第220話:足の向くまま気の向くままに
核石を取ってきてから、しばらくの時が過ぎた。
フェルシアさんも頑張ってはいるが、結界というほとんど扱ったことがない技術であることに加え、それに使用する素材が極めて希少となれば、慎重にもなるだろう。
結界の作成方法には私も興味があったので、教えてもらいながら一緒に作業をすることにした。これで少しはプレッシャーが減ってくれればいいのだが……
こっそりウルに助言をもらいながら、より強力な結界が作れないものかとフェルシアさんと結界に改良を施していった。あーでもないこーでもないと、話し合いをしながら試行錯誤するのはとても楽しかった。その甲斐あって、かなり強力な結界を完成させることができた。
大雑把に言うと、小さな核石で結界の起動や維持を司り、大きめの核石は結界自体の強度にのみ全ての力を注ぎ込むようにしたのだ。これをパソコンに例えると、Cドライブにシステム関係を詰め込んで、Dドライブで全てのデータを管理するようなものである。
こうすることで、もし結界の強度を超える攻撃で突破されたとしても、結界の核となる部分だけは無傷で残るようになっている。まぁ、強度はウルの折り紙付きだし大丈夫だろうが、念のために大きめの核石をもう1個渡しておいた。
信じられないものを見たと言わんばかりの表情をした後で、呆れられたのは言うまでもない……
実はあと10個残ってるんだが、それは内緒にしておいた。その内、何かで使うかもしれないし、ここではもう必要ないだろうからね。決して変な目で見られたくなかったわけではない。
そんなわけで、遂に結界も完成し、この拠点は知覚も侵入もできないほぼ無敵状態となった。食材も豊富で生産量も十分、畜産も既に軌道に乗っているし、家もより住みやすいように手を加えた。これで2人が暮らしていく上で必要なものは揃っただろう。
これで、安心して長期の旅に出られるようになったのだ。
いやー……ほんと、ここまで長かったなー……
この世界に来てから、約1年……本当に、いろんなことがあった。うん。思い返すとほんとに1年か?と首を傾げてしまうほどに、いろいろと濃すぎる出来事がこれでもかと大量に脳裏に浮かぶ。思い返せば返すほど、女神に引っ掻き回された1年だったなぁ……
初期状態でチートだったのに、追加に次ぐ追加で、もうわけわからん戦闘力になっちゃったしな……とはいえ、戦闘も生産も大体にことはできるようになったし、初期の目標のひとつである”できないことをなくす”ことに関しては、かなり達成できたのではなかろうか?
今後はフィアたちを育てつつ、人のいない鉱山か海を探して、戦艦を造る準備に励むことになるだろう。絶海の孤島を目指すのはまだまだ先になりそうだが、急ぐ必要はないのだから、ゆっくりまったり進んでいこう。
結局、MMORPGの世界だというのに、全くプレイヤーと交流してないな……遠目に見かけたことが数回あるだけで、会話どころか接近したこともないという……
ゲームとして見るなら交流してみたくはあるのだが、如何せん私にとっては現実なので、逃げ道がない……バカ共はかなり駆逐されてるっぽいんだけど、今はどうなっているのやら……そのうちにだが、一度くらい隠密状態で見に行ってみるのもいいかもしれんなー。
関わるかどうかは、その時になってから決めてもいいだろう。相変わらず面倒くさそうだったら、そのまま逃げればいいだけだしね。
さてと……それじゃあ、そろそろ旅立つとしますかね。
「それではルリ、そしてフェルシアさん。今度はかなり時間が掛かると思いますが、ここの維持管理をお願いしますね」
「承知致しました。後のことはお任せください」
「こちらのことは気になさらず、思う存分羽を伸ばして来て下され」
「ええ、そうさせてもらいます。2人も身体には気を付けて、元気でいてください。それでは、いってきます」
「「いってらっしゃいませ」」
2人に見送られ、拠点を後にする。
随分と時間が掛かってしまったが、これで死なせるわけにはいかない従者を切り離すことができた。おまけに温泉付きの家や新鮮で豊富な食材も手に入れた。その過程で得たものもたくさんあった。
冒険を始めるにあたって、必要だと思うものは大体手に入れたし、邪魔になると思ったものは隔離した。準備は万端。大分遅くなってしまったが、ここから冒険を始めよう。
「さて……まずは、どちらに行こうか……まぁいいか、適当に足の向くまま気の向くままに進んでみようか。それじゃあ、出発!」
私の望む、あらゆる煩わしさから解放された理想のまったり環境を目指して!
今回で一度、完結とさせていただきます。
まだまだ書きたいエピソードはあるのですが、作者の力量不足により上手く話を繋げられる自信がないため、ここで一度筆を置こうと決断しました。
そちらのエピソードもいずれ書こうと思っていますが、それが続編となるか、新しい物語になるかもわかりません。書く時期も今のところは未定ですが、ある程度書き溜めてからになると思うので、結構時間が掛かると思われます。
この話を、一旦とはいえ完結まで書き続けてこられたのは、日々、皆さんが読み続けてくださったおかげです。
初作品故に拙い部分も多々あったでしょうが、見切ることなく読み続けてくださった皆様には感謝しかありません。この話が、僅かでも読者の方々に満足感を与えられたのなら、幸いです。
これまでのご愛読、誠にありがとうございました。




