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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】【第七章 愛なんて陳腐な言葉で語れないほどの想いを君に】
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愛なんて陳腐な言葉で語れないほどの想いを君に(1)SideR

 気づけば初夏を迎えていた。

 私とアッシュの関係は変わらず。


 アッシュになんとか話しかけようとすると、冷たい目で見られる。

 それで私は言葉を飲み込んでしまい――何も言えなくなる。


 いつものように晩ごはんを食べていた時のこと。

「ぱんぱかぱーん! 明日はいよいよ花祭りですよ!」


 ルーナが楽しそうに両手を上げながら言った。


「花祭り……そういえば、そんなイベントを設定したわね」

「初期好感度の高いキャラに花を送るイベントですよね。あのイベントは全キャラ好きでした……ロマンチックで!」

「あ、ありがとう。そう言ってもらえるなら嬉しいわ」


――花祭り。

 好感度の高いキャラクターと一騒動あって、最後にヒロインが花を贈るイベントだ。


 学園在学中のキャラも、学園外のキャラも巻き込む、この国で一番大きなお祭りだ。


 元は農作物の収穫を祈るものだったのだけれど――気づいたら愛する人に告白するイベントになっていた――という設定である。


「明日……アッシュは誰かから花を贈られるのかしら……」

「ローゼリア様! ここ一ヶ月、貴方はずーーーっとくよくよしていますよ! 自業自得なのに!」


「うぐっ!」

 ルーナの正論が胸に突き刺さる。

 本当に自業自得なのは自覚している。


「仕方ないですね。私のお花を分けてあげます」

 そう言って、ルーナは自室から薔薇を一本持ってきた。


「――ルーナも薔薇を渡す人がいるの?」

「げふんげふんっ! ま、まぁ……えぇっと、その話は良いんですよ! アッシュとローゼリア様の恋が優先です!」

 ルーナの顔が珍しく赤くなった。


「る、ルーナ? ねぇ、教えて? 好きな人いるんでしょ?」

 私はわくわくしながらルーナに尋ねた。


 ルーナは両手を腰に当てて、目をそらす。


「好き、というわけでは……ただ、少し……思ったよりもいいなと……思う人が……」

「えっ? 誰? 誰なの?」

「……レオナルド。フェリックス殿下と仲良くなっていたときに、話すことがあって、それでちょっとずつ、気になってて……」

 もじもじと両手の指を絡めたり離したりして――その姿はまさに恋する乙女だった。


「うそっ! そうだったの! なんで早く教えてくれなかったの!?」

「ローゼリア様はローゼリア様の問題があるでしょう! 私のことはいいですからっ!」


 ルーナがまさかレオナルドを気にかけるなんて……気づかなかった。

 そしてさり気なくフェリックス殿下とも仲良くなっていたのね。……すごいわ、さすがヒロイン。


「ねぇ、ルーナもレオナルドのことを考えると、胸がぎゅーっと締め付けられたり、恥ずかしくなって枕に顔を埋めたり、突然泣きそうになったり、彼が夢に出てきたりするの?」

 同じ恋する乙女として教えてほしかった。

 女の子はみんなこの想いを抱えているのかどうか、聞きたかった。


「え、いや……そんなのはないですけど……話してて安心するなーってくらいです。ローゼリア様、アッシュのことをそこまで想っていたんですね」

「……~~っ!」

 墓穴を掘ってしまった


「ローゼリア様。いい機会です。アッシュに花を渡して告白しましょう」

「――で、でも私、嫌われてるし……」

「そう仕向けたのは貴方でしょうに!」

「ででで、でもーーーー!」

「バレンタインと一緒です。お世話になっているからと渡せばいいんですよ!」


 バレンタインと同じ。そう考えると、少し気分が軽くなった。


 私はルーナからもらった一本の薔薇をぎゅっと握った。


――そういえば……。


 私は幼い頃、アッシュに聞かれたことを思い出した。

 そしてあることを調べた。

 頭にしっかり染み込んでいる。


 告白しよう。

 アッシュが私を嫌いになっていても構わない。

 私がアッシュを好きなんだ。

 その想いを伝えたい。感謝の気持ちを、恋を、愛を、すべて伝えたい。


 その日の夜、私はアッシュに手紙を書いた。


『放課後、校舎裏の山の上で待っています』


 場所を指定したのは、理由があった。

 あとはアッシュが応じてくれるかどうか。応じてくれなかったら、ルーナに泣きつこう。

 そして翌日――花祭りが始まった。

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