↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪の秘密結社は今日も平和です!  作者: ぽんすけ
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/149

新人ヴィランの小雪ちゃん!②




イナズマの体からパリッ!と紫色の雷が迸る。

───"雷纏(らいてん)"。

稲妻による身体強化の技である。

腰に装備していた刀を引き抜き、イナズマはボクサーのような軽いステップを踏む。

何度目かの、足裏が地面に触れた瞬間。

突如としてイナズマの姿が掻き消えた。

その場に残っていたのは、踏み砕かれたコンクリートの痕と淡くスパークする紫雷の余韻。

約数倍に跳ね上がったスペックにものを言わせた高速移動、と。



「!」



イリスが咄嗟に作り出し首元をガードした砂鉄刀と、()()が衝突しガギィインッ!と甲高い音を響かせた。

暴力的なスペックでの、超高速ヒットアンドアウェイ。

イナズマの基本戦闘スタイルだ。

シンプルだが、実際にやられる側になると、果てしないほど厄介なことこの上ない。



「"紫電一閃"」



瞬時に刻まれる、複数の斬撃。

速すぎて、全てが不意打ちに近い神速の攻撃の嵐だ。



「はわっ、え!?全然見えないです〜!?」



超次元な戦闘すぎて、小雪ちゃん頭はショートしてしまったらしい。

頭から煙を上げながら目を回している。



「凄い……」



パンク君も呆然とそう呟いた。

一撃捌いたかと思えば、もう既に別の場所に薄い殺気の線が迫っている。

姿を追おうにも目視はほぼ不可能、雷の軌跡は認識する頃には意味を成さず、殺気すらも当てにすると痛い目を見る。

長年の経験と雷による身体能力の向上が無ければ、イリスとて受け切れなかったかもしれない。

立て続けに響いていた金属同士がぶつかり合う耳障りな音が、一拍置いて止む。

敏感に気配を察知したイリスが、伸縮自在な砂鉄刀を振るって鞭のようにしなる攻撃を繰り出すが、やはり当たらない。



「遅い」



そのまま駆け抜けるかのような滑らかな動きで砂鉄刀を切り刻み、イナズマは簡単にイリスの懐に踏み込んだ。

刀が横薙ぎされるが、今度こそイリスはそれを捉えていた。

紫と青の雷が衝突し、バリバリバリッ!!と凄まじいスパークを見せる。

お互いに弾かれてイリスは後退り、イナズマは片手バク転で体勢を立て直した。



「……やるな」



直後、パサッ……とイナズマの額当てが外れた。

衝突の際に、イリスが放った砂鉄の波が布に掠っていたらしい。

一方。



「当然、特別製ですか……」



イリスは脇腹に刺さったクナイを躊躇(ためらい)なく引き抜く。

こちらもまた、衝突の際にイナズマが放っていた一撃を食らったのだ。

このクナイは雷に引き寄せられない特注品。

よって、イリスが展開した電磁シールドと雷の物理的なシールド両方を貫通し、見事に本体に命中した。

イリスのワイシャツがじわりと真っ赤な血を吸収する。

浅いとは言え脇腹だ。

長期戦は不味いだろう。



「"紫電一閃"」



再びイナズマの姿が掻き消え、紫の雷を帯びた斬撃の嵐がイリスに降り注ぐ。

傷は痛むが、イリスの冷静な表情は決して崩れない。

的確な判断で砂鉄の波を操り、イナズマの攻撃を全て捌く。

パリッ!と稲妻が駆け抜ける音がした。

そのタイミングで、ついにイリスが動く。



「むっ」



砂鉄の波で刀の軌道を逸らしつつ、体を傾けて紙一重の回避。

ほぼ同時に雷を纏わせた強烈な回し蹴りをイナズマの胴体にぶち込んだ。

激しく蹴り飛ばされるイナズマ。



「重い。良い蹴りだ」

「……面倒ですね」



神速の反射神経でギリギリガードが間に合ったらしい。

それでもビリビリと痺れる腕に、イナズマは表情を変えこそしないものの驚いている様子だ。

ロングコートの裾を(ひるがえ)し、残心から体勢を戻したイリスは僅かに眉を顰めた。

ほぼ同じ能力者。

しかし繊細な操作に関しては向こうの方が得意と見える。

このまま得意で攻められると面倒だ……。



「………仕方ありません。たまには、羽を伸ばしますか」



イリスはデフォルトの冷たいジト目のまま、抑えていた雷を体外に放出した。

