが旅の途中でグレードアップを図る予定だそうだ。


____________________________________________________________


エルサは実際に動いて使い心地を確かめている。


これで後衛として魔法の支援と一撃離脱をこなす遊撃としての役割を任せることができるようになった。装備の内容としては魔法に対する補助がとても魅力的だが、特筆すべき点は爆撃蹴りを放てることだと思う。俺もそっちの靴が良かったと思ってしまうほど魅力的でロマンが溢れる。


欠点としては防御力がかなり低いことだ。こればかりは仕方ない。俺とターニャで完璧に守ろう。


だが、動きを確かめているうちにこの装備にはもう一つの欠点があったことがわかった。走ったり高いところから着地した際、爆発してエルサがぴょんっと飛んでしまうことが発覚したのだ。歩くだけなら着火石は反応しないのだが、いざ戦闘になって走れないしジャンプできないとなると戦うどころではなくなってしまう。遊撃としては不適格で、ターニャにもミスはあるのだと思ってしまった。


しかし、話を聞くと、なんとターニャにこの靴を作ってほしいとエルサ自身が頼んだのだ。

そしてもちろんターニャはこの欠点を指摘した。だがエルサは大丈夫なんとかすると言ってきかなかったそうだ。


「エルサさんは、どうやってこの問題を解決するんだ?」


「うん、ちょっとどれくらいで爆発するのかとか威力とかを確かめてただけだから。きちんとつま先には着火石はついていないようだし、問題ないわ。みてなさい。」


俺とターニャが訝し気な目を向けている中、エルサはポーズをとり突如として踊りだした。

流れるような動きを、つま先立ち・・・・・のみでこなしている。それも周りの案山子に踊りながら剣を当てていき、大きい移動の際には踵を地面につけ爆発による跳躍を行い、また踊り始める。


すべてに案山子に剣を当て切ったところでその舞踊は終りを迎えた。


「エルサさん、今のは?」


「私はね、もともと南の方の出身で、割と有名な、剣舞踊の一座に拾われてから大人になるまでずっと舞踊の稽古ばかりしていたのよ。でも私は強い男が好きだから、ちゃんと理由を話してこの街に出てきたの。王都まで行こうとしたけど、変な貴族に目を付けられたくないからこの街に落ち着いて、今に至るって感じね。」


「へーなんでいままでそのスタイルじゃなかったんだ?」


「だってこの急な移動が出来なきゃ戦闘では剣舞踊は使い物にならないもの。普通に踊って切ってたんじゃ、隙だらけですぐにやられちゃうわよ。」


「たしかに、言われてみれば踊って切ってだと効率はわるいな。その点を克服するためのその靴ってことか。」


「そう、だからこれからは戦闘時は常につま先立ちになっちゃうわね!」


「なんか疲れそうだな。」


「そう?案外慣れれば問題ないわよ?」


エルサさんの以外な一面を垣間見た。


次はターニャの装備を見ていこう。


____________________________________________________________


ターニャの装備

《頭》

護紅石の髪飾り(二等級)

・・・俺のピアスと同じ石をあしらった髪飾り。

ターニャは長い髪を後ろで纏めていたが、エルサの勧めがあり、髪飾りで綺麗に纏めることにした。実際、今まで無造作だったのが小綺麗になっただけでなく、かわいらしいヘアアレンジになったことで素材の良さが引き立てられている。ターニャ本人はお揃いだと嬉しそうにしていて、エルサさんと俺はつい、微笑ましく見守ってしまった。


《胴・足》

蒼巨犀のオーバーオール

・・・サスペンダー部分に守りの刺繍を施し、薄着ながらも防御力を上げている。

さらに青くて巨体の犀の皮は、元となった魔物がなぜか巨体で隠せないのに迷彩する能力を持っていたので、このオーバーオールも魔力を通すことで迷彩機能を起動できる。

試しに隠れてもらったがターニャ自身が小さいこともあって蹲って頭を隠すと本当にどこにいるかわからなくなった。


純白のさらし

・・・白雪山羊の毛皮から作られたこのさらし、真っ白なこと以外特徴はない。が、さらしの内側、ひらたい胸『ドン!』

・・・つつましい胸部の部分にはポケットが縫われている。そのポケットの正体は四次元収納アイテムポーチで、そこにターニャの仕事道具やら今まで作った武器を仕舞っている。


____________________________________________________________


ターニャはスキルの補正のお陰でそこまで装備を必要としていない。どれくらい俺達と差があるのかというと、一番硬いのがターニャで、一番魔法耐性が高いのもターニャであるほどだ。


ターニャ最強説を唱えたい。

超近接戦しかできないのでその改善が今後の課題といえる。

矢を打たせてようとしたが地面に弓が引っかかるのでとっさの照準ができなかった。


庭先に出てみんなで動きを試していたが、エルサさんの爆発がうるさく、女将さんに怒られてしまった。仕方ないので食堂でご飯を食べて今日は解散することに。


旅の資金は用意した。キャラバンの出発日まで残り三日。

依頼をこなしつつ、新装備でずれた感覚を直し、それに合わせたパーティーの連携もしっかりと見直していこうとみんなで決めた。特にエルサさんの剣舞踊に合わせた動きができるようにならないと前衛の俺達が戦いずらくなり、エルサさんも自由な動きが取れず魔法一辺倒になってしまう。


三日間、みっちりと連携を強化していこう。


____________________________________________________________


依頼にいく前に今日は行くところがある。

パナム様を王都まで送り届けるために旅立ったダンさんとアリアさん。その二人が戻ってくるのが丁度今日なのだ。


なので、迎えと合わせて旅立つ挨拶をするため、正門まで来ている。


「お、エル、見えてきたぜ。ん?」


「あれ、ダンさんしかいない?」


遠くに見えた人影は一つ、馬に乗ったダンさんらしき人だけだった。

しばらくして正門までやってきたその人影はやはりダンさんで、俺とアルベルトさんを見つけると馬から下り、他に迎えに来ていた兵士に馬を預けるとこちらに向かって歩いてきた。


