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我が主は、悪役令嬢でこの世界の創造主~味方の従者は何故かヤンデレ~  作者: 六花さくら
【第一部】【第七章 愛なんて陳腐な言葉で語れないほどの想いを君に】
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愛なんて陳腐な言葉で語れないほどの想いを君に(2)SideR

 貴方が私を愛している証拠が欲しい。

 愛の証明はどうやったらできるのか。


 いつかヒューゴと議論した話。

 彼は『愛は信じるもの』と教えてくれた。


 それじゃあ、私の好きはどういう原理でできているの?

 恋の方程式を教えてほしい。そう思っていた時期があった。

 でも、今ならわかる。

 好きって、そういうものじゃないんだ。


 私は、ただアッシュが好きなだけ。

 好きだったから、一緒にいた。

 どうして好きになったかなんてわからない。わからなくていい。


 好きは、願いの集まりで出来ている原動力だ。

 ガソリンみたいに私の心を、身体を、動かしてくれる。


 アッシュが幸せにいてくれたら嬉しい。

 あなたが幸せになるために、私はあなたを助けたい。


 大好き。

 好き。

 愛してる。


 全部全部、貴方に伝えるわ。私なりの方法で。貴方に注がれた愛を、全部全部100万倍にして返してあげる。



◆


 そして花祭りが始まった。

 学園内だけでなく、国中が花をばらまいている。

 フラワーシャワーがところどころで行われている。

 

 空が夕焼け色に染めあげられた頃――私は待ち合わせ場所へ向かった。

 まだアッシュは来ていなかった。


 私は薔薇を握りしめる。すると茨が手のひらに刺さって、少し血が出た。


 もう薄暗くなってきている。夜が近づいてきている。

 アッシュはもう、来てくれないんだろうか――そう思っていた時、足音が聞こえた。


 そこにいたのは、夜空のような黒い髪と、黄金色の目を持つ男の人――私がずっと待ち焦がれていた人だった。


――来てくれた。

 心が跳ねるのをぐっと抑える。


 「こんな山奥に呼び出すなんて、相変わらず人をこき使いますね」

 アッシュの黄金色の瞳が私の姿を捉えた。


 彼の視線は私の顔ではなく、手元に向けられていた。


 「手、怪我してるじゃないですか。ほら、血が出てる」

 アッシュはハンカチを出して、私の血を拭い取ってくれた。


 気づけば、夕日は沈んでいた。

 空に月がのぼり、星々がきらめく。


 ぼんやりと、私の足元も光りだした。


 ここにはあの花が咲いている。


 夜光花――夜にしか咲かない花。

 昼のうちに太陽の光を吸って、夜になると七色に輝きだす。


 いつか、アッシュの幸せを願ったのも、この花の上だった。

 あの日、願った想いを。

――願わくば、貴方がどうか幸せになれますように。


「アッシュ」

 私は彼に薔薇を手渡した。

「ば、薔薇?」

 アッシュは驚いた様子で薔薇を受け取ってくれた。


 薔薇一本の花の意味は『貴方しかいない』


 アッシュに108本の薔薇の意味を聞かれたことがある。

 私はその時、何も知らなくて後で花言葉を調べた。

 そして、薔薇の花言葉が本数で変わることを知った。


 贈る花は真っ赤な薔薇。


 私は唱える。


 この世界でしか通用しない、魔法を。


「《花よ》」


 薔薇が空から落ちてくる。


 2本目――『この世界は二人だけ』

 3本目――『愛しています』

 5本目――『あなたに出会えた事の心からの喜び』


「《花よ》」


 9本目――『いつもあなたを想っています』

 12本目――『私と付き合ってください』


「《花よ》《花よ》《花よ》」


 24本目――『一日中思っています』

 99本目――『永遠の愛、ずっと好きだった』

 101本目――『これ以上ないほど愛しています』

 365本目――『あなたが毎日恋しい』


「《私の想いの分の花よ、どうか想いを伝えて》」

 999本目――『何度生まれ変わってもあなたを愛する』


 いつの間にか、一面が薔薇だらけになっていた。

 夜光花も、薔薇に埋まってしまっている。


――一歩踏み出す。ずっと踏み出せなかった一歩を。

 しゃんと背を伸ばして、目線を彼に合わせて。

 私は彼をまっすぐ見つめて、伝える。


 魔法で伝わるなら簡単だ。

 でも、想いはちゃんと言葉にしないと伝わらない。


「好き。好きよ。愛してる。愛してるなんてありふれた言葉じゃ語れないほど、貴方のことがずっと、ずっと好きよ!」


 思えばずっと貴方に恋をしていた。

 いつから想っていたかわからない。


 でもこの想いは間違いなんかじゃない。


 その瞬間、私は手を引っ張られ、彼に抱き寄せられていた。

「……ほんと、貴方は――」

 苦しそうな声だった。顔が見えないから、どんな表情をしているかわからない。


「いつもそうです。俺を振り回して、俺の感情をかき乱して。この場所も、景色も、あぁ……もう……本当に……」

「アッシュ……」

 彼の肩は大きくて、私をすっぽりと包みこむ。

 彼の熱が、鼓動が、直接伝わってくる。


 そして彼は大きく息を吐いて、とてもとても溜めて応えてくれた。


「俺も、愛しています。ロゼ」


 と。


やっと一歩。

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