【IF END1】最大幸福の世界
第10章1話からの分岐です。
もしロゼが観測者の力をあげなかったら。そんな物語です。
「《観測者》権限は、あげないわ」
ロゼはそうハッキリと告げた。
「だって、人生は一度切りだから楽しいのよ? 素晴らしき哉、人生だわ。例えばもう私はこの世界で失敗したなら、それはそれで仕方がないと割り切るわ」
「もし、俺をまた置いていくとしても?」
「置いていかないわ。もう絶対に。もし置いていくなら貴方も一緒に連れて行く」
俺の大好きなお嬢様はそう言って、俺の額にキスをしてくれた。
――あぁ、まだ足りないのか。
俺の想いはまだ彼女に届いていない。
彼女の遺書だってそうだった。俺を突き放す文章で書き綴ってあった。
ロゼがいない世界で俺が幸せになれるわけがないのに。
どうすれば彼女に伝わる?
もっと言葉を交わそう。
そうだ。
たくさん言葉を交わしてわかりあえたらいい。
――なんて綺麗事を言っている余裕はない。
彼女は一度殺された。ルーナのおかげで命は救われたけれど、今後またいつ死ぬかわからない。一週間先か、一日先か、それとも一秒先か――
そんな薄氷の上に立っていると自覚していないんだろう。
彼女は簡単に俺を置いていく。
それなら――誰にも狙われない場所に閉じ込めておくしかない。
あの塔に何重にも魔法をかけて。誰にも踏み込めないようにしてやろう。
もうイザベラはいないけれど、俺を恨む者はたくさんいる。
すぐ動いたらルーナが察するだろうな。
――まぁ、不安因子は潰してしまえばいい。
彼女は《ヒロイン》だとしても、所詮人間だ。
蜘蛛の巣にかかった蝶を食うように。
ゆっくりと体液を流し込んで、気づいた時にはもう食べられているように。
「ねぇ、ローゼリア様」
「……な、なに? アッシュ……」
ロゼは俺の様子が変わったことに気づいたのか、少し怯えた瞳で俺を見つめてきた。
あぁ、その瞳に俺以外のものを映さないでほしい。
「悪いことをしましょうか」
俺はそう言って、彼女の純潔を奪った。
◆
塔には誰も立ち入らない。
――悪いことをしたら、塔の魔王に食べられてしまうよ。
そんな噂話が立っているから。
彼女のために家具は一級品を用意した。
ベッドは広く大きいものを。
彼女はよく快楽から逃げるようにベッドの上を逃げ回るけれど、それもまた一興。
彼女が死なない保証はない。
俺も死なない保証はない。
だからもう繰り返せないのなら、彼女を縛り付けて、一生離さない。
「アッシュ……すき……」
ロゼは俺の口づけを受けながら、何度も繰り返す。
「すき……すき、だいすきよ……だから、もっと、もっと……」
「……はしたなくなりましたね、お嬢」
「そういうふうにしたくせに……」
彼女の瞳は相変わらず揺らがない。
――ただ、快楽に負けただけ。
「お水……ほしいわ」
「仕方ありませんね」
俺は水を口移しで飲ませた。
彼女は俺に逆らうことなく、それを疑問に思うこともなく、俺を受け入れる。
こくん、こくんと彼女の喉が動く。
少し口の端から水が漏れて、彼女の口元を伝って落ちた。
「もっと」
「わがままっすね」
「もっとほしいわ、アッシュ」
誰にも祝福されない二人きりの世界。
貴族同士のしがらみも、ここには何もない。
彼女はもう俺しか見ていないし、俺以外は見させない。
やいやい言っていたルーナはいつの間にか来なくなった。
あまりうるさいようだったら、強制的に黙らせようと思っていたけれど、その必要もなかったようだ。
あなたが生きてくれるなら、どんな形でも構わない。
「もっと」
彼女がねだる。
「それは水ですか? それとも俺ですか?」
「……いじわる」
頬を赤く染めるロゼはいつも可愛いらしい。
この姿を見れるのも俺だけだ。
鍵は厳重に閉めている。
もうここには誰も入り込めない。
――やっと辿り着いた。
ここが俺の、そして彼女の【最大幸福の世界】。
こいつやりおった。
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