「ふむ、迎えとは殊勝な心掛けじゃな。装備を新調しておるが、ちゃんと修行はしていたんじゃろうな?お、アルベルトは久しいな。出発の時は会えなかったのだし、その前も長い間話をしていなかった。どうじゃ久しぶりに一杯やらんか?」


「おかえりなさい。憎まれ口ばかりだと介護してくれる人がいなくなりますよ。」


『カーン!』


「・・・ほう、よく防いだのう。」


「はは、ダンさんは随分エルと仲良くなったみたいですね。いきなりそんなじゃれあうなんて。」


「「じゃれてない(おらん)」」


同時に声を発し、俺とダンさんはお互い睨みあう。


「ぷっ、十分仲いいじゃないですか!」


『ドン』『ゴン』


俺は腹に拳を一発、ダンさんは頭に納刀状態の刀で一発。


「2人とも、そんな強く殴らなくて―いいじゃねーかー、くー、痛てぇ。」


「そんな強くしたつもりないですよ。」「それほど、強くしたつもりはないわ。」


「「む!?」」


「まったくダンさん、じゃれあいすぎて力加減忘れたんじゃないですか?エルお前もだぞ!」


「うるさい奴じゃ、夜、銀の熊亭でよいな、それではわしは行くぞ。」


「はい、そこでいいです。お帰りなさい。」


「ダン爺さんお話があるので歩きながら話しませんか?」


「ふむ、それではまた後でな。エル、聞いてやる、さっさとついてこいんか。」


くそ爺め、ぶっ飛ばす。


正門をくぐってから俺が旅立つことを話す。


「ほう、そうかそうか。わしの訓練から逃げ出すわけだな。やっとよわっちいのが消えてせいせいするわい。」


「はいはい、寂しいんですね。手合わせしてあげるので元気出し・・・」


『パーン!!!』


「調子乗りすぎじゃ。」


「すいません・・・。くそじじい(小声)」


「なんじゃ?」


「離れてしまうなんてかなしいなーーー!と言いました。」


「よし、達磨にしてほしいとな。まかせよ。」


「そんなことよりもアリアさんは?」


アリアさんのことが気になったので聞いてみると、パナム様の護衛として王都にとどまることになったらしい。

なんでもアリアさんのお母様がそう決めたそうで、アリアさんは本当は帰りたいとダンさんに漏らしていたが、逆らうこともせずその決定に従って王都に残った。


ダンさんによるとアリアさんのお母様は決めたことを曲げない性格で、アリアさんが騎士になることも最初は反対だったが、アリアさんのお願いを聞いたお父様が何とか説得して騎士としての道を許したそうだ。


そうした無理を通したという事情があって、あまりお母様の意向に逆らえないとアリアさんが言っていたとダンさんは語る。


「なんじゃ、おぬしアリアに合えぬことが悲しいのか?ふむ、発情期の猿は困ったもんじゃのう。」


「よし、今日こそは一太刀入れてその舌を切り取ってやります。」


「おうおう、怖い怖い、わしは怖くてちびってしまいそうじゃのう。」


お互いに軽く罵りあいながら、訓練所まで直行し、手合わせをしてからダンさんとは別れた。


もちろん、一太刀も浴びせることなく、一か月分の暴力に晒され負けた。くそが。


____________________________________________________________


痛む体を労わりながらギルドに向かった。あの爺、容赦なさすぎだろう。体中に青あざできるってもうただの虐待じゃないか。


ようやっとギルドに着くと、先に来ていた2人が酒場でつまみを食べながらこっちに手を振ってきた。


「すまん、ちょっといろいろあって遅れた。」


「んん、私達は大丈夫だけど、エルはそれ大丈夫なの?なにがあったらそんなにボロボロになれるの?」


「エルさん痛そうです。」


「ちょっとな、鬼に手合わせという名の案山子を任されてしまっただけだ。ターニャ回復薬もってない?」


2人に心配してもらうだけで気分が救われたようだ。朝からなんで爺にぼこぼこにされなきゃいけなかったんだ。この世は不思議なことであふれているな。


ひとしきり慰めて貰ってから掲示板を眺める。


すると眺め始めてからすぐ、ギルドのカウンター側が騒がしくなり、一人の職員が小走りで掲示板までやってきた。


そして一つの依頼が突然張り出され、俺はその内容に驚いた。

一緒に眺めている2人に目をやるとどちらもその依頼に目が釘付けで、まわりの冒険者もほぼすべてがその依頼を見ている。


・~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~・

|『推奨ランクE以上』                        |

|                                 |

|・ダンジョン相当の竪穴と地下空間を発見。             |

|・先遣隊により低層の脅威度は低いと判断。             |

|・探索し情報を提出してください。報酬は情報の内容次第。      |

|                                 |

|※注意※                             |

|・未発見の脅威を含めての依頼ですので、命の保証は一切ありません。 |

|・受付嬢からの助言もあまりできません、じっくりと考えてください。 |

|・そして受ける場合は慎重さを忘れないでください。         |

|                                 |

|場所や初層階の情報は依頼受注後となります。            |

|                                 |

・~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~・


「みんな、いこう。これこそ冒険者の醍醐味だと思わないか。」


「お宝、お宝があるに違いないわ!」


「なにか珍しい素材や鉱石があるかもしれないです。」



うん、三人とも言っていることはバラバラだが行くということは共通している。




よし、三日間、ダンジョンアタックと洒落込もうじゃないか。




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