第219話:結界の作成依頼
「ただいま戻りました」
「おかえりなさいませ、主様」
「先にお風呂に入ってひと息つきたいので、1時間後くらいにフェルシアさんも呼んでリビングに来てください」
「承知致しました」
ルリにそう頼むと、露天風呂で手足を伸ばしてゆったりと浸かる。この身体はほとんど疲労しないけど、それでもこうして温泉に浸かると、疲れがお湯に溶け出していくような気がして、非常に気持ちがいいのだ。
十分に温泉を堪能してからリビングに向かうと、そこには既にルリとフェルシアさんが揃っていた。それじゃあ、いよいよ結界に取り掛かりますかねー。
「お待たせしました。核石は無事入手することができたので、これで結界が作れると思います」
「おお、それは何よりでございます。まさか、これほど早く手に入れられるとは……」
「よくわからないけど(わかりたくないけど)非常に運が良かったらしくて、早々に複数手に入ったので、もう十分だろうと戻ってきました」
「複数?あの滅多なことではお目に掛かれぬ核石を、この短期間でいくつも手に入れたというのですかな?」
まぁ、そういう反応になるよねー……フェルシアさんが驚くのも無理はない。
ただでさえ、核石を持っているだろう大型の魔物を探し出すのが大変なのに、その上さらにドロップ率が極稀と言われているのだ。1つ手に入れるだけでも、相当な難易度なのは想像に難くない。ないのだが……魔物はウルが選別して案内してくれるし、その魔物は全て一撃で倒せるし、しかもほぼ全員が核石をドロップするという異常事態が起きたからねぇ……
「大型の魔物を倒せても、入手できる確率は極稀ということでしたが、どういうわけか連続で手に入ってしまいました」
「なんと……主様は本当に強運の持ち主なのでございますな。結界用の核石ともなれば、国が動くレベルの大事だというのに、それをいともたやすくやってのけるとは……」
「おめでとうございます。主様」
「ありがとうございます。それで、これがその核石なのですが、結界にできそうでしょうか?」
そう言って、小さめのものと大きめのものを1個ずつ取り出してフェルシアさんに見せる。
ウルの話によると、ここくらいの範囲であれば小さめの方でも十分らしいが、大きめの方を使うことで、より強い敵も弾くことができるらしい。
大きめの核石を使用した場合、少なくとも最初に戦ったあのグランドドラゴンであっても、単独では突破は難しくなるくらいの強度になるらしいが……それはもう、実質的に突破不可能レベルだと思うんだ。
というか、その結界を突破できるレベルの敵って、家周辺どころか森自体が消える大災害クラスだと思うから、そもそもどうにもならない天災なのではなかろうか……
「これ、は……これが本当に核石なのですかな……?なんという大きさ、このようなものは聞いたこともありませぬ……」
あ、あれー……?思ってた反応と違う。フェルシアさんが目をパチパチして、信じられないものを見たって顔をしている……
あー、そうかー……王都の結界ですら、ワイバーンクラスに効果がないのだから、ドラゴンさえ弾きうる結界の核石など、何処にもないのかもしれない。少なくとも人類の手には渡ったことがないのだろう。そりゃ、驚くわ……
「上位精霊の導きで入手した核石ですからね。まず間違いないでしょう。結界として使用できそうですか?」
「おそらくは……しかし、これほどの核石を扱えるとは、自信を持って言うことはできませぬ」
「そいうことなら、まずは小さめの核石でやってみたらいいのではありませんか?それで大丈夫なようなら大きめの方に切り替えるということで……」
「確かにそうですな……しかし、貴重な核石を2つも使ってよろしいのですかな?」
まぁ、フェルシアさんからすれば、それが当たり前のことなんだろうけど……
実は、全部で13個も持ってたりするんだよねー……あっはっは……他の人に知られたら、とんでもないことになるのが目に見えるようだ。また秘匿事項が増えてしまった……
「問題ありませんよ。使えるのであれば、両方使ってもらって構いません。現状、他に使い道もなければ、他所で使う予定もありませんから」
「畏まりました。そういうことであれば、2つともお預かりさせていただきます」
「はい。それでは結界の作成、よろしくお願いします」
「承知致しました。必ずや、ご期待に応えられる結界をお作り致します」
これで、しばらくすればフェルシアさんが結界を張ってくれるだろう。そうしたら、いよいよ本格的な旅に出ることができる。って、その前に2人だけで生活していて、何か問題があったのかを聞くのを忘れてた……
まぁ、これは明日でもいいかな?朝食の時にでも聞くことにしよう。とりあえず、今日のところはこれで休むとしよう。




