愛の沼 SideA
「――キスがしたい」
まさかロゼからその言葉をもらえるとは思わなかった。
いつも、俺の方からキスをねだることはあった。
でも、まさかロゼからなんて。
頭の中のストッパーがいっきにぶっとんだ。
告白されてからは嬉しくて、触れるのが怖かった。
ロゼの華奢な身体が、俺の欲望を全て受け止めてくれるのか。今までとは違って、心ごと俺を受け入れてくれるのだろうか。
俺はずっと溜まっていた願望をすべてロゼにぶつけた。
ロゼには悪いけれど、跡が残るように、首筋にもキスの跡を残してやった。
彼女の甘い声は麻薬だ。
俺の脳内をどんどん犯していく。壊していく。
本当は最初だからキスだけで止めようと思っていた。
「んっ……ぁあんっ」
けれど、ロゼの甘い声を聞いていたら、歯止めなんて効かなくなってしまった。
抱きしめて、愛して、壊れそうなくらい好きって言って。
心がくすぶる。ロゼの顔はぼーっとしていた。目は焦点があっていない。
――俺を感じてくれている。そう考えると、もっと彼女に快楽を与えたくなった。
そして与えていたら――ロゼは気を失ってしまった。
「……ここで!?」
俺的にはここからが本番だった。
ロゼをめちゃくちゃにして、心も身体も縛り付けて、俺以外の誰も気にしないように、俺だけを見るようにしたかったのに。
気を失っている女性に手を出すほど落ちてはいない。
俺はそのままロゼの額にキスを落とした。
……すぐ起きるかと期待したけれど、ロゼは結局翌朝までスッキリ眠った。
俺はその日、一日中寝不足だった。
けれど、これでロゼに触れる許可は得られた。
◆
俺はロゼが目覚める前に、紅茶と朝食の支度をする。
もうすぐ起きてくる頃だろう。
布のこすれる音がする。
ぐいーっと腕を伸ばしながら、ロゼが起床した。
「おはよう、アッシュ。ふぁあ……なんだかすっきり眠れたわ」
「そりゃそうでしょうね」
「なんでかしら……えぇっと昨日は――あっ!」
ロゼは思い出して顔を赤くした。
「……まさか気を失うとは、ほんとロゼは俺を焦らすのが上手なこって」
「あっううっ……」
ロゼは少し涙目になって、俺から目を逸した。そして、太ももの間に両腕を突っ込んで、もじもじとしている。
「……今から続きをしますか?」
「い、今からは授業だからっ!」
あたふたしながらロゼが応えた。
「じゃあ次はいつ?」
「ぇっ……うーん、来週?」
「鬼みたいなことを言いますね……お嬢」
この鈍感お嬢様はまだ俺の気持ちにも、男性の本能についても気づいていないようだった。
◆
昼休憩の時間――
俺はロゼをいつも使っている談話室に連れ込んだ。
ここなら誰も来ない。
念の為に施錠をする。
「今日はここでご飯を食べるの?」
ロゼはぽやんとした顔で言った。
「……うーん、そうですね。ある意味そうです」
俺は無理やりロゼの手をとって、唇を重ねた。
「んっ! ……~っ、ぁっ!」
ロゼの口から甘い声が漏れる。
それが俺の心をかきむしる。
どんどん声をあげてほしい。もっともっと俺のことを感じてほしい。
「だ、だめ……ここ……」
「大丈夫ですよ。人は来ないですし、施錠もしてます」
「で、でも……学園内だし……」
言い訳をするロゼの口を塞ぐ。
舌を絡めて、口の端からもれる唾液を無視して……息ができないと、俺の背中を叩いてきたら、首筋にキスをして。
もっと、もっと触れたい。
ロゼを感じたい。ロゼを感じさせたい。
そしてロゼに俺を感じさせたい。
「はぁ……はぁ……」
ロゼの衣服はもう乱れてしまっていた。
ブラジャーも外れ、スカートもよれよれで。
……正直その格好もまた俺を誘っているようにみえて――
――もっとキスを、もっと愛しているを伝えようとしたら――
「は、はじめては、もうちょっとロマンチックなところがいいっ!」
と真っ赤な顔で拒まれてしまった。
女性はムードを大事にしているというし、たしかにそれもそうかと思った。
この談話室のソファーの上で、ロゼの初めてを奪うのはロマンに欠けるか。
この件に関して、一生恨まれても怖いし、そこは尊重しよう。
「じゃあ、最後までじゃなくて、チャイムが鳴るまで……」
「お昼ごはん食べてないから……お、おなかすいちゃう……!」
「我慢してください、お嬢」
そう言って、また、何度も何度も唇を重ね、彼女の身体中にもキスを落とした。
◆
放課後。
校舎裏でもまたキスをした。ロゼは舌を絡めると、すぐ脱力して足から力が抜ける。だから俺は彼女の背を抱えながら、校舎を壁にして、何度もキスをした。
そうやって、人目が無いところを狙っては、ロゼにアピールを続けた。
寮の部屋に入り、いざと思っていたら――
「こ、この部屋よりももっとロマンチックなところがいい」
顔を真赤に染めたロゼに言われた。
「……たとえば?」
「で、○○ズニーとか……」
「また変な言葉を……」
ロゼの前世のどこかなんだろうけれど――見当もつかない。
あとでヒロインちゃんに聞いてみるか。
けれど、こうしてロゼに堂々とキスすることを認められて、正直うれしい。
いくらでも焦らしていい。最後に俺を選んでくれるなら。
だから、どんどん……俺と同じところまで堕ちて欲しい。
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