秘密結社の側近と言えばねぇ……!
──都内某所。
人気の無い森林地帯の一角に、悪の秘密結社Xのアジトはひっそりと鎮座していた。
外装は見るからに打ち捨てられたボロボロの廃墟。
しかし正面玄関から中へ入り、台所の横にある襖で区切られた小さな部屋にて、敷かれた畳を特定の順番で少し強めに踏む。
するとあら不思議。
ガコンッ!と機械仕掛けの音がしたかと思えば、部屋が丸ごと巨大エレベーターと化し、淀みない一定のスピードで地下へと降下を始めた。
しばらく待てば、そこはもうアジトの内部である。
ちなみにわざわざ地下にアジトを設けたのは、完全にボスの趣味だ。
世界征服の拠点となるこの秘密基地には、住居やトレーニングルーム、実験施設などが複合されており、非常時にはこの場所それ自体が避難シェルターになるという優れもの。
噂によると、ボタン一つで巨大ロボにも変形するらしいが……冗談だと信じたい。
「あっ、イリスさんおはようございますっす!」
「おはようございます。……トレーニングですか?」
「はいっす!次こそは、"ブラストなんちゃら"ってヒーローにも勝ってみせるっす!」
しれっと名前を忘れられているブラストソルジャー君に涙を禁じ得ない。
……とまぁそれはさておき、ここでは八咫烏ちゃんがすれ違った、"イリスさん"なる女性についてご説明しよう。
是非ともご説明させてください、ええ。
……こほん。
彼女は、秘密結社Xのボスの側近──つまり、実質的なNo.2を務めるお方なのである。
溶けるように煌めくサラサラな銀髪に、氷のような蒼瞳はデフォルトでジト目。
女性用に仕立て直された黒のロングコートは実はボスからのお下がりであり、誕生日プレゼントで貰ったXベルトとXネクタイと共に、何年も愛用しているとか。
ビジネスパンツ&ワイシャツが良く似合うクール系美人、それがイリスさんだ。
さて、そんな彼女も八咫烏ちゃんやボスさん同様、特殊な能力を持っているのだが……。
「失礼します、ボス」
コンコンッ、とノックした扉には、"ボスのお部屋"とまるで威厳もへったくれも無い手書きの看板がぶら下がっていた。
いつも通り返事を待たずに開けると、そこには──。
「いやぁ………今日も平和だなぁ……」
完全にだらけきったボスが居た。
フィギュアやグッズが飾られた横長のデスクに体を預け、まるでスライムのように溶けきっている。
無機質な仮面がふんわりと微笑んでいるように見えるのも錯覚ではあるまい。
「………」
イリスさん、無言でボスに歩み寄る。
「あ、イリスちゃん。どったの?」
のっそりと顔だけ向けたボスに、イリスは無言のまま両手を差し出し。
「──アバッババババババッ!!?」
直後、青い稲妻が迸った。
ボスはビクンッビクンッと痙攣しながら崩れ落ちた。
焦げ臭い匂いと、くすんだ色の煙が僅かに立ち上る。
イリスさん、小さなため息を一つ。
「……平和ならば、世界征服の一つにでも着手すれば良いのでは?」
「すんません……」
なんて残念なボスなのだろう。
背後にデカデカと貼り付けた『世界征服!!』の大弾幕が泣いている。
「失礼しま〜す……今日ちょっと焦げが強めですね」
「でしょうね……」
「心当たりあるんすか」
「むしろ心当たりしかない」
そこ胸張って良いところちゃう、と心の中で一号君。
しかしボスの背後で、バチバチッと青いスパークを発生させているイリスさんの冷ややかな瞳があるので、口には出さない。
「えーっと……荷物、ここ置いときますね」
こういう時は我関せずが一番だ。
一号は荷物をささっとデスクの上に置き、踵を返す。
ボスの「ぎゃああっ!?」という悲鳴を背に一号は部屋を後にした。
────オマケ────
黒焦げのクッキー状態で平然とアジト内を歩き回っていたボスに、研究者さんが一言。
「君、本当にゾンビみたいだよねぇ」
「失敬な」
「……ゾンビの方がまだ活発では?」
「イリスさん!?」
イリスさんのツッコミがボスの胸に深く突き刺さる。
通りすがりの八咫烏ちゃんと二号君は「「否定出来ねぇ(っす)……」」と思いましたとさ。
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3話は本日18時頃に投稿予定です!
明日からは1日1話ずつ、続く限り毎日投稿を心掛けようと考えております……出来るかな……頑張ります……
え〜、では!これからも我が拙作をよろしくお願いします!!




