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悪の秘密結社は今日も平和です!  作者: ぽんすけ
四章

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修行開始!




(やいば)の元で、己を見つめ直すための修行が始まった………のだが。



「ほれほれ、さっさと進まんかぁい!!」

「いてっ!?ちょ、刃さん!これ本当に修行と関係あるんですか!?」

「大ありも大ありよ。まずはそのへにょたれた精神から叩き直さんといけないからな。あと私のことは"師匠"と呼べぃ」



至極真面目な表情でそれっぽい理由を話したかと思えば、ユウキのケツを竹刀でぶっ叩き、とっとと進むよう促す刃さん。

決して熱血師匠面をしている訳ではなく、至って面倒臭そうな表情で急かしてくるので、ちょっと怖い。

改めて前を向き直ったユウキは、口を引き結びながらゴクリと生唾を飲み込んだ。

目の前には、ドドドドドッ!!と大きな音を立てて崖下に消えていく急流がある。

大きな岩に裂かれた水飛沫が白い泡となって撒き散らされ、ユウキの衣服を濡らしていく。

修行僧のような真っ白な法衣が既にずぶ濡れだ。

ご覧の通り、今こうしてユウキが立っているのは、勢いが凄まじい滝の上だった。

ユウキは改めて心の中で思った。

これ、本当に修行と関係あるのか……?と。

竹刀でぶっ叩かれつつさらに前に進むと、流れの勢いがより増して立っているのも難しい程になり、気を抜けば足を取られて流されてしまいそうだった。

しかしユウキがふらふらと進む中、後ろから付き添う刃はこれっぽっちもバランスを崩すことなく、平然と流れの中を進んでいる。

まるで彼女だけ穏やかな川辺を歩いているかのようだ。

チラリとその光景を横目に盗み見たユウキは、早速彼女との実力の差を痛感し驚かざるを得なかった。

だが刃が言うには……。



「こんなものは慣れだ、慣れ」



らしい。

別にこんなんで実力とか言われましても……みたいな戸惑いの表情である。

しかしユウキは聞いていない。

まるで「この人に教われば俺だって……!」みたいな、何か確信したかのような仕草で頷き、拳を握って何らかの決意を固めている。

ある意味、最近では一番かつてのユウキらしい言動だった。



「師匠!僕、頑張ります!絶対に答えを見つけ出して、本当の"ヒーロー"になってみせます!」

「お、おう……?」



肝心の師匠は戸惑い気味だ。

何かよく分からないうちに謎の決心を固め、謎のテンションの高さでよく分からない目標を掲げている。

なんだコイツ……みたいな視線がお師匠様から注がれる。

一応事前にユウキの"悩み事"について、本人の口から詳細な話は聞かされている。

その原因も成長に必要な変化も、既に刃は察しがついていた。

だからこそ、このようなご都合主義全開の解釈と言動が垂れ流されることは覚悟していたのだが、まさかここまで話を聞かず突っ走るタイプだったとは……。

さすがの刃さんとしても予想外だったらしい。

珍しく……というかおそらく初めて、「こいつ弟子に取ったの失敗だったかも……」と過去の自分の行いを悔いた。

史上初だ。

刃に現実から目を背けさせた男は。

ある意味では偉業とも言えるだろう。

刃としては、是非とも遠慮願いたいところだが。



「仮にどれだけ時間がかかったとしても───!」

「おっと、テガスベッターー」

「え゛っ」



師匠、渾身のヤクザキック。

ウザったいキラキラを撒き散らしていたユウキの表情が固まった。

空中に投げ出されて程なくして、万有引力に体を引かれ自由落下が始まる。

グングンと迫るのは、激しい水飛沫を撒き散らす滝壺だ。



「〜〜〜〜〜ッッ!!!??」



ユウキの声にならない悲鳴が下へ下へと引き伸ばされていく。

しばらくして、ドボォンッ!!という音が遠くから聞こえてきた。








「剣術を学べ」



刃からそう言われた。

幼少期から剣道を習っていたユウキは、その時の経験をベースに今までは戦っていた。

しかし聖剣を扱うに当たっては剣道の知識だけでは不十分。

よって、本格的な剣術を体に叩き込む事が容易な戦闘力向上に繋がるのだ。

もちろん本命は剣術を通して豊かな精神(笑)を育み、ご都合解釈から少しでも脱却させることなのだが……。



「はっ!やっ!なるほど、ここをこうすれば……」



ここでユウキの無駄に恵まれた才能が仇になった。

彼の学習力は半端じゃなく、刃が教えたことをスポンジのように瞬く間に吸収。

凄まじい勢いで剣術の腕を上げて行った。

その応用力を日々の思考でも発揮しろよ……と思った刃さん。

結局、純粋に戦闘力は強化されつつあるものの、心持ちは何一つ変わる様子が見られなかった。








ある程度、剣術の修行が進むと、次第に模擬戦が組み込まれるようになった。



「うわっ!?」



ユウキの持っていた木刀が弾き飛ばされる。

クルクルと宙を舞い、背の高い木の枝にぶつかって不規則な動きで地面に落ちた。



「踏み込みが甘い。それと、力任せになっているぞ。もう少し力を抜け」



()()()()の柄で肩をポンポン叩きながら、刃は呆れたように尻餅をついたユウキを見下ろす。

いくら学ぶ力があっても、実践でそれを活かせるかはまた別の話だ。

そして実践での立ち回りを学び上達させるためには、ひたすらに実践をこなすしかない。

ユウキにはぶっ倒れてる暇など無いのだ。



「もう一度だ。立て」



刃の情け容赦ない言葉に、ユウキは片手を地面に付きながらも必死の思いで応える。

強くなり、今度こそ自分が"正義の味方"になるために。

ハグトーレのような存在を、今度こそは自分が否定出来るようになるために。





最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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