バリバリバリッ!!と凄まじい勢いで青の雷が膨れ上がり、天変地異も真っ青な光景を市街地の外れに顕現させる。



「これは……」



これには、さすがのイナズマも目を見開いた。

これほど大規模の雷を身に纏うことは、イナズマには不可能である。

もちろん不得意な分野ということもあるが、それ以上に純粋な総合値として、イナズマはこれほどの雷を生成することは出来ない。

そう断言出来る。



「な、はっ……?」



もはや異次元すぎて腰を抜かすパンク君。

一応何度か見る機会があったとは言え、三号君も同じ気持ちである。

そんなドン引きの観戦者達はさておき、スパークの余波がコンクリートを削りながら迫ってきたため、イナズマは戦慄しながらも"紫電一閃"で避け、斬り込む。

が、しかし。



「──っ、なんて事だ……!」



神速の一閃をお見舞いするつもりのイナズマであったが、よもや間合いにすら入れないとは。

膨大な量の雷が、物理的な障壁となってイナズマの侵入を拒んでいるのだ。

紫の雷を迸らせ押し合いを試みるが、凄まじい青雷の圧は多少凹む程度でビクともしない。

これが"銀雷"の力の一端。



「面白い……」



再び、イナズマの姿が掻き消えた。

彼女の存在を感じることが出来るのは、時たま粉砕されるコンクリートや外壁、それと迸る紫の雷くらいだ。



「"紫電一閃"───」



どこからともなくイナズマの声が聞こえる。

加速は上限を知らず、ついにはイリスでさえ知覚・察知が難しいレベルにまで上昇した。



「───"霹靂(へきれき)"」



もはや音すら置き去りにする勢いだ。

"斬られた"という事実の後、遅れて音が鼓膜を打ち、そして初めて"斬られた"事を自覚。

左腕を鋭い痛みが(つんざ)く。

漆黒のロングコートとワイシャツがパックリと裂け、肌の痛々しい斬り傷がチラリと垣間見えた。

雷を帯びた斬撃による痛みは想像を絶する。

いくら耐性のあるイリスと言えど、イナズマほどの実力者が相手ならば無効化は出来まい。

神経を直接ヤスリで削られているかのような痛みが、斬られた二の腕の傷を中心に広がり、思わず脂汗が滲む。

腕を生温かい液体が伝い、袖口を抜けて指先から地面に滴る。

傷が深かったためかなりの勢いだ。

派手な出血演出こそ無いが深手も深手。

本来ならば痛みに悶え呼吸が浅くなるものだが、イリスは僅かに下を向いたまま微動だにしなかった。

彼女の中では今、どれだけ激しい痛みも、出血による目眩も感じさせぬほどの感情が、ふつふつと湧き上がっていた。

それは、"怒り"だ。



「………」



イリスは静かに膨大な雷を消失させた。

撤退か?と一瞬考えたイナズマだったが、その思考は肩越しに振り返ったイリスの瞳を見て即座に否定される。

絶対零度の視線。

そこに込められた感情は、あまりにも冷たすぎる瞳に閉ざされて一切が見えてこない。

しかし、これだけは確実に言える。

彼女は、決して戦闘を終わりにする気はない。

無言のまま人差し指でクイクイッと招く仕草がその証拠だ。

「かかってこい」と、イリスは挑発した。

……いや、挑発ですらなかったのかもしれない。



「……よかろう」



出せうる最高速度で刀を振るう、"紫電一閃・霹靂"。

イナズマの奥義の一つであるが、今のイリスにはそれすら打ち破ってみせるという凄みがあった。

姿を消したイナズマはすぐさま最高速度に達し、衝撃波を撒き散らしながら狙いを定める。



「"紫電一閃・霹れ───」



その時。

神速で跳躍する中、イナズマは確かに目にした。

蒼き雷の軌跡を描いた瞳が、しっかりと最高速度の自分を捉えて離さない様子を。

───青い雷が閃いた。

直後、グンッ!と足が重くなり著しく速度が低下する。



「………化け物め……!」



思わずと言った様子でイナズマは呟く。

初めて誰が見ても分かるほど表情が変わった。

なんと、技が発動するよりもさらに前に、イリスの手が確かにイナズマの足首を掴んでいたのだ。

雷で強化されたスペックで無理やり足首を握り締め、思いっきり前方に投擲。

凄まじい横圧がイナズマの体を襲う。



「〜〜〜ッ!?」



声すら上げられない。

細い体のどこにこんな力が?と疑いたくなるようなパワーで放り投げられ、一度地面をバウンドしたイナズマは再び戦慄する羽目になる。

