スイカ割りは力加減が大切
海岸線にある、木製の橋の先端に立ったボス。
両腕を頭上に掲げ、太陽の光を遮るようなセクシーポーズで、前を開けたスイミングウェアをはためかせる。
「YO!SAY,夏が胸を刺激する、生足魅惑のマ〜メイド〜♪」
ボスが何やら聞き覚えのある歌詞を口ずさむと、それに合わせて打ち寄せた波が、ザバァンッ!とボスの背後で白い泡を立てた。
どうしてか分からないが、妙に扇情的で色気のある雰囲気が醸し出されている。
一体、"何レボリューション"なのだろうか(すっとぼけ)。
「何やってるんすか、ボス……」
「え?T.●.レボリューション」
一号君のツッコミに素面で答えるボスさん。
曰く、せっかく海に来たからやってみたかった、とのこと。
海に来てまずやる事がそれなのか……と思わないでもないが、ボスは満足そうなので良しとしよう。
ホクホク顔のボスと一号君は砂浜の方に引き返して行った。
本当にT.●.レボリューションをするためだけに、わざわざこの橋に来たらしい。
「ボスさん、もうちょっと右ですぅ!」
「あと少しっす!三歩くらい前………そう、そこっす!」
「目の前ですよボス!目の前!」
ウルフちゃん、八咫烏ちゃん、二号君からの指示を的確に受け取ったボスが木刀を天高く掲げ、一閃。
素晴らしいフォームで振り下ろされた木刀は、滑らかな動作でブルーシートに吸い込まれた。
硬い感触。
しかしそれは求めていた物ではなかった。
「あちゃ〜、外しちゃいましたね〜」
「え、マジで?絶対やったと思ったんだけどなぁ……」
目隠しを外したボスが目をしぱしぱさせながら、振り下ろした木刀の切っ先を見下ろす。
見事に置かれたスイカの右側に逸れていた。
「次はウルフちゃんの番だね」
「はい!頑張りますぅ!」
やる気は充分。
ボスから木刀を受け取ったウルフちゃんは、渡された布で目隠しをして颯爽と歩みを始めた。
「むむっ、こっちから匂いがしますねぇ」
「あの……ボス。ウルフ様がなんか、一人で正確な方向に進んでるんですけど……」
「スイカ割りでまさかの一人プレイ!?」
「あ〜……確かにウルフさん、嗅覚鋭いっすもんね……」
外野の野次を必要としない、まさかのソロプレイに一同から驚愕の声が上がる。
嗅覚頼りとは言え、美しいフォームで迷いなく進んでいる姿は、目隠しをしていないと言われても信じられるくらいに流麗だった。
「ウルフちゃん、そこそこ!」
「はいです!」
ボスの声援に合わせて、ウルフちゃんが大きく木刀を振りかぶる。
ブレる木刀。
そして。
────ドグシャアアッ!!!
聞いたことがないような破裂音が響き渡った。
宙を舞う木刀の切っ先。
血と見紛う程に真っ赤な何かが四方八方に激しく飛び散る。
「いや力加減!」
「スイカが跡形もなく……」
スイカの破片が顔面に直撃したボスが思わずツッコみ、同じく降り注いだ果汁のシャワーを浴びた二号君も青い顔でそう呟いた。
スコンッ、と折れた木刀の切っ先がボスの頭に当たって砂浜に落ちる。
「大惨事っすね……」
これには八咫烏ちゃんも苦笑いだ。
覗いてみると、ブルーシートの上は大量の果汁や飛散した果実などがぶちまけられていて、それはもう酷い有様だった。
スイカが跡形もなく粉々。
予めウルフちゃんのパワーを考えるべきだった。
「ボスさん!上手く割れてますか?」
「うんまぁ………割れてはいるかな……」
折れた木刀を片手に、大はしゃぎなウルフちゃん。
ボスは乾いた笑みでそう答えた。
・「YO!SAY,夏が胸を刺激する〜」……『HOT LIMIT/T.M.Revolution』より
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