終幕 ドラゴンさんの愛しい子供たちとは。
9/1 本日八話目
『竜に守護された街・ザイドラ』。
そこに住んでいたドラゴンさんとその旦那さんには、三人の愛しい子供達がいる。
一人は、人間の子供であるルグネ。
一人は、白竜の雄であるラビノア。
一人は、黒竜の雌であるシノウール。
ドラゴンさんが慈しみ、育て上げた愛し子たち。
彼らはザイドラが村であった頃からその土地と深く関わりあいながら育っていった。
人の子と、竜の子。
種族は違えど、ドラゴンさんにとっては全ての子達を我が子として愛していた。
ドラゴンさんは、ルグネという人の子を拾ったからこそ、こうしてザイドラと関わるようになったとインタビューでも答えている。
そのため、ザイドラの者達にとってもルグネはとても特別な子供であったともいえるだろう。ザイドラはドラゴンさんたちと関わっていき、こうして大きな街へと発展していったのだから。
ザイドラの街は、人の子だろうとも竜の子だろうとも同じ子供として受け入れ、その優しい環境がドラゴンさんたちの子供達を優しく育て上げた一つの要因ともいえるだろう。
すくすくとドラゴンさんたちの元で育てられ、大きくなった子供達は十二歳になった今、学園都市に入学することになっている。
人と関わってきたドラゴンさんたちに育て上げられたとはいえ、彼らはドラゴンに育てられた子供たちである。ザイドラと深く関わりあいながら過ごしてきたが、人の街でずっと生きてきたわけではない。その常識は何処か人の世界とはずれている。
また、ルグネはまごう事なく人間の子供であるが、魔法の才能を持ち合わせていたのに加え、ドラゴンさんたちに鍛えられたのだ。
本来なら一緒に遊ぶことなどままならないはずの竜の子であるラビノアとシノウールと全力で遊んでも引けを取らないぐらいである。
ドラゴンさんたちといった種族的にも圧倒的に強い存在に囲まれ、ラビノアとシノウールに勝つことが出来ないので自分は弱い方だと思っているルグネだが、人間という観点からしてみれば十分にその年にしては規格外の強さを持ち合わせているのである。
またラビノアとシノウールは、両親が強者であったのとルグネが人の子なのに自分たちについてきているので、人間の中でもルグネみたいなのはそれなりにいるだろうとか間違った認識を持っていたりもしていた。
ドラゴンさんの愛情に包まれ、ドラゴンさんに育てられてきた彼らはこれから学園都市でどのように過ごしていくのかはまだ誰にも分からない話だ。
「お母さん、凄く泣いていたね」
「泣きすぎよね。まったくもう……」
「そうはいってもシノウールも少し涙ぐんでただろ」
「ラビノア!! 貴方もでしょうが!! 母さんが泣くからつられちゃうのよ」
「俺も泣いちゃった。お母さんと離れるのちょっと寂しいなぁ。休みになったらお母さんたちに会いにいこうね」
「ええ。ぶらぶらしているらしいけど、魔力で探れば行けるだろうし。会いにいきましょう」
「会いに行かないとまた寂しがって泣くだろうからなぁ。泣き虫だよな」
兄妹はそんな会話を交わしながら、学園都市に向かう馬車に揺られていく。
その心の内には、ドラゴンさんたちへの家族愛にあふれている。だから彼らは次にドラゴンさんたちに会う時に沢山思い出話が出来るように学園都市で沢山思い出を作ろうとそんな思いに駆られるのだった。
ドラゴンさんの子育て日記、これで完結になります。
~月までに完結させたいとか何度か言いながら遅くなりましたが、書ききることが出来ました。
元々この物語は、『人外に育てられて常識を知らない子供が人の街に出て規格外さを出していく』みたいなのを育てる側目線で書いたらどうなるかなという気持ちで始まった物語です。なので学園に入学してから子供たちは色々な事を起こしていくのではないかと思います。
学園に入学させて巣立ちするまでを書こうと思っていたのでこんな形で完結になりました。
ドラゴンさんはとても書いていて楽しいキャラクターでした。日記で長編書いたのは初めてなので色々挑戦した話だったなぁと今考えると思います。短編とかで日記で書いたことはあったんですが。
ただ日記でこうやって書くのも楽しいものでした。
書き始めた当初、巣立ちまで書こうと構想していたものの色んなキャラクターたちがその段階では出てなかったのですが、書いていくと色々出したくなって色んなキャラが出てきました。
ちなみに子竜たちは二匹とも少しドラゴンさんに冷たかったりしますが、ドラゴンさんのことを大切な母とは思っているので時々デレてるイメージでした。ルグネは結構素直な子の感じで書いたつもりです。
書いていくにつれてドラゴンさんがどんどん親ばかになっていったなぁと思いましたが、作者的には書いていて楽しかったです。
では、此処までお読みくださりありがとうございました。少しでも何か感じていただければ嬉しいです。
2019年9月1日 池中織奈