体勢を立て直す。

その動作に入る暇もなく、神速で追い付いていたイリス。

イナズマの腹に向けた手のひらには、凄まじい規模の雷がギュッと凝縮されて今にも爆発しそうだった。

思考するよりも早くイナズマが防御体勢を取った直後、それは解き放たれた。





「───"蒼華万雷(そうかばんらい)"」





世界を蒼い稲妻が満たした。

そう錯覚するほどの雷が一気に膨張し、とてつもない殺意の嵐を吹き荒らす。

余波だけで廃墟は粉々だ。



「うおおおおっ!?」

「はきゅう!」



凄まじいエネルギーが荒れ狂い、飛び散った瓦礫が小雪ちゃんを庇った三号君の顔面にビシビシと命中する。

パンク君はどこかへ吹っ飛んでしまった。

建物の崩壊や余波の消失までしばらく時間がかかった。

そして完全に大怪獣バトルの跡地みたいな状態になった現場で、積み重なっていた大きな瓦礫が数度の揺れの後、吹き飛ばされる。



「やれやれ……ここが廃墟の集合地じゃなかったら、不味かったな……。……いや、それも計算の範囲内か?」



服に付いた土埃をパンパンと払いながら瓦礫の下から脱出したのは、イナズマであった。

腹部の装備は強固な特注くさりかたびらごと粉砕されており、ガードの際に左右の小手や刀、クナイなども全て跡形もなく消失していた。

実は内蔵もそこそこやられており、瓦礫に埋まっている間に吐血もした。

外傷としては稲妻によって裂けた傷などが挙げられるが、雷で焼かれて強制的に止血されたので、重傷にまでは至っていなかった。

もちろんそれを踏まえた上で、装備は全ロストでダメージも甚大。

事実上の敗北のようなものだろう。



「……ほら、しっかりしろ」



イナズマはてくてくと歩き、瓦礫(ガレキ)に突き刺さっていた足を引き抜く。

先程の余波で吹き飛ばされていたパンク君だ。

意識はしっかりとあるようだが、あまりにも桁が違いすぎる戦闘にすっかり萎縮してしまったようで、青い顔で今にも白目を剥きそうだった。

面倒なので、さっさと担いでその場を後にするイナズマ。



「噂以上の実力だった。次は、周囲の被害など気にしない場所で戦いたいものだ」



微笑みながらそう言い残し、イナズマは砂煙に紛れて撤退した。








一方。

見事に小雪ちゃんを守りきった三号君の元にはイリスが帰ってきていた。



「……すみません、つい」



思いっきり石の(つぶて)が顔面にめり込んだ三号君を前に、さすがに罪悪感を感じたのかイリスさん。

ロングコートのネック部分で口元を隠しながら恥ずかしそうに謝罪する。



「お、俺は大丈夫ですよ………それより、イナズマは……?」

「おそらく撤退しました。もう居ないでしょう」



パンパンッと砂埃を払いつつ、イリスは淡々とそう口にする。

未だにご機嫌斜めなご様子だ。

三号君がガチギレしたイリスさんを見るのは三回目だった。

しかも今日はいつにも増して不機嫌なように見えた。

なので、理由を聞いてみたところ。



「………ボスに頂いたロングコートを、傷付けられたので……」



とそっぽを向きながら答えた。

頬が僅かに紅潮している。

アオハルかよ……と三号君は思いました。

その後、目を回して気絶して小雪ちゃんをおんぶして、ボロボロな二人はせっせと秘密結社のアジトに引き返した。






────オマケ───




お下がりとは言え、ボスからプレゼントされたロングコートを傷付けられたことに対して、イリスがブチ切れした件について、三号君から伝えられたボスは。



「可愛いかよ」



とイリスさんの頭を撫でくりまわした。

で、羞恥心がオーバーフローしたイリスさんに



「〜〜〜ッ!!」



と声にならない悲鳴を上げられながら、特大の雷でしこたま「あばばばばばっ!?」させられましたとさ。





ブチ切れイリスさんは超怖いです。ボスでもスライディング土下座するくらい超怖いです。物理的に雷を落としてくるタイプのオカンです。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

誤字脱字報告、感想等やブクマ、評価など、ぜひともよろしくお願いします!!(*^^*)









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。