っぱ狐耳お姉さんよ②
九尾と幻狐に挟まれ、両腕が幸せな感触に包まれた状態での素晴らしいデートが始まった。
以下、その様子をダイジェストでどうぞ。
「ほぅれ、あ〜ん♡じゃ」
「くすくす。主さん、頬にタレが……動かないでおくんなんし?」
桜咲き誇る野外のベンチで、九尾から団子をあ〜んしてもらったり、みたらしのタレが頬についていたらしく、取ろうとしたところ幻狐が器用に舌で舐め取ってくれたり。
ボスはこの時「明日ワイ死ぬんか?」と思ったらしい。
ちなみに城下町には九尾や幻狐の正体を知る者も大勢いる訳で、事情を知らぬ彼らからは「何者だよこいつ……」という畏怖の視線が集まっていた。
他には、専用のブラッシング教室にてブラシなどの器具をお借りして、二人のブラッシングをやってみたり。
「くっ、ふぅ〜……♡そ、そこは弱いんじゃ………優しくしてたもぅ……」
「んっ……主さん、大胆でありんすねぇ♡ふふっ♡もっと深く、強くしてくれて良いのでありんすよ……?」
ただのブラッシングのはずが、すぅ〜……と尻尾をブラシで梳いたり、ケモ耳の毛並みを整えたりする度に、何だか誤解を生みそうで仕方がない声を発するお二人。
ボスは鋼の精神で聴覚をシャットダウンし何とか耐え凌いだ。
しかし、周囲から真っ昼間に野外プレイかよ……みたいな視線を頂戴することになった。
後にそれを知ったボスは(精神的に)死んだ。
また適当にそこら辺をブラブラ歩いている間に景色の良い場所に誘われ、そこで最近の出来事を根掘り葉掘り聞かれた。
その中で特に二人の食い付きが凄かったのが、例の温泉旅行の話だ。
九尾は
「混浴したのか、妾以外のヤツと……」
と衝撃を受け、幻狐からは
「……そういえば姉さん、城に新しく増築した露天風呂がありんしたよね?」
と不穏な言葉を呟いた。
二人の目の色が変わったのもその瞬間である。
あれはそう………獲物を捉えた肉食獣の瞳だ。
必死の抵抗も虚しく、ボスは九尾に担がれ城内にある露天風呂に連行された。
「ほれほれ、さっさと脱がんかい」
何故か共同の脱衣場で裸に剥かれ、湯気の立ち込める石畳の風呂場にポイ捨て。
何とか仮面と腰に巻いたタオルだけは守りきったボスが乙女のようにすすり泣く。
普通逆じゃね?なんてツッコミは肉食獣と化した彼女らには通用しない。
今彼女らの頭の中にあるのは、いかにしてこのオスを美味しくいただくかのみである。
ボス、貞操のピンチ。
「さぁファントム!今宵は、咲き誇る桜が乱れ散る程に激しく交わろうぞ!」
「うおおおっ!?せめて前は隠せよっ!」
風情を感じさせる露天風呂の脇に咲いた桜も、そんな表現のされ方をして不本意に違いない。
無粋だと言わんばかりに一糸纏わぬ産まれたての姿で現れた九尾に、湯気さんガードが意味を無くす寸前でタオルを投げつけたボス。
神が創った最高傑作と言われても、疑いなく信じてしまいそうなほど美しくシミ一つない肉体を惜しげも無く晒し、九尾はニヤリと妖艶な笑みを浮かべる。
「これから熱い夜を過ごす二人……いや、三人には不要であろう。のぅ?」
「ええ、全く……♡」
遅れてやってきた幻狐もまた、堂々と防御ゼロだった。
九尾よりは控えめなスタイルだがそれでも化け物みたいなナイスボディで、引き締まった健康的なくびれや、首筋に張り付いた艶めかしい髪の毛がボスの理性を狂わせる。
畳んであったタオルをペシッと投げつけるボス。
せめてもの抵抗だ。
むしろタオルでお気持ち程度隠した方がエロスを感じるかもしれないが、全裸の生々しいエロさには勝るまい。
ジリジリと迫る二人から逃げるべく慌てて後ずさるボスだが、本能的な危機感から慌てるあまり、周りを見ていなかったことが災いした。
ズルッと滑って露天風呂にダイブ。
その拍子に仮面が外れてしまい、水も滴るいい男状態でザバァッ!と起き上がる。
「アッ」
久々にお披露目されたボスの素顔。
