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プロローグ(3)

「お〜っと、盛り上がってる所すまないねぇ、おじさん入るよ〜」


 いつからそこに居たのか、四十程の歳の男性が壁に寄りかかり葉巻をふかしていた。彼もまた体格が良いからか、イマイチ実年齢が分からない。


「げっ、ガイアさんいつからそこに」

「女の子泣かすなんざ、ジエールはまだ青二才だなぁ。テクが無いんだよ、テクが」


 妙に色気を持った男性は、葉巻を持たない方の手の指を厭らしく動かす。


「おかしらまでもいい加減にしてください。彼女は病人です」


 その後ろで一連の話を聞いていたであろう先生が、ため息とともに間を割って入った。


「じゃあ、ルナちゃんって呼ばせてもらうね。ルナちゃん、こちらは我々一団を率いているお頭、ガイアさんです。一見おふざけしてるように見えるけど、芯の強いしっかりとした大人だから安心してね」


 一団、率いる、お頭……次々とワードが出てきて、頭を整理するのに時間がかかる。


 そういえば、彼らは一体誰なんだろうか。

 血が繋がっている家族には見えないし、その風貌から修道院関係者でも無さそうだ。


「……失礼ですが、あなた方は……?」


 何となく、予想が着いてしまったが、私は一応尋ねてみた。


「良くぞ聞いてくれたねぇ〜、我々はここら一帯をアジトにしている山賊、“ウレアーズ団”さ。三日前、谷底に転げてたお前を見つけて、こうやって手当してやったって訳さ」


――山賊。それは貧困層や反国者、流浪の民や難民が山に集まって生活する集団。おもな原資は盗品の売買。つまりは山に居住する盗賊だ。


 私の顔が引きつったのを、ガイアは見過ごさなかった。


「その顔、さては元は貴族か何かか?」

「……お頭」

「はははは、冗談よ。まあでもあながち間違いでは無さそうだ。山賊に対して恐れ、或いは煩わしい感情を抱くのが平民さ。そして嫌悪感を抱いているのがお貴族様さ」


 ガイアはゲラゲラと豪快に笑うと、ベットの前に置かれた椅子に腰掛けた。


「まあ前世なんてどうでもいい。お前は既に三日前から俺らの仲間だ。仲良くやろうや」


 そう言ってガイアはゴツゴツとした手を私に向けてきた。


 まさか自分が山賊の一員になるなんて、思いもしなかったが、怪我をした上、行き場のない私を受け入れてくれるなんてこの上ない贅沢だ。


「よろしくお願いいたします、ガイアさん」


 私はその手をしっかりと握り返した。



 こうして、記憶を失った“私”ルナの、山賊としての人生がはじまったのだ。


「……若い子の手はいいねぇ。ハリがある。これからおじさんと良いこ」

「お頭」



プロローグ終 続く

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