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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】【第八章 愛の鎖】
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世界の強制力(1)SideR

 アッシュは二人っきりになると、いつもキスをしてくる。


 唇だけじゃなく、首筋にも、頬にも、時は足先にも。


 あまりの甘さに、私はめまいのするような毎日を送っている。


 ロマンティックな場所がいい。と私は言ったけれど、それは正直、言い訳で……彼にならいつでも全てを捧げてもいいなと思っている。


 だけど、彼は私の意思を尊重してくれて、最後まで手を出すことはなかった。

――だから、今更「よしっ!」って言ってOKを出すことができない。


 そういえば、最近はアッシュとずっと過ごしていて、ルーナと話すことが少なくなったことに気がついた。


 その件について、私は何の違和感も抱かなかった――

 私の中の世界にアッシュが入って、二人だけでずっといたいと思っていた。

 どこを見ても、何を聞いてもアッシュのことを考えていた。


 恋とはここまで人をおかしくするのだろうか。


 でも、私は学生だ。

 学園では学ばなければいけない。……でも、やっぱり彼を思い出して、身体が疼く。

 これはどうやったら落ち着くのか。


 休憩時間、ルーナに話しかけようと思った――けれど

「お嬢」

 アッシュに呼ばれ、足を止めてしまった。

 彼の黄金色の瞳が、すっと細くなる。かと思いきや、ぱぁあっと花が咲いたような笑顔を浮かべる。


「今日の昼食はお嬢の好きなサーモンを挟んだベーグルっすよ、自信作なので、いっぱい食べてくださいね」

「あ、うん。ありがとう」


 ……なにか。


 何かが、頭をよぎる。


――このままでいいのか。

 アッシュとずっと一緒にいて、キスをして、触れ合って、それだけで満たされて。

 彼がいればいい。彼だけで世界が構築されている。

 そんな気持ちだけで動いていて、いいのだろうか。


◆

 放課後の時間も、彼に捕まりそうになった。

 早く好きと言いたい気持ちをぐっと抑えて

「と、トイレだから!」

 そう言って、私は女子トイレに逃げた。


 流石にアッシュも女子トイレには来れない。

 最近、一人でいることもなくなった。ずっと隣にアッシュがいる。


 好き、大好き、愛している。その言葉に変わりはない。

 でも――なんか違和感を感じるのだ。


 私は以前、ルーナからもらった笛をポケットから出して吹いた。


 そこから数分後――

「よばれてとびでてなんとやら! ルーナですよ、ローゼリア様!」

 ルーナがばーんとドアを開けて登場した。すごく早かった。

 彼女の顔を見て、少しほっとした。

「――といっても、ここは女子トイレですね。……アッシュ様は流石に入れないし、内緒のご相談ですか?」

「うん」


 私はルーナに話した。

 恋や、思いや、違和感を。


「うーん。正直なんとも言えないですね。恋する乙女は無敵といいますし、恋は盲目とも言いますし」


「でも、私はアッシュと一緒にいて、なんというか……彼に依存してしまいそうで怖いの。他の人とも交流をしたいし……でもアッシュと一緒にいたいし、わかんないの」

「……まぁ、うん。そうですね。正直、しばらくは静かにしておいたほうがいいと思います」

「静かに……?」


「アッシュ様とローゼリア様のこと、噂になっているんですよ。キスをしたところを見た生徒がいるって」

「――!?!?」


 確かにアッシュとは所構わずキスをしてきた。

 校舎裏や、談話室や、廊下の角や――何処かで見ている人がいるなんて、思いつきもしなかった。それくらい、彼しか見えていなかった。


「それに、ローゼリア様、ご自身の身分をお忘れになっていらっしゃいますよ。……貴方はご令嬢。しかも王子の婚約者……と世間で言われていますが……」


「そ、そうよね。フィリックス殿下にも話さないと……」


「ご両親にも、ですね。火遊びで終わるなら話さなくてもいいかもしれませんが、それ以上を求めるなら、話しておかないと後で厄介になりますよ」


 私は彼――アッシュしか見えていなくて、なにも考えていなかった。

 飛び越えるべき問題は沢山あるのに……。


「さ、早速アッシュに相談しないと」

「……んー。ちょいと待ってくださいな、アッシュ様がその辺りを考えずに動く浅はかな人だとは思えません。ローゼリア様。今日は私の部屋に泊まりませんか?」


「えっ……でも、アッシュと夜、約束をしていて……」

「断ってください――ちょっと彼の思考を辿って考えてみますので……」


 ルーナは眉間にシワを寄せて、ぐぬぬと考えていた。

 そして夜、ルーナの部屋に向かう途中――


 ルーナと私の寮は違う。だから一旦外に出ないと行けない。

 中庭を通ってルーナの寮へ向かう。

 その時、頭に激痛が走った。


 目の前が真っ暗になる。布を撒かれているようだ。

「……だ、…………」

 聞き慣れない声が聞こえる。男性の声と女性の声。


 なにか、誰か、助けてといわないと――私は声を出そうと思ったけれど、口に無理やり布を当てられ――くらりと、眠気が走る。途切れそうな意識の中、浮かんだのはやっぱりアッシュのことだった。

 そして私は、意識を失った。


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