狼狽した深紅の瞳が揺れるが、腰のタオルが落ちないよう掴んでいる間にぷかぷか浮いた仮面はどこぞへと流されていく。
九尾と幻狐が完全に獣と化した。
「アッ、ちょ、いやぁあああああっ!!」
その夜、城内に乙女のようなボスの悲鳴が響き渡ったという。
ちなみに貞操は何とか守り抜いたそうだ。
───で、二匹の獣から逃げるようにして露天風呂を上がったボス。
物理的コミュニケーションによってかろうじて理性を取り戻したらしい九尾と幻狐に誘われて、二人の部屋に遊びに行くことになった。
………しかしここでまたもや問題発生。
先述したように幻狐に独占する意図はなく、またそれを汲んだ九尾にも「幻狐なら……」という思考の元、独占欲は割と影を潜めていた。
のだが。
やはり乙女として、好きな人は自分の部屋に招き入れたい訳で。
静かな戦争が始まってしまった。
ボスがいくら順番に行くのは?と提案しても聞き入れてくれなかった。
もちろん直接対決では九尾が圧倒的に有利……というか勝ち確なので、その決め方は幻狐が断固拒否。
そこで、じゃあ当の本人に決めてもらおう!ということになった。
そして始まったのが、蚊帳の外だったボスを挟んでの囁きASMR対決である。
───ここで冒頭に戻るのであります。
「くふふっ♡」
「くすくす」
耳元で勢いの違う息を吹きかけられ、ボスは「あうあう……」と、もはや言語機能すら危うくなったご様子。
爆ぜろ。
「……はむっ」
「ッ!!?!?!!??」
その様子が狂わしいほどに愛おしかったようで、幻狐が思わず彼の耳を甘噛み。
舌で弄んでしまった。
それはボスにとどめを刺すに充分すぎる一撃だった。
ボス、宇宙猫のような顔面でしばらく硬直した後、安らかに意識を手放した。
◇◆◇◆◇◆
ボスが再び意識を取り戻した頃には、世界はすっかり夜の闇に包まれていた。
……まぁまず寝起きのボスを包んでいた闇の正体は、柔らかく弾力のある黄金の果実だったが。
どうやらボスが起きるまで代わる代わるで膝枕をしてくれていたらしい。
ボスは初めて「天井が見えねぇ……」を実際に体験したのだ。
貴重な経験をさせてくれたお二人を拝み倒しました。
もちろん当然のこと。
そして泊まっていけと強引に誘う二人から脱兎のごとく逃げ出し、秘密結社Xのアジトに帰ってこれたのは、およそ夜十時を過ぎた頃だった。
いくら小狐達からある程度の事情を聞いているだろうとは言え……帰るのが怖くて仕方がないボスさん。
いつまでも入口に突っ立っていてもどうにもならないので、迷いを捨て、覚悟を決め、隠しエレベーターに乗り込む。
しかしボスの不安とは裏腹にアジトのある階層にたどり着いても何事も無く、すっかり安心したボスは警戒心を解いて会議室に繋がる扉を開いた。
「………ボス。今夜は、随分とお楽しみでしたね?」
「すんませんっしたぁ!!」
そこに居たのは、いつものクールフェイスながら、目の奥に怒りの炎をメラメラと燃やしたイリスさんであった。
デフォルトのジト目が、スライディング土下座したボスの後頭部にじっと突き刺さる。
まるで風俗帰りの旦那に怒りを露にする嫁みたいな構図だ。
多くは喋らず、射殺さんばかりの視線で見つめられるのは、中々クるものがある。
お楽しみしてたのが全て見抜かれているらしい。
お怒りなイリスさんの機嫌が治るまで、ボスはしばらくかかりっきりでご機嫌を取ることになった。
本当はボスの腰に巻いてたタオルを剥ぎ取る展開も考えたんですけど、ちょっとあんまりにも直接的すぎるか……ってことで没になりました。
・「混浴したのか、妾以外のやつと」……恋愛ドラマアプリ『今夜アナタと眠りたい』より、「結婚したのか、俺以外のやつと……」
・「迷いを捨て、覚悟を決め」……『仮面ライダー鎧武』より
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