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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】【第十章 我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主】
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幸せの対価 SideL

 誰もいない女性用トイレの中で、私は洗面台にしがみついていた。


「……はぁ、ぐっ……」

 胸が焦げるように熱い。


 身体の奥からこみ上げるものを感じて、口から吐き出した。

 それは血だった。


「やっぱ、ヒロイン補正使っても……きつかったですね……」


 吟遊詩人、オルフェウスと共に行った死者の国。

 行きは簡単だったけれど、帰るのには苦行を強いられた。


 帰りの通行料は私の残りの命。


 私は絶対に青い薔薇を持って帰らないといけなかった。

 だから、迷いなんかしなかった。


 現実でだってそうだった。

 緊急時はいつも命を助けることを優先していた。


 本当はずっとローゼリア様のお側にいたかったな。

 あのアッシュとかいう番犬から、ローゼリア様を守りたかったよ。


 レオナルドとも、もうちょっと話をして交流してみたかった。

 せっかくだから恋も、してみたかった。


 私はお願いをした。

 この物語が終わる時――卒業式まではヒロインとして居たいと。

 それをオルフェウスは尊重してくれて、彼はあと3年分生きる代わりにと、自分の命を死者の国に捧げてくれた。


 私は誰かと付き合わない。恋はしない。

 だって、恋をしても、結局その人を置いていってしまうから。

 置いていかれた人の悲しみは、アッシュを見ていたらよくわかる。


「……ルーナ、大丈夫?」

 女性トイレの入り口から、ひょこっと顔を出したのはローゼリア様だった。


 私はハンカチで血を拭い取り、彼女に見られないように、血で染まった洗面台を水で流した。


「あら。ローゼリア様。大丈夫ですよ! ちょっと月のものが重かっただけで」

「それは大変ね。何も出来ないけど、お腹を温めてね。《熱よ》」


 ローゼリア様はそう言って、私のお腹に熱魔法をかけてくれた。

 ぼんやりと温かくなって、痛みが和らいだような気がした。


――本当にお優しいローゼリア様。


 こんなにお優しいから、今後も変な虫が色々付くだろうなぁ。

 でも、隣にいるのがアレなら、まぁ大丈夫かな。


 この世界で、私の人生が終わったら、次はどこにいくのかな。


――死者の国かな?

 ……あそこは色々と面倒だったなぁ。試練いっぱい受けさせられたし。


――地獄かな?

 たくさんの人を救えなかったことがあるし。


――それとも煉獄だろうか。

 罪を清めさせてもらえる機会があるなら、どうか欲しい。


――天国だったら、いいなぁ。


 この世界の管理者である『神様』ことオルフェウスに与えてもらった、この二度目の人生。

 私もアッシュたちみたいに、また繰り返すことができるだろうか。


 セーブして、ロードして、その場に戻ることが出来たらどれだけ楽か。

 でもそれができないから、この世界は物語ではなく、たった一つの人生なんだろうなぁ。


「ローゼリア様、アッシュ様とは仲良くされてますか?」

「えっ! あっ……う、うん……」


 ローゼリア様の顔が真っ赤に染まる。

 恋する乙女って感じ。


 うん。それでいい。

 私の大好きな貴方が幸せになってくれたら、私も幸せだ。


「ローゼリア様、式の段取りは進んでいますか?」

「えぇー。まだあと3年後よ。全然進んでないわ。あとアッシュに丸投げしてるわ」

「アレに丸投げしたら、恐ろしい式になりそうですよ。貴族なんて外聞気にせずに、二人っきりの結婚式にしそうです」

「……ありえるわね。ちょっと私も真剣に考えるわ」


 ローゼリア様は楽しそうに背中で手を組んで、私の一歩前を歩く。

「……ねぇ、ローゼリア様」

「なぁに?」

「いま、幸せですか?」


「えぇ。とっても」


 彼女は宝石のような瞳をもっと輝かせて、微笑んでくれた。


「――なら、ほんとうによかったです」


 貴方のために命を捧げられて――


ラブコメに持っていって、シリアスに入るのやめてほしいと自分に言い聞かせています。


気に入っていただけましたら、★★★★★評価お待ちしています。

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