8 -邂逅と現実-
真っ暗だった。
足は地面についているのに、方向感覚が全くない。
どこだここは。
「会うのは初めてかな?」
後ろから声が聞こえた。
声の方に振り向くと、ぼんやりと誰かが立っているのが見えた。
「だれだ?ここはどこなんだ?」
聞き返すと、その誰か機嫌悪そうに答える。
「質問に質問で返すなって、親に教わらなかったのか。」
そいつは続ける。
「まぁよい。我はお前の父親に殺された哀れな存在。ここはお前と俺の心の中の回廊ってところだな。」
「何言ってんのか全然わかんないけど、とりあえずお前と会うのは初めてだよ。」
理解が追いつかないが、とりあえず向こうの質問には答えておいた。
そうすると、そいつは聞き覚えのある声で話し出した。
「クク、今はわからなくていい。いや、もう分かってきたのかな?」
笑い交じりに喋る声、黒狼と対峙する度に響いていたあの声だった。
「お前か、ずっと俺に話しかけてきてたのは。」
「そうだとも。そして、俺の声にお前は答えた。やはり繋がりやすいようだな。」
「つながりやすい?どういうことだ。」
「質問が多いな、勇者の子。いや、●●●の●●●よ。」
後半の方が聞き取りずらかった。
なんて言ったのか聞き返そうとした時、上の方が少し明るくなってきた。
「今の状態だ・、こ・程度・、・・・ころし・、・から・・・・」
明るさが増すたびに、そいつの声は遠のいていく。
「おい、まだなんも聞いてない!お前は誰なんだ!!」
そう叫んだ時、急激に視界が真っ白に染まった。
★ ★ ★
「ぐっ、は、はぁ、はぁ・・・」
目が覚めた時、急に呼吸ができるような解放感と体中の痛みが同時に襲ってきた。
「カノンさん!目が覚めたんですね!!」
フィナが声をかけ、手を握る。
「体はまだ回復しきっていないので、安静にしてください!いま、皆に知らせてきます!!」
そういって、フィナは外に出ていった。
フィナが出ていった後の部屋を見回すと、どうやらベルナ村の宿の自室のようだった。
体中が痛い為、動きづらいためとりあえず自分の体を見てみると右手に包帯がまかれている以外は異常なかった。
なんだこの包帯は。巻いてある包帯を取ろうとした時、部屋の扉が開いた。
「よぅ、お目覚めか?カノン。」
レオハルトだった。
いつもの整った顔とは違い、かなりやつれているように見える。
「あぁ、この通りな。俺は黒狼にやられたのか?」
そう聞くと、レオハルトは呆れた顔で話し始める。
「なんも覚えてないのか。黒狼はお前がしっかり仕留めたよ。」
そうか、よかった。
ミオの仇は取れたんだな。
そう、安堵したときレオハルトは俺につかみかかった。
「なに安心してやがる、お前のせいでクラリスが死にかけてんだぞ?本当に何も覚えてないのか?覚えてないならあの時のお前は何なんだよ?あぁ?」
いつものへらへらした態度が嘘のように、物凄い剣幕で俺の胸ぐらを掴み上げる。
「お前が黒狼と何があったかなんて俺は知らねぇ。けどな、仲間に手を挙げるのは違うだろうが!」
仲間に手を挙げる?俺が?
それに、クラリスが死にかけてる?
「レオハルト!」
俺が困惑してるとセインが入ってきた。
「今掴みかかっても何もなんないだろ!ちゃんと話を聞くって話し合っただろ!」
セインはレオハルトを引きはがし、落ち着ける。
レオハルトは怒りが収まらなかったようだが、少しすると大きく息を吐いて口を開いた。
「悪かったよ、ついカっとなった。」
「落ち着いたならいい。とりあえず、状況の説明と聞き取りをしていこうと思うが、カノンは大丈夫か?」
「おう、体はまだ痛いが話せないほどじゃない。」
そういうと、セインはあの黒狼の時の話をした。
俺がいきなり走り出して黒狼を炎で焼いたこと、そのあとセインたちに切りかかったこと、止めようとしたレオハルト向かっていったときクラリスがかばって剣で貫いたこと。
話を聞くうちに、俺は息が苦しくなった。
俺が?クラリスを?
さっきレオハルトが掴みかかった謎が解けた。
「とりあえず、その場で応急処置をしてフィナのエクスヒールで傷はふさがったよ。」
その言葉で少し心が軽くなった。
「そうだったんだな、皆に、俺が・・・ごめん。」
「フィナ曰く、おそらく瘴気に耐性がなかったからじゃないかって話だ。体の中に瘴気が物凄い量あったみたいでな。今は浄化済みだ。」
その時、フィナとクラリスが入ってきた。
「カノンの目が覚めたと聞いてな。」
「クラリス、その・・・すまなかった。」
そういって、俺は頭を下げる。
クラリスはそんな俺を見て、優しくいった。
「いいんだ、瘴気に浸食されれば誰だってああなるさ。それよりカノンも無事でよかった。」
「あぁ、おかげさまでな。ありがとう。」
「それは私ではなく、フィナに言え。私を回復した後つきっきりで浄化とヒールをかけて看病していたんだ。」
その言葉を聞いて、フィナを見る。
普段は可愛らしい顔のフィナは、少しやつれたような様子で目の周りが少し赤かった。
「フィナ、ありがとう。おかげで助かった。」
「いいえ、聖女としての務めを果たしたまでです。」
そういって、フィナはにこりと笑った。
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