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魔法じゃない、超能力だ  作者: 一川一
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帰らずの森のエルフ 3


 里へと続く道すがら、隣を歩くチキがはしゃいでいた。


「ねえっねえっさっきのどーやったの?」

「どうって言われてもなあ……」


 念力が勝手に弾いただけで俺の意思ではない。なので理屈を聞かれても答えられなかった。


「元素魔法じゃないのよね? ひょっとして……限界魔法?」


 なんだそりゃ? さっぱりわからないのでティアラに助けを求める。


「限界魔法と言うのは元素魔法や精霊魔法以外の魔法の総称だな」

「えっと……そもそも元素とか精霊とか何が違うんです?」

「そこからか……元素魔法とは魔力を媒介して火、水、風、土、光、闇などの奇跡を発現させる魔法のことだ。また呪文や魔法陣により各属性を具現化させる。対する精霊魔法というのは魔力を媒介して精霊と呼ばれる現象を呼び出すことで各属性の魔法を具現化させる。似ているようではあるが具現化までの手間や魔力ロスが短縮できるぶん精霊魔法の方が優れていると言われている」

「な……なるほど」


 とは言ったもののなんとなくわかるようなわからないような……。


「わからなければ主に人間が使う魔法が元素魔法でエルフのような妖精族や獣人が使うのが精霊魔法と覚えておけばいい」


 え? 獣人もいるの? 詳しく聞きたいところだがいっぺんに覚えられそうにないので種族のことはまたの機会にしよう。


「人間は精霊魔法を使えないんですか?」

「使えるものもいるそうだが多くはないだろう。これは種族的な得手不得手だからしかたがない」

「なるほど……」

「話が逸れたがその二つの魔法以外で属性にすらとらわれない奇跡を発現し行使する魔法が限界魔法と呼ばれているものだ」

「属性がない?」

「ああ……どんな魔法も何かしら属性に縛られるはずなのだが希に属性の反応がない無属性の魔法が生まれることがある」

「生まれる?」

「そう……限界魔法は固有の魔法であり他者が真似ても発現しない。ゆえにその特徴はあまり知られていないんだ」


 なるほどね。超能力=限界魔法だと勘違いされる理由も頷ける。


「そっかぁ……」

「ん?」


 チキが嬉しそうに俺の顔を見上げていた。


「チキもケイジ君と一緒だよっ」

「は? 何がだよ?」

「感覚で魔法を使うおバカなんでしょっ!」

「おい……誰がバカだ」

「だって理解してなさそうじゃんっ! もちチキもしてないよっ!」

「一緒にすんなっ! 俺はただ……記憶喪失なだけだっ」

「あたしもその言い訳使ったことあるよっ」

「い、言い訳じゃねーから……」


 言い訳なのであまり強く言えず、チキに親近感を抱かれるという不本意な結果をうけたころ、ようやく里にたどり着いた。


「へぇ……ここがエルフの集落か」


 思わず感嘆の声がもれる。青々とした大木に支えられたツリーハウスがいたるところに見てとれる。大自然と調和のとれたその集落の風景は幻想的で理想的なファンタジー世界そのものだった。


「ようこそっ! うちはこっちだよー」


 先導するチキは笑顔だ。人気もない隠れ里みたいな場所だし、客を招くのが嬉しいのかもしれない。ティアラも物珍しそうにきょろきょろしていた。


「ティアラさんも初めて来たんですか?」

「ああ、エルフは妖精族のなかでもとくに人見知りがはげしく人付き合いを嫌うと聞く。隠れ里に入ったことのある人……の方が希だよ」

「そうなんですか……」


 人懐っこいチキを見る限りそんなことは微塵も感じないのだが、彼女が特別なのだろう。今にして思えばエルエリスの態度もそれなら納得ができる。


「はーやーくー、こっちだよー」

「騒がしいやつだ……」


 俺の想像していた理想のエルフはもっとこう落ち着きがあり、聡明で口数が少ないのだが、まったく真逆のエルフに出会ってしまったあたり運命は過酷である。


 願わくばご家族……具体的には理想に近いお姉さんか再婚した新妻で未亡人がいるといいなぁと思いながらチキの家へとお邪魔するのだった。あとはしごじゃなくて階段だったのが残念でしかたない……。


「いらっしゃーいっ」


 なかはいたっては普通だった。見た目どおりのウッドハウス。優しい木の家……と、どこかで聞いたフレーズが思い浮かぶ。インテリアもだいたい木製。なんだかバンガローで寝泊まりしたキャンプを思い出す。


「適当に腰掛けてねー」


 いっちょまえにお茶なんて出す気配りを見せるチキの好意に甘えて、水みたいなうっすいハーブティーを飲んでいると、チキがティアラの体にまとわりついた。


 なんだこの急な百合展開は? サービスか?


「ティアラぁ……臭うねっ」

「な――っ!」


 鼻をひくひくさせて犬のように体臭をかぎまわるエルフに、あわあわするティアラの姿を見て百合もいいもんだと思った。


「し、しかたがないだろう。森では満足に水浴びも出来なかったし魔族との戦闘で血も流したんだ。汗や血も拭き取りはしたが……」

「よしっ。なら水浴びしに行こうっ!」


 聞けばこの近くに小川があるという。ティアラも臭いが気になりだしたのか、二つ返事で頷いた。


「じゃー行ってくるねー」

「す、すまない」

「いいですよ別に……ごゆっくり」

「行こっティアラちゃん――あっ」

「なんだよ?」

「覗いちゃ……だ・め・だ・ぞっ」

「とっと行けっ!」


 騒がしいチキが出て行くと途端に居間は静けさを取り戻す。まるで誰もいないかのように……。


「そういやぁ……」


 まだ家族に会ってない。しかし人の気配がまるでしない。ためしに声をかけてみたが返事がない。


「留守……かな?」


 まあ気を遣わずくつろげるかと思い直した俺はハーブティーを飲みながら昨日からの出来事と今後について思いを巡らせた